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始末屋だった俺に新しい家族が出来た。  作者: 焔伽 蒼
第三話 襲い来る刺客
30/32

Target030「赤髪の亡霊」



【4月12日(日) 18時30分】



俺は一人、陽西学園に着いた。


一夜とメアリーは200m離れた位置から、気配を消して着いて来てもらっている。ヲンも1km先のビルから、いつでも援護狙撃が出来るように配置していて、終始学園の様子を伺っている。


さて、俺も〝赤髪の亡霊〟を探すとするか。



(〝空間把握〟!)



触覚を極限までに高め、空間の振動を計測して周囲の動きを感知する技を使う。


さて、どこにいるか。怪しいのは屋上とかだが……見付けた!



「つうか、ここって……」



驚いた事に敵の存在を感知した場所は、体育館だった。それも、地下の要塞学園ではなく陽西学園の生徒が使う地上部分の方だ。

見付けるのが早かった訳だ。



(逃げようとしない……俺の侵入に気付いてないのか?それとも、既に俺を殺ったと思って、仲間が戻って来たと思っているのか……)



どのみち気配を消さないなんて素人だ。


いや、油断は禁物か。あれだけの抹殺屋を雇うには相当の金銭が懸かっているはず。バックにいるのは巨大な組織に違いない。それに隠れないのは、余程腕に自信のある実力者と言う可能性もあるし……、警戒は充分にした方がいいな。



━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━



体育館へ着いた。未だ敵の気配は健在だ。流石に向こうも俺の存在に気付いているだろう。


ここにきて殺気も出している。



「……入ってこいって事か」



俺は臨戦体制を取りながら、体育館の中へと入った。


すると赤髪の亡霊・テトラは居た。壇上にあるスピーチ台に足を組んで座っている。

見た目は若い男性で、格好等はヤンキーと言った感じか。真っ赤に染められたロン毛を(なび)かせて、スピーチ台から下りる。



「お前が坂本零弐か。まさか一人で、刺客を破ってくるとはな。腑抜けても元終末の宴の一員か」


「……俺の情報をどこで手に入れた?」



終末の宴の名を出した以上、この敵は見過ごせない。

俺達の名は確かに有名だ。だがそれは、組織としての名だ。その構成員である俺達の本名は、情報操作や隠蔽操作によって消される。


それなのに、こいつは俺の事を終末の宴と断定した。誘導尋問(ブラフ)とも考えられるが、この男の目は嘘を言っていない。


ならば、その情報をどこで得たか聞く必要があるな。例え半殺しにしてでも。



「おー怖い。殺気が伝わって来るぜ。だが、お前は俺には勝てねぇ!」


「は?」



は? こいつは何をいっているんだ。

まさか気付いていないのか?実力さを。この絶望的な状況を。


俺が負ける可能性は、万に一つも無くなったんだぞ。お前と会話している数秒でな。



「すっとんきょうな声を上げてどうしたぁ?」



確定だな。こいつは情報だけを知った素人か。対峙して分かったがこいつは雑魚だ、今の事態を把握出来ない時点で勝ち目がないそとすらも判らない素人。勝算が他にもあるのか?



「なあ坂本、俺が本当に刺客を全部お前に差し向けると思うか?」


「何……?」


「お前が始末屋━━━日陰世界を抜けてからの情報を明かされている。可愛い妹がいるんだなぁ!」



ニタリと凶悪な笑みを漏らす。



「……成る程、それがお前の自信か」


「おうよ!いくらテメェが強くても、人質を取られたら無力も同然だろぉよ!だから、おとなしく殺されなぁ!」



スラァァとスピーチ台に置いてあったと思われる剣を取り出した。



「ねぇ、赤髪のお兄さん」



突如、体育館の中に女性の声が響き渡る。俺はこの声の主を知っている。来たか。



「ああん?誰だテメェ!」



テトラは体育館の入り口を見る。そこに居たのは桜色のロングヘアーに、背が低いせいか中学生ぐらいに見えるが、実年齢は俺と同い年の少女、花梨桜花(かりん おうか)こと終俺ら末の宴のボスがいた。



「私の事を知らないのね。でも零弐の事は知っている。これの示す所は一つ……貴方のバックにいる組織は、闇人組織〝闇夜の華〟ね」


「……っ!」



男の焦り顔が、図星を表現していた。



「闇夜の華……納得した。どおりで俺の事を詳しく知っているわけだ。さしずめ、お前らを差し向けたのは、俺への挨拶代わりなんだろう」


「そんな感じね。いわゆる捨てゴマって所かしら」


「……んだと!この俺が捨てゴマだとぉ!」



その発言にキレたテトラはiPhoneを取り出し、残りの刺客に電話をかけた。



「俺だ!人質を殺せ!」



腹いせに俺の妹達を殺すよう命じたようだが、相手からの返答はないようだった。

まあそうだろうな。だって、桜花がここにいるんだから。



「おい!何で返事をしねぇ!」


「貴方が零弐の家に差し向けた刺客なら、今頃武装警察が捕獲しているんじゃないかしら」



……我がボスながら恐ろしい。きっとボコボコにした上に、武装警察に通報したんだろうな。


奴等は日陰世界の警察だから、迅速かつ的確に日陰世界の問題を処理する。


だとしたら、もう二度と刺客とは連絡付かないんだろうな……。基本的には終身刑だからな。



「因みに他の刺客達の場所も教えといたから。置き手紙で」



なんか古典的だった!



「くそが!だ、だが所詮は腑抜けの坂本とちょっとデキる程度の女!まとめて殺してやる!その次に妹共を殺す!」


「……どっちがクズなんだかな」


「三下にも程があるわね……これじゃ弱い者いじめみたいじゃない!」


「まあ闇夜の華に対しての牽制にもなるだろう。〝影に生きる我ら〟」



俺はある言葉を唄う。



「はあ、やるのね……気が乗らないけど仕方ないわね。〝光り閉ざす事なかれ〟」



桜花も唄を(つむ)ぐ。



「!? こ、これは……!」



赤髪の亡霊は、この零弐と桜花が唄った言葉を知っていた。



「〝影り揺るがす事なかれ〟」



唄を二階の通路にいたメアリーが紡いだ。



「〝業に溺れ闇に墜ちし哀れな人よ〟」



今度は壇上に現れた一夜が唄を紡ぐ。



「……〝我らが終末を届けよう〟」



最後に赤髪の亡霊の背後に現れたヲンが唄を閉じる。



「まさか……終宴歌!終末の宴が闇人を本気で狩る際に唄う号令!お、お前ら!全員終末の宴なのかぁ!?」


「気付くのが遅いぜ、三下!〝終われ〟」



零弐の閉め台詞と共に、赤髪の亡霊テトラは零弐一人に圧倒された。



『To Be Continued』

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