Target019「お土産」
【4月8日(水) 20時10分】
「ただいまー」
「おかえりっ!お兄ちゃん」
「兄さん、お帰りなさい」
玄関を開けると、葉月と伴音が迎え出てくれる。未だに家に帰ると、誰かが居るということに馴れない。だが、心地よさを感じる。
徐々に今の生活を気に入り始めている訳だが、妹達はどう思っているのだろうか?
「はい、おみやげ」
俺は帰宅時に、ユミにアドバイスを貰いながら葉月と伴音へおみやげを買いに、駅側にあるデパートへと向かった。
結果、大きな物を買うより、小振りな物を一つずつ買う事になった。
「葉月はこっち、伴音はこっちな」
「おみやげですか……!」
「わぁーい!お兄ちゃんからの初の贈り物だ━━━!」
「気に入るかは分からないが、一応考えて選んで来たつもりだ」
「あ、あの、今見ても……!」
「あ、ああ、もちろん」
「私も見るっ!」
葉月は凄く慎重に包装を取り除き、伴音はポケットから取り出した(何用か分からない)カッターで、包装を綺麗に剥いていく。
「これって……ブックカバー」
「わわっ。 ともねのはエプロンだぁー!」
二人に選んだのは、それぞれの趣味に合った物にした。
ラノベを読む葉月は、その趣味を人に知られたくない節があったからブックカバー。
型押しされた革素材で創られていて、草原をイメージした緑色に黄緑の四葉を型どった刺繍が入っていて、外から見たらラノベかどうか分からない。更には革製と言うのもあり、長持ちする丈夫さに栞も付いているブランド品だ。
これは完全にユミの助力が入っている。
そして伴音のエプロンは、世界的に有名な“Jessie Steele”と言う店のビンテージエプロンで、西洋風の華模様と控えめにあるフリルが可愛さをアピールしている物だ。
これのコンセプトは、子供らしい可愛さを残しつつも、大人びた優雅さを醸し出すところにある。
大人っぽい所がある伴音にはピッタリだと思う。
値段こそ張ったが、われながら良い買い物をしたと思う。
しかし、二人は中身を見たまま固まってしまっている。
(あれ……選択ミスったか……?)
すると、葉月と伴音は「ちょっと待ってて《ください/ね》!」と言って、奥へ消えていった。
「な、なんだ?」
すると先に戻ってきたのは葉月だった。よく見ると右手にさっきのブックカバーを着けたラノベを持っている。
「ピッタリです! すっごく持ちやすいですし、模様も可愛くて、これなら電車の中でも読めます……本当に……本当に嬉しいです……」
「え? ちょっ、喜んでくれるのは嬉しいけど泣くほど!?」
嬉し泣きをしてくれた。ギュッとカバーを着けたラノベを抱き締めながら何度も「ありがとうございます」とお礼を言ってくる。
何だか頬が熱くなってくる。
「お兄ちゃん、こっち来てー!」
「伴音か、ちょっと待っててくれ。 葉月、とりあえず部屋へ行こう」
「……はい!」
居間へ向かうと、伴音が「じゃんっ!」とエプロンを着た状態でくるりと回転を踏んだ。
「お披露目だな。似合っているよ」
「わぁ!伴音ちゃん、可愛い~!」
「えへへ~、そっかな」
「うん!何だか大人っぽく見えるよ!」
「ああ!サイズもピッタリだし、伴音の明るい性格にもマッチしている感じだ!」
「えへへ、えへへへへ、えいっ」
「わっと……」
伴音が俺の腹回りに抱き着いて来た。顔をスリスリとこすってくる姿が子犬みたいで、頭を撫で回したくなる。
「めちゃ嬉しいよ、お兄ちゃん!ありがとう!一生大事にするね!」
「私も一生大事にします!」
「ま、まあ、家族になった記念だしな。喜んで貰えて良かったよ」
二人の笑顔が見れて嬉しかった。この日二人が見せてくれた笑顔を護りたいと感じた。それは同時に葉月と伴音を大事な家族であり、存在であることを実感した時だった。
「でも良かったね、お姉ちゃん。 ちょうどらいとノベル?のカバー欲しいって言ってたもんね」
「うん!」
「そう言えば、伴音にラノベの事を教える約束だったな」
「教えて欲しいな」
「良いぞ。とりあえず、どんな作品を見せるかな……」
「初めての人にオススメするなら、あまり地の文が無いのが良いよね」
葉月が提案してくれた案は的を得ていた。
素人にラノベを見せるには地の文……つまりナレーションに当たる台詞を少ないのを見せるのが効果的だ。
で小説を読んでいるがラノベは読んだ事のない人、小説・ラノベを読んだ事のない人にオススメする際には、キャラの台詞が多いのが良い。
小説経験者にはラノベとの違いを知って理解して貰う為に、両方知らない未経験者には読みやすさと内容を理解して貰う為にと言うのが理由だ。
そこで俺と葉月は、オススメなタイトルを探す。そして、目星がついた所で明日買いに行こうと言う話になった。
ちょうど良いことに、明日は4月9日(金)に行われるテーブルマナーの説明と教科書配布をしただけで下校になる。
そこで俺の学校が終わったところで、自宅のマンションから一番近い東新宿駅で待ち合わせる事になった。
家族水入らずの出かけだ。まず書店に行って、帰りに外食をする。葉月も伴音も今から明日の準備をすると意気揚々と部屋へ帰った。
(ユミにも今日世話になったから、何かプレゼント買うか)
こうして一日は終わった。
『to be continued』




