Target021「刺客」
【4月10日(金) 18時00分】
「いかなる時も、食事をする際は警戒を怠らない事。人間に取って最も隙が出る要因は、食事中・トイレ中・愛する女性との最中が代表です。つまり、刺客等はそういった隙を狙ってきます。なので、我々は常に武器を隠し持っていなければなりません。しかし、礼儀作法に人を傷付ける物など言語道断です」
俺はテーブルマナーの講義を受けていたのだが、この先生も日陰者か……。
普通テーブルマナーに武器がある前提でしをするものなのか?
いや、日陰側ならそうなのかもしれないが、一応日向側の学園と言う名目ぐらいは守ってほしい。
いやいや、そう考えるとこの学園は本当に日向側なのかも怪しいよな。
つうか、最後の要因って……。
「と言うことで、武器は銃火器等を装備するのではなく、サバイバルナイフやコンバットナイフが有効的です。そうすれば、不意を突かれても、即座に反撃及び周りに被害を出さずに対象を返り討ちに出来ます。他にも、日常品等を改造し、殺傷武器へと変えて持っているのも手ですね」
溜め息混じりに横に居るユミに話し掛ける。
「なあユミ、これは食事をする際の作法ではなく、食事をする時の刺客対策じゃないのか?」
「あはは、そだね。 でも、レイジも予想ぐらいしてたんじゃないの?」
「まあ予想はしていたな。外れて欲しかった訳だが」
「悪い予想ほど当たるんだよ。ユミ先生の名言でぇす」
「なるほど。そこらの先生より為になる名言だな」
ユミの軽い感じに放たれた重い名言に、ヤケクソ気味に共感しておいた。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
今日はテーブルマナーの授業しかなく、直ぐに帰宅になったのでユミと一緒に帰っていた。
長い廊下を通り、地上への階段を上がり、いつものように体育館から出る。そこで気付いた。
「!? ユミ、悪い!」
「きゃっ!」
ユミの後ろ襟首を掴んで、体育館の方へ突き飛ばした。
ズダン!
そんな音と共に、さっきまでユミがいた位置に人が振ってきた。
「交わされたか」
「この殺気……刺客か!?」
しかし、一体どこの組織の者だ?
狙われる理由なら山程あるが、こいつらの雰囲気からして実力者であることは間違いない。
武器は……あれは果物ナイフか? あそこまで殺気出しておいて、ただの日用品を武器にするか?何か仕込みがあると考えた方がいいな。
「待ってたぜ!坂本零弐ィ!あの時の借りを返しに来たぜ!」
「誰だよ、お前━━━!」
……! 身体が動かない!?
「うるさい、ニコライ。余り騒ぐと下に居る奴等に気付かれるわ」
「なんだよ、ヴェーラ姉ェ!クール過ぎるぜ」
「ニコライがヒート過ぎるのよ」
なるほど、こいつらか。
二人が名を呼びあってくれたお陰で、やっと思い出せた。
「お前らイゴール姉弟だな」
「お!やっと思い出したか!坂本零弐ィ!」
「ああ、そのやかましい名前の呼び方と、この嫌悪感……忘れる訳ないだろ?」
イゴール姉弟、始末屋のコンビだ。昔、ロシアである組織のトップを始末する時に、相手側の用心棒としてぶつかった相手だ。
確か弟のニコライは一般で買えるような果物ナイフを好んで使い、姉のヴェーラは糸を使った捕縛術に長けていたな。
いま身動きを封じられているのも、糸の網にかかってしまったのだろう。
だがこの糸は脆い。気を高めた状態でナイフを一閃すれば切れる。
「懲りないな、お前達も。前のように俺が圧勝して終わりだ」
俺は袖に隠していた小型ナイフを取り出す。小型とはいえ、日本刀を創る過程を得て生まれた業物。刀身に気を流し、更に切れ味を上げる。
そしてナイフを振る。
「!?」
「クス」
ヴェーラが笑う。その意味を直ぐに理解した。
「切れない……!」
以前はこれで切れたのに、まるでゴムのようにグニャッとしていて、切れなくなっていた。
「一度破れたんだ。その対策をしないわけがない。これは女の髪を長い時間かけて、少しずつ抜き取り、編み込んで造った特殊性の糸だ。ゴムのように柔らかく、ワイヤーのように鋭利になった」
「お前のソレも業物と言うことか」
「そう。武器は互角━━━業物と業物の勝敗は、使い手の技術により決着する」
ヴェーラがシュルルと糸を舞わす。
「再戦よ」
「俺も忘れるなよ!」
ニコライも果物ナイフを両手に一本ずつ携え、ヴェーラの前に立つ。
前衛のニコライに対して、後衛のヴェーラ……それぞれの特性を生かした完璧な陣形だ。実力も依然とは違う。
昔のように実力で圧倒する事が出来ない……めんどくさい事になったな。
「ユミ、もう少し後ろに下がってろ」
「う、うん……」
流れ弾に当たる可能性もあるので、ユミには安全圏まで下がってもらう。
「さて……今ある手持ちの武器じゃ、あの糸は切れそうにないな。となると、交わすしか無いわけだが……」
「余所見は禁物よ」
糸が更に増えていき、逃げ場を無くしていく。
マズイ!結界を完成される前に手を打たないと!
俺はヴェーラに向かって駆けた。
『To Be Continued』




