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一説によると犯人は僕らしい


 情報の整理が必要だろう。

 きっと、僕以外のみんなも、少なからず混乱はしているはずだ。この辺で全員の中の情報を一致させておいた方がいい。

「そうだね、糸束くん。限りなく君が怪しいことに変わりはないにしても、全員の認識を共有させることは重要だ」

 何というか。柱木さんは正直なヒトだ。彼は本当に僕のことを怪しいと思っているのだろう。だけどそれは、まだ怪しい止まり、だということでもある。状況さえ変われば「疑って悪かった」と言って、握手でもしてくれるだろう。

「じゃあまずだ。数学さんが死んだ」

 平静な声で。柱木さんが言ってみせる。

「ここの認識は、皆、できているよね」

 それぞれに同意の返事を返す。

「私たち全員が彼の部屋の遺体を発見したのは午後八時半頃」

「ゲームを終えて、一度この大広間から解散したのが七時二〇分過ぎくらいだったから、だいたい一時間ですね」

 分道さんが補足する。生きてる数学さんから死んでる数学さんになるまで、だいたい一時間。

 その前まで、同じ画面でゲームを楽しんでいた気のいいおじさんは、たったの一時間でデッドエンドを迎えてしまった。

 もしかしたら、あのヒトのことだ、今頃コンテニューボタンでも探しているかもしれない。それとも、誰かが蘇生アイテムを使ってくれることに期待しているだろうか。ごめんね数学さん。僕には何もできない。こんな風に、ゲーム脳じみた現実逃避をするくらいしかできないよ。きっと、真犯人だって。捕まえる事は、僕にはできない。

 ごめんね、数学さん。

 百畳近い数の畳の部屋で、テレビにつながったゲーム機のコントローラーは、もう動いてはいなかった。

「はい。その間に、それぞれが何をしていたのか、なるだけ詳しく話していただきたい」

 刑事ドラマでよく見る展開だ。僕にとっては、都合のいい無実証明の場なのだが、彼にとってはそうではないのか。

「柱木さん。今更そんなことする必要はねえだろ」

 と、二野さんは反対した。

「どうしてだい」

「どうしてもこうしても、犯人はもうそいつで間違いないでしょ」

 視線だけで僕を示す。

 証拠なんて無いはずなのに、彼の言葉自体には、確かに反論する要素が薄いからなのか、柱木さんも分道さんも表情を歪ませた。

 ただ、一人だけ、この場で「糸束犯人説」について理解を示していない人間がいる。

「あの。それってどういう事ですか」

 顔面に畳の痕を残してしまっている、僕と同い年の雅さんだ。

「雅さんはいなかったね。そういえば」

 柱木さんは少しだけ逡巡する様子を見せて、

「女の子なんかは、あまり見たくはないかもしれないけれど。やっぱり見てもらった方がは早いかもしれないな」

 数学さんの遺体を。

 最後の言葉は省略されていた。

 けれど、畳メイクの間抜けな少女も、そのくらいは察せる。

 というか。「女の子なんかは」とは、少し差別的だな……。

 そんなの。僕だって見たくないよ。


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