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始末屋だった俺に新しい家族が出来た。  作者: 焔伽 蒼
第一話 始まる新生活
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Target004「陽西学園」

今日から私立陽西学園に通うことになった俺は、身支度をして家を出ようとしていた。


昨日は親父が送ってきた謎の手紙のせいで、イライラして寝付けなかったから今朝はやたら眠い。


俺が坂本家を出て5年とか書かれていたが、実際は3年だっつうの。


5年前は兄貴が居なくなった日だ。その兄貴を探すために、俺が家を出たのが3年前!


いかに俺より兄貴が大事かってのが良くわかったよ。だからイライラしている。



「まあ、今日から学生だ。今は3年ぶりの学園を楽しむとするか。1年しか居られないけど」



俺ももう18になる。だから高三からの転校と言う形で、学園に通うことになったのだが、その代わり日数が短い。


いや、日数が短いからこそ堪能しなきゃな。


私立陽西(ようさい)学園、どんな所なんだろうな。胸に期待を寄せて、俺は学園へ足を進めた。



━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━



足を進めること一時間、やっと陽西学園へ着いた。

交通機関を使えば20分もあれば着くのだが、どうも他人に任せて乗り物に乗るのは落ち着かない。


だから徒歩で来たせいか、時間がそれなりに掛かってしまった。



「にしても、特殊な学園だな」



俺は学園の門や校舎を見て感じた。

終末の宴に罠等の設置や開発を得意とする仲間がいたからこそ分かる。この陽西学園、セキュリティレベルが国防省並だ。



「ここまでのセキュリティ網、日向世界の一学園に必要か……?」



まあ、最近は日本の治安も悪くなっているし、公的機関も防衛に力を入れているってことか。



「とりあえず職員室に行こう」



━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━



辿り着けなかった。


昇降口から入って廊下を進んだり、階段を上ったり下がったり、職員室らしい部屋とかにも入ったり入らなかったりと歩き回ったが、職員室どころか教職員一人として見付からなかった。



「くそ……どうなってんだ。生徒すら居ないじゃないか。それに学園とか言うから、もっと豪勢なイメージだったんだが」



なんと言うか普通の高校って感じだよな。


まあ、そんな疑問よりも。


俺は眼を閉じて意識を空間把握へと集中させる。


終末の宴時代に得たスキルの一つ『空間把握』。極限までに五感の一つである、触覚を高めることで僅かな空気の振動を肌で感知する。

そうすることで、生物や機械等の存在、またその動きをも把握出来る。



「……誰も居ない……だと?」



空間把握を最大までに拡大して校内全域を視たが、人1人見付からなかった。



「そんなことってあるのか……?」



日にちは……携帯を確認してみた所、間違ってはいなそうだな。

じゃあ、なぜ居ないんだ。あとは空間把握が距離的に届かなかった、体育館とプールサイドに行ってみるか。



━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━



誰も居なかった。


体育館とプールサイドを確認してから、念のため校庭から裏庭まで周って来たが、結局誰も見付からなかったので今は屋上に来ている。


え?なに?なんなの? 日向に馴染む為の新たな一歩として、決意して登校して来たと言うのに出鼻を(くじ)かれたわ!



「はぁ……何か疲れた。 昨日からトラブルが頻発していたせいか、疲労感が半端ない」



にしても、この屋上は良いな。暖かい陽気に清々しい風、雑音が一切しない静けさ、何だか眠くなる。

休憩も兼ねて、少し横になって眼を閉じる。暖かな空気を感じつつ。今からどうするか考える。



「ねぇ君、ひょっとして転校生かな?」


「!?」


「きゃあ!」



眼を瞑っていた俺は、その声と共に飛び上がり、ばく転しながら後退する。



「何者だ!」



警戒しながらも話し掛けてきた女に問う。


日本人……ではなさそうだな。

肩まで伸びたゆるふわウェーブの白髪に、俺より少し背が低い体つきをしているが、出る所は出ている。


だが制服を来ているし、この学園の生徒何だろうけど、この俺があそこまで接近されて気がつかなかったんだ。油断出来ない……!



「ああ~、びっくりした。でも凄い身のこなしだね! 何者かと聞かれれば答えないとね! 霧島・ユミ・エスティリカって言います。皆からはユミって呼ばれてるから、君もそう呼んでくれると嬉しいな!」



殺気は感じない。目も泳いでないし、嘘をついている感じでもない。


敵じゃないってことか。



「悪い、誰も居ない校舎でいきなり話し掛けられたから、驚いてしまった」


「あ、それはユミにも責任があるし、謝らなくて良いよ。寝てるようだったから、そーっと近付いたのがいけなかったね。なんか昔から、足音を無くすのは上手くて……えへへ」



足音を消す?あれは最早、気配を殺していた。


そんな離れ技を無意識でやって退けるとは、隠密の才能があるな。



「でも良かった。 ユミはこの学園の生徒だろ?誰も居なくて困ってたんだ」


「え……? 誰も居ないって、ひょっとして地上校舎を探していたの?」


「まあ、そうだけど……地上校舎?」


「おかしいな……この学園に来る人は、全ての事情を知っている筈なんだけど……」



どういう事だ? さっきからこの女子、ユミが言っていることが良く分からん。


聞く限りでは、この学園に入る際に何だかの事情説明を受けるらしいが、手続きは全て仕組屋に任せていたから聞きそびれてしまっていたんだな。


とりあえずは彼女に道案内を頼むとするか。



「なあユミ、知り合っていきなりで悪いんだけど、俺を職員室まで連れて言ってくれないか」


「うん、いいよー!」



この後、俺は知ることになる。この学園がいかに危険な場所であるかを。



『to be continued』


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