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始末屋だった俺に新しい家族が出来た。  作者: 焔伽 蒼
第三話 襲い来る刺客
26/32

Target026「映画館」



【4月11日(土) 9時15分】



映画が始まる時間が迫っていたので、事件現場を後にした俺達は、濁りを残しながらも映画館まで来ていた。


因みにSDカードは何とか拾うことが出来た。

ヴェーラが不自然に指を向けて倒れていたこと。

その指先にSDカードが落ちていたこと。

これらからダンイングメッセージだと判断した俺は、わざと観衆の目を反らす為に一芝居を打ち、隠密に秀でたスキルを駆使して、SDカードを取った。


今はカードケースに容れて、俺のポケットに入っている。



「ねね、お姉ちゃん!ポップコーン1人じゃ食べ切れないから、一緒に食べようね!」


「うん、いいよー」



二人が仲良く話している。今は家族の団欒を楽しむとするか。この件は後回しだ。



━━━この時、俺は日向の生活と新しく出来た家族の暖かさに、いつも張り詰めていた始末屋時代の緊張を解いていた。

それがいけなかった。後にあの時、直ぐに帰宅してNPC(ノートパソコン)でカードの中身を確認していれば、あんなことにはならなかったのにと後悔する事になる。



「兄さんも食べて下さいね」


「ああ。ただし、味は塩で頼む。しつこい味や甘ったるい味を食べたい気分じゃないんだ」


「わかりました。大きさはどうしましょうか?」


「そうだな……三人もいるし、一番大きいので良いんじゃないか? 余ったら持って帰れば良いだけだし」


「そうですね!」



━━━━━━━━━━



映画が始まった。


タイトルは〝ドラゴンクラッシュ〟と言うもので、カンフーファンタジーな内容だった。


現在、中盤まで見て来た限りだと、チャッキー・ジェンが異世界に跳ばされてしまい、本物のドラゴンと素手で挑むと言うものだった。

素手でドラゴン倒せるのかと疑問だったが、チャッキーがまさか覚醒して龍砕拳を使い始めるとは思わなかった。

今は龍人四天王の一人と戦っている最中だ。



「あ、すいません」


「どうぞ」



後ろの方で観客の男性が出ようとしたのか、隣の人に道を開けて貰うように頼んでいた。



(確かに狭いもんな━━━!?)



ゾクッと寒気がした。ほとんど始末屋時代に鍛えられた条件反射で、後ろ首辺りで何かを受け止めた。



「……!」



これは針……?間違いなく急所を狙って来ていた。


バッと後ろを振り向くが、立ち上がった男性はもういない。後ろの人達から怪訝な顔をされるだけだった。


直ぐに前を向くと、男性はもう出口の方にいた。



(あの身のこなし……日陰の人間か。なぜ俺を?昨日の一件が関与しているのか!?)


「どうしたんですか……?」



葉月が小さな声で俺に話し掛けてきた。

しまったな、顔に出ていたか。二人を置いて行くわけにもいかないもんな。家に着くまでは、警戒と回避に集中するか……。



「……」



この時、伴音が不可解そうな顔でこちらを見ていた事を知らないでいた。



━━━━━━━━━━



映画が終わって観客達と一緒に出口へと向かう。



「映画良かったねー。伴音ちゃんは楽しめた?」


「うんっ!最後にチャッキーが放った龍王粉砕昇がかっこよかった!流石の龍王・ラグシャラも木端微塵だった!」


「そうだねっ。でも最後の方は、ほとんどカンフー使わなかったよね……」


「そういえば……。まさにタイトル通りの内容だったもんね……」


「……」


「兄さん?どうしましたか……怖い顔してますけど……」


「悪い……白熱シーンがまだ冷めてなくてな」


「お兄ちゃん、のめり込み過ぎだよー」


「あはは、そだねー」


「ハハ……」



俺の予想じゃ、次に仕掛けて来るとしたら、間はそんなに開けない筈……。怪しいのは、出口を出た辺りか……



「チャッキー様めっちゃカッコよかったね!」


「そうだね。僕ならもう一回見ても良いかな。粉砕拳なんかこうやって振りかざし方がイケテたし━━━」



目の前を歩くカップルがテンション高めに、チャッキーの物真似をしていた。つうか、その振りかざした手、俺に当たるコースだぞ。全く━━━!?当たるコース!?マズイ!



その男の手からシュコンッと隠しナイフが出てきた。



ガッ!



「じゃ、また来ようね!《殺った?》」


「良いよ!《……いや……何者だよ、コイツ……》」



カップルは出ていった。


間もなくして、俺達も外へ出た。



「あれ? お兄ちゃん、口元……どうしたの?」


「あ、大変です!血が出てますよ!」


「ああ、飲み物飲んでいる時に口をストローで切ってしまったんだ」



あの時、暗闇かつ一度目と同じ館内での襲撃に異標を突かれた為、反応が遅れてナイフが顔の目の前まで迫っていた、交わす事が間に合わないと判断した俺は、そのナイフを口で白刃取りを行い回避。

ただ口元を少し切っていたようだ。



「ちょっと(かが)んでください」


「悪いな」



葉月がフリル付の可愛いハンカチで、口の血を拭いてくれた。



「いえ。 でも……私達と映画行くの……楽しくなかったですか?」


「……え? いや、そんなことないぞ!楽しんでる!」



それは真実だ。多分、警戒しているから、周りからは俺がつまらなそうな顔をしているように見えたんだな……。くそ!表情を隠すのも下手になって来てやがる。



そういえば一夜(いちや)が言っていたな。

「刃とは戦場の中で磨かれるモノです。使われない刃は、ただ朽ちて錆びれていくだけですよ」と。……身に染みるな。



━━━━━━━━━━



零弐達は映画館から外に出た。


そんな零弐を近くの車の中から見詰めている男がいた。



「ウヘヘヘ、ミツケタ、ヒョウテキ」



男の様子はおかしかった。


その男はいきなりアクセルを踏み、急発進した。零弐に目掛けて。



━━━━━━━━━━



「きゃああ!」


「突っ込んで来るぞー!」


「!?」



俺は車が突っ込んで来るのに気付いた。



(またか!回避━━━!?)



そこで更に気付く。〝葉月と伴音にも当たる!〟と。



「くっそ!」


「兄さん!」



ドンッと〝俺が葉月に〟押される。



「え……?」


「お姉ちゃーん!!」



葉月はニコッと笑い、車は葉月と共に映画館に突っ込んだ。



「は、葉月ぃ━━━━━━!!」



『To Be Continued』

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