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第十話 彼女の音が聞こえる 

 「それでね、その幼馴染が言うの。彼女なんか出来ない、一生結婚出来ない。誰も俺の相手なんかしてくれない、きっと性的な経験も一生無理だ。なんてね」


 「性的?」


 思わず元秋は聞き返した。


 「それでね。……可哀想だと思っちゃったの」


 元秋の質問には答えず、奈々は続けた。


 「その…パンツを脱いで…幼馴染の子のベッドの上に……こう」


 そう言うと奈々は下着は脱がなかったが、スカートの裾を持ち、静かに河川敷の雑草の上に腰を下げて見せた。


 元秋にはそれが何をしている仕草か直ぐ理解が出来た。


 「そんな…」


 元秋は絶句しながら、奈々の仕草に想像が働き、自分が興奮している事に気付いた。


 「それだけ、それ一回だけなの」


 しゃがんだまま奈々はそう言うと目に涙を滲ませ始め、泣き出した。


 「馬鹿だよ。お前ホントに馬鹿だよ!」


 元秋は大きな声で叫んだ。


 「はい!」


 ビックリした奈々が立ち上がった。


 「そんなのお前じゃなくてもいいじゃん。実際にやらなくてもいいじゃん。言葉で慰めればいいじゃん」


 言いながら、元秋も涙が溢れて来た。


 そして、すっごい馬鹿で、愛おしい。と、思った。


 「だって、言葉が浮かばなかったんだもん。何て言えば良いか分らなかったんだもん」


 泣きながら奈々は言い返す。


 「ホントに馬鹿だなー。どうしようもなく馬鹿だ」


 そう言いながら元秋は一歩ずつ、奈々の方に近づいて行った。


 「でも、俺、、奈々の事好きみたい。お前馬鹿だから、俺が見てないと心配だ」


 元秋がそう言った瞬間、奈々は凄い速さで走り、元秋に抱きついた。


 「あっ」


 奈々の胸が自分の胸板に当たっているのを感じると、元秋は自分が奈々に興奮しているのが分り、強く奈々を抱きしめた。すると自分の心音と奈々の心音がまた聞こえて来た。二つとも速いリズムで鳴っている。今度は左右から聞こえた。速い鼓動なのに何故か元秋の心は落ち着いた。 


 「佐野君、私…キスは初めてだよ」


 奈々はそう言うと、自分の唇より少し高い所にある元秋の唇に顔を近づけた。


 そして二つの唇は重った。


 その瞬間、元秋は自分が奈々に溺れて行くのを感じた。





 「成る程ね。そういう事があったんだ」


 安藤が、和希の話を聞いて言った。


 「で、その北村君の自殺で、みんな奈々ちゃんの事噂するの止めたの?」


 「ええ、多分看護婦さんが話してるのでも聞いて、野沢さんが噂されてるって知って、自殺したんじゃないかって、みんな言ってたから」


 「成る程ね。本当に自殺なのかな?遺書とかもあったの?」


 「さあ、それは私は分りません」


 安藤の話に和希が言った。


 「あのさー」


 「何?」


 佐藤が安藤に声を掛けた。


 「俺も大内も、その奈々ちゃんって子の事、会ってないから知らないけど、凄い事あったんだなって事は今知ったけど。その、安藤これって何の会合?」


 「え、これは俺が奈々ちゃんに気になる点が幾つかあったから、調べて佐野にとって本当に奈々ちゃんは良い子か考える為の集まりだよ」


 「え?」


 「え?」


 「エ?」


 「えー?」


 皆一斉に言った。


 「そうなんですか?」


 舞が困った声で言った。





           つづく


読んで頂き有難うございます。

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