序章
人間界と天界と魔界。三つの世界に住む者たちは昔、それぞれ別々に暮らしていました。
しかしある日突然、魔界の王が天界へと戦争をしかけました。
天界は驚きました。
子供が生まれたばかりの天界の王は戦いたくなかったのですが、天界を守るために立ち上がりました。
二つの世界の戦争に困ったのは人間界です。
人間界は魔界と天界に挟まれているため、戦場となってしまいました。
大地は荒れ、人々の心は弱り、魔物も増えていきました。
このままでは、人間界は滅びてしまいます。
それを嘆いたのは、とある国の双子の王子と王女でした。
このままではいけない。そう思った二人と人間は立ち上がりました。
魔物を狩り、燃えた木々を植え、二人と立ち上がった人々はあらゆる手を尽くしましたが、戦争は止まりません。
人間では天界や魔界の住人には敵わないのです。
三つの世界を巻き込んだ戦争は、熾烈を極めました。
世界はこのまま滅ぶしかないのか。
誰でもいい、誰か助けて。
絶望の前で祈る二人の前に現れたのは、一組の男女でした。
祈りに共感して現れた彼らは天界の王女と魔界の王子でした。
なすすべもなく滅びゆく人間界に心を痛めていた彼らは、世界を救わんと奮闘する二人に手を貸すべく現れたのです。
双子の王子と王女、魔界の王子と天界の王女の四人は、奮闘しました。
そしてついに、天界と魔界の戦争は終わり、人間界は平和を取り戻しました。
心から反省した天界と魔界は二度とこのような悲劇が起きぬよう、人間界に対し誓いを立てました。
人間界に平穏を取り戻すこと。
争いのない世界を作ること。
互いを尊重し、慈しむこと。
それは三つの世界の友好の証。
人々は親愛を込め、三つの世界のことを「三つの誓い」という意味を込めて、“トレアイト”と名付けました。
やがて、その誓いは誓約と呼ばれることになりました。
そして、誓いを述べる者を≪誓人≫、
誓いを受け入れ守る者を≪守人≫と呼ぶようになったのです。
(魔道学校連盟公式 初等部二年用歴史の教科書より抜粋)