Target006「校長室」
俺は階段を降りてから、延々と続く長廊下にウンザリしていた。
見た目的に横長な階段を降りたのだが、以外にも広かったのは下駄箱の部分のみで、その先は幅間5Mぐらいしかない廊下で、先が霞んで見える程の距離があった。
これには驚いた。何でかと言うと、普通の目線で見れば何だこの無駄に長い廊下は!そもそも地下ってのがおかしいだろ!と、間髪入れずにツッコミを入れる所なんだが……。
(……成る程。 天井には人体感知センサー、地面の縫い目から微かにする音は風だな、つまり落とし穴か。他にもあるな。壁には押し込み式の侵入者迎撃トラップ、それも侵入と脱出を阻む両立式だ。この無駄に細長い廊下は、これらのトラップを最大限に生かし、敵の行動範囲を一点に絞るため……ここを設計した奴は間違いなく罠張屋だな、つまり、この学園は日陰世界の……)
「ちょっと待って」
廊下の最終地点である扉に着いた所で、ユミが扉の横にあるパネルに手をかざしていた。
するとピピッと、機械音と共に扉が横にスライドしていった。
「数々の一級品な罠に加え、最新式の細胞判定装置まで……。 ここの創設者は、相当の心配性と見える」
「あはは、そうとも言えるかな~。でもね……」
ドォォォォォォォン!!
爆発音!敵か!?
俺は一瞬で戦闘体勢に入り、周囲に警戒網を張り巡らせる。
そんな殺気に気付いたのか、ユミが両手を振って制止してくる。
「だ、大丈夫!い つものことだから……っ」
いつものこと……?爆発音が?
「いや、そもそも地下での爆発はマズイだろう!?」
「あ、それも大丈夫。 この地下校舎は、周りを厚さ1Mの鉄筋コンクリートで覆われて作られてるから。手榴弾ぐらいまでなら耐えられるはずだよ!」
「なに、その無駄な強度! つうか爆発が日常茶飯事的な言い方してなかった!?」
「う~ん、爆破は珍しいかな。 もしかしたら、あの人達が来ているのかも」
「あの人達?」
「うん、陽西学園の問題児や異端児を集められた危険なクラス……Z組」
何だかただで際、胡散臭い学園が更に雲行き怪しくなって来ているぞ……。
大丈夫か、この学園。つうか早まったか、俺。
半ば後悔していると、ユミが「あっ」と正面にあるやたら豪勢な扉に指を向けた。
「着いたよ! ここが校長室」
「やっとか。 この学園の門(外の一般な方)を潜ってから、1時間と15分。凄く長かった」
まるで未知の施設を、冒険しているかのような疲労感があった。皮肉にも、ゴールである校長室の扉は、金メッキによるドアノブや装飾が施されていて、扉その物の材質も、最硬度を誇る大理石で造られているときた。
何なの、この学園。本当に無駄なところで金をかけるな。いや、流石は私立。国からの縛りが少ない分、やり放題って訳か。
「まあ、気にしても仕方無いか。 案内ありがとな。後は大丈夫だから、教室戻ってくれ。授業始まるだろ?」
「うん、そうだね。ユミ、皆勤賞狙ってるから戻らせてもらうよ!」
「真面目なんだな」
「フッフフーン。もっと誉めたまえ~」
いきなり胸を張って、ドヤ顔をしだした。一瞬だが、その際に揺れた胸には芸術を感じた。
「調子に乗るな」
「乗ってないよー。それじゃ、まったねーレイジ!」
タタターっと走って行ってしまった。
元気で明るい娘だったな。話してても気さくな感じで楽しかったし、次見掛けたら俺から声掛けるか。
「さて、校長と面会するか」
俺は大理石の扉を二回、コンコンと軽く叩いた。
すると明るめな声で、返事が返って来た。
「失礼します」
「やあ、よく来たね」
驚いた。校長ともなれば高齢の人と思ったんだが……若い。
しかも、どことなくユミに似ている。銀髪ロンゲに片方だけ小丸メガネを着用、背丈は長身で年齢的には22、3だろうか。どことなくユミに似ている気もする。
だが、纏っている雰囲気は静かで重い。威圧感とも違う圧力を感じさせる。そんな男は、「フフ」と不適に笑った。
「良く来たね。日陰世界で伝説の始末屋と言われた、終末の宴のNo.2坂本零弐君」
「!?」
こいつ……いま、終末の宴って言ったか?
なぜ知っている……!情報規制はされている筈だが!
「まあまあ、そう警戒しないでよ。 僕はこの学園の校長を勤めている、霧島雲雀だ。君をここまで送って来てくれたユミの父親でもある」
……ユミに案内されたことを知っている理由は、こいつの仕業だったからか。というか、やはりユミの家族か。
まさか父親とは……。
「校長と父親をやっている割には、ずいぶん若いんだな」
「そうかい? こう見えても私は今年で35歳なんだよ」
35歳で高校生の子供が居るって、色々と早すぎないか……?
「どのみち年齢に似つかない成りだな。 さて、手続きの話に入る前に聞かせて貰おうか? なぜ俺が終末の宴に所属していたことを知っている?」
「……」
校長と目が合う。息を呑むような沈黙が訪れた。
「その話は次回にしよう」
「は?」
校長が何を言っているのかよく分からない。だが、次回なんて待ってられる━━━
『to be continued』