Target022「イゴール姉弟」
【4月10日(金) 19時20分】
ヴェーラが周囲に展開している特殊性糸は、ワイヤーにも勝る強度を誇っている。
今の手持ち武器じゃ、断ち切る事が出来そうにない。
手としては糸による結界を張られる前に、ヴェーラに近付き根本から糸を出している装備を破壊するしかない━━━!
(━━━のだが!)
「ヴェーラ姉ェには近付けさせねぇぞ!坂本零弐ィ!」
「邪魔な……!」
弟のニコライが応戦してくるせいで、ヴェーラに近付けれない。
「ふっ!ふっ!」
息を吐きながらナイフを確実に、俺の急所に目掛けて突いてくる。
コイツ、始末屋のくせに命を取りに来ているのか!?
日陰世界には様々な裏稼業がある。簡単に例を挙げれば、こんな感じだ。
『始末屋』
ターゲットが個人なら捕獲・組織なら壊滅させ、無力化する。原則として殺傷を禁じられる。値段は依頼価値に比例。
『仕組屋』
人払い・マッピング・人材育成・政治操作等を行う。良心的な値段。
『情報屋』
一般ニュースからブラックボックスにも匹敵する情報等を、高額で売りさばく。
『抹殺屋』
始末屋の稼業類に殺傷を含む仕事。値段は高額。暗殺も行う殺し屋のような稼業。
『解体屋』
人工物の破壊・隠蔽工作等々。ただ、本業程のスキルが無いため割と安い。
『派遣屋』
いろんな稼業を経験した者を、定額で貸し与える何でも屋。
『道具屋』
武器・防具・工作具・薬物等、それぞれの稼業に適した道具を売り歩く稼業。料金はプライスレス。別名、日陰世界のスーパーマーケット。
『武器屋』
武器を売るより、作成にメインを置く。プロは刀剣から重火器までオーダーメイドしてくれる。詐欺が多い。割と高い。
『罠張屋』
あらゆる場所にトラップを仕込んでくれる。割と安い。罠代は別途。
『伝言屋』
日陰世界において伝言屋は、中立を推奨し、それをランキング一桁ナンバーが合意をしている為、敵を作ったり狙われたりしない。それ故に、あらゆるメッセージを例え凶悪組織の中枢にだって届ける。
尚、伝言屋に手を出した者(組織)は、一桁ナンバーつまり〝天上〟と言われる化物に処罰される。
天上に狙われる真似なんて誰もしないよな。
日陰界には、実力者にナンバーが与えられる。
『No.000~No.999』までいて、No.031~No.099を『中位ナンバー』と言い、No.010~No.030を『上位ナンバー』と言う。
上位ナンバー以上が『一桁ナンバー』と言われ、『天上』と言う称号を与えられる。
更にNo.1・No.2・No.3には、特殊な2つ名まである。ちなみに最上位三名は、交代が激しく元を含むと結構いる。
と、説明が長くなってしまった。まあ、誰にしているんだと言う話だが。
話は逸れたが、つまる所〝始末屋〟は原則として殺傷を禁止されていて、それが出来るのは〝抹殺屋〟や許可証を持った者のみだ。
考えられるのは前者だな。始末屋から抹殺屋へ転属した。許可証を取るには、ある組織への許可を必要とするから、こいつら程度の実力では許可どころか接触すら出来ない。
(……仮にどちらでもなかったとしたら、ただの阿呆だな……下手したら秩序破り━━━闇人にすらなりかねないからな……)
「チィッ!当たらねぇ!ヴェーラ姉ェ、手を貸してくれ!」
「糸なら貸すよ」
ガクンッと右腕と左膝が動かなくなった。
しまった!やられた……!
「サンキュー!死ねや!坂本零弐ィ!」
ニコライと戦闘をしている間に、ヴェーラが糸の結界を張り終えていたのか!
右腕と左膝を封じられ、ニコライがすかさず果物ナイフを喉元に突き立てようとしてくる。
「くっ! 闇人に堕ちてまで俺を狙うか!」
仕方無いと俺も覚悟を決めて、この絶体絶命の場を覆す準備に入ろうとした途端━━━それを察したのか、ニコライはピタァ!とナイフを止めた。
「!?」
気付かれたか!? だが、まだ技の初期動作にしか入っていない。初見で見抜く事なんて出来る筈がないと思ったが、ニコライが止めたのは別な理由があった。
「ちょっと待て、坂本零弐ィ!俺らが闇人堕ち……だと!?」
「は……?」
何を言っているんだ?それを解っての行動だろう。
バカなのか?いや、弟はバカっぽそうだが……姉のヴェーラの方を見る。
「許可証ならある」
そこでピラッと懐から巻物を取り出し、俺に見えるように向けてきた。
……。あり得ないと思った。
いくらコイツらが愚かだったとしても、日陰世界の秩序を知らない訳がない。
そして、許可証を入手するのが、どれだけ困難かを俺は良く知っている。
あの巻物(許可証)は偽物だ。
「お前ら……騙されているぞ」
「「!?」」
「本物の許可証は、そんな持ち歩き難そうな巻物じゃない。カードに特別な紋章が入った小さなやつだ」
「なん……だと!?」
「うそ……あの男はこの巻物がライセンスだといって、確かに人を殺した……それも目の前で!」
珍しくニコライが静かになり、ヴェーラが声を上げた。
「なるほど。偽物の許可証を見せて、人を殺害したか……それが出来ると言う事は、その男は抹殺屋か━━━もしくは秩序破りを恐れない闇人と言う事になるな」
「そんな……!」
展開されていた糸の結界が緩みだした。
「レイジ!しゃがんでぇー!」
「!」
そんな急を要するかユミの声に、反射的にしゃがむ。
同時に━━━パァンッと音がなった。
(銃声!狙撃か!?)
いや、待て。今の軌道線を考えると、ニコライに当たるのではないかと気付き、上を見やると嫌な予感は当たり、ニコライの胸元から血が溢れて来ていた。
「くふっ……!」
「……っ!」
まさか、狙いは俺ではなくて━━━!
『To Be Continued』




