隊長
暑いですねぇ。このあたりでは今日ついに35度を超えました・・・。
魔法の素質を見てもらった後、俺はマリーチェと模擬線をすることになった。
「模擬線と言ったって、どうするんだ?」
「お互いに武器を持って構える、まずはカツヨリから打ち込む、
その後はあたいから打ち込む。それだけだ!」
それだけって・・・。
「武器は?模擬線で真剣を使うわけにもいかないのでは。」
「これを使え!」
マリーチェが腕を振り投げ渡してきたものは木刀だった。
「木刀・・・。この世界に刀は無かったのでは?」
「あたいが作ったのさ!木から削ってな!」
すごいな、一度帯刀しているのを見ただけなのに大体それらしく作られている。
「構えな!」
そう言ったマリーチェはこの木刀よりやや短めの両刃風の木剣を片手で握り、斜に構えていた。
先ほどまでの喋っているときのおおらかな雰囲気とは違い、鋭い殺気を放っていた。
「わかった。」
木刀を両手で握り中段に構える。息を吸い、そして吐く。集中しなくては。
じっと相手を見る。マリーチェは強い。ただ対峙しているだけでそれを思い知らされる。
数秒しか経っていないのに汗が首を流れ、喉が渇く。
これは模擬線だ。マリーチェは打って来いと言っていた。ならば打ち込む!
「でやあああああああああーッ!!!!!!!!」
ガキッ!!!
「早いな!それに力もある!」
身体が思った以上に良く動く、若返った影響か・・・。いやそれ以上だ。
踏み出した足は馬よりも速く、振り下ろした腕は岩をも砕けそうな感覚だった。
しかし、それをマリーチェは受け止めた。やはり強い。
「もっと打ってきな!」
「言われなくても!」
右から左からあらゆる角度から打ち込むがすべて受け止められる。
「ほえー、カツヨリ思ったより強いんだねー。」
「マリー相手にここまで打ち込んでいるのでしたら大したものですわ。」
シンクとエリシスが何か喋っているが聞いている余裕なんて無い。
マリーチェ自身も決して余裕を持って受け止めているわけではないようだ。
「どうした、息があがってきたぞ!」
「くっ!」
一度後ろに飛び退き、距離を取ろうとする。
しかし、防御に徹していたマリーチェがここで木剣を両手持ちに握りなおし、振り下ろしたのだ。
「甘いなッ!」
(若様、まだまだですなぁ!)
「え!?うわあああああああああっ!?」
何がおきたかわからなかった。
マリーチェが叩きつけてきた剣をこちらも刀で受けたのだが、俺は後ろへ吹っ飛んでいた。
「それまでですわ!」
「カツヨリ!!」
エリシスが静止をかけ、シンクがこちらへ駆け寄ってくる。
「マリー、本気を出しましたわね?」
「いやー!すまんすまん、ついな!」
「つい、じゃありませんわ!カツヨリが思った以上に強かったから助かったものを!」
マリーチェがエリシスに何やらガミガミ言われている。
俺は仰向けになり空を見上げていた。青い空に雲が浮かんでいる。空は日本と変わりないのだな。
「大丈夫カツヨリ?」
「シンク・・・。あぁ、ちょっと手が痺れてるけど平気だよ。」
「よかった・・・。」
半身を起こし、周りを見やると折れた木剣の刃先と真っ二つになった木刀が転がっていた。
「おーおー!大丈夫かカツヨリ!」
「あぁ。マリーチェは強いな。」
「いやいやいや!カツヨリ、おまえさんも大したもんだ!
これで最高位魔法も使えるってんだから戦場ではあたいより強くならぁ!」
そういうものなのか。
「マリーチェは魔法使えないのか?」
「使えないわけではありませんわ。ただマリーは魔法の素質がほとんど一段階程度にしか
ないのですわ。それでもこのバカ力の上に、白兵戦での判断力は天才的。
単純な戦闘ではウィンディアで一・二を争いますのよ。」
領土内でマリーチェ程に強い人が他にもいるのか・・・。
日本での戦も信長が台頭してからは短期決戦の武士が斬りあう戦に変化していったが、
それに加えて魔法が入った形というのがこの世界の戦ということのようだ。
「しかしまぁカツヨリは強いな!皆を呼んでお前さんを紹介しようじゃあないか!」
「皆?」
そう俺が尋ねた瞬間、エリシスとシンクは手で耳を塞いでいた。
「手の空いているもの訓練場に集合――――!!!!」
マリーチェが大声で叫ぶ、無論俺は耳を塞ぐことができなかったため耳が痛い!
軽い眩暈のような感覚に囚われた俺を他所に、訓練をしていた兵士達がゾロゾロと集まってくる。
「よお隊長さん達!雁首揃えて何の用でぇ?山の大将は見えねぇみてぇだが?」
「元気そうだなおっさん!たまには娘の世話もしてやれよ!
あとハブは執務中だ!今日は皆に紹介したいやつがいる!」
白髪を短く切りそろえた髭面のおっさんが兵士達を代表するかのように声をかけてきた。
どうやらシンクを始めとするハルの家臣四人は隊長格だったらしい。
「こいつはカツヨリ!どうやら別の世界から来たらしい!
あたいと互角に打ち合える剣術の腕は確かだ!それに最高位の水魔法の素質がある!
訓練場や戦場でも顔を合わせることもあるだろう!」
「最高位だってよ・・・。」「隊長と互角ってか・・・。」「マジパネェな・・・。」「相変わらずデケェ乳だ・・・。」
マリーチェの言葉に兵士達がざわめく。
「カツヨリは客将としてウィンディア軍に加わる!皆よろしく頼む!」
「「「はい!!!!!」」」
集まった兵士達がマリーチェの号令に返事をした。
「カツヨリも訓練場で何かあったら皆を頼るといい!困ったらおっさんに聞きな!」
「隊長さんよぉ、ワシにはダンカンてぇ名前があるんだがの。まぁ坊主よろしく頼む。」
「はい、よろしくお願いします。ダンカン殿。」
ダンカン殿が右手を差し出し、俺はその手を握った。
「では、今日のことは取りまとめてハル様に報告させていただきますわ。」
「カツヨリおつかれさまー。あたしは部屋に戻るねー。」
エリシスとシンクは訓練場から出て行く。
マリーチェは集まった兵士達に訓練を再開するように指示を出していた。
今日は結構疲れたな。俺も部屋に戻って早めに休むとしよう。
先に出て行った二人に次いで訓練場を後にするのだった。
軽くキャラ設定公開
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●カツヨリ・スワ
得意武器:刀
得意魔法:水
死の間際に異世界へ転移された武田家20代当主、武田勝頼。
ウィンディアに来た際に若返り、日本に居た頃より格段に強靭になっていた。
異世界でデジャブに苛まれながらもウィンディア国に客将として仕える。
●ハル・ウィンディア
得意武器:剣
得意魔法:地
ウィンディア国19代国王。先代国王の死後、女王として即位。
4人の幼馴染を家臣とし国を治めている。
不思議な力を持っているが詳しくは物語後半に。
ウェーブのかかった金髪をしている、王族特有のドレスや軽鎧を身に纏う。Cカップ美乳。
●シンク・ハイアット
得意武器:ナイフ
得意魔法:風
カツヨリを発見しウィンディアへ連れ帰った。
心配性の世話焼きで、やや天然っぽい感じがする。
ウィンディア軍風隊の隊長。風隊は諜報と遊撃の部隊編成になっている。
青いショートヘアーで結構薄着。Fカップの剛の者。
●エリシス・モンブラン
得意武器:杖
得意魔法:全般
ウィンディア国の参謀で、林隊の隊長も務める。林隊は魔法に長けたものが主に所属する。
お嬢様気質だが学が深く、説明好きな節がある。カツヨリに水魔法の才能を見出す。
左目に眼帯をしているが隻眼というわけでは無いらしい。
若草色の髪をツインテールにしている。Eに近いDカップ。
●マリーチェ・カスケード
得意武器:槍
得意魔法:無し
180センチを超える長身で、火隊の隊長を務める。戦場では先鋒を務める他騎馬隊もいる。
ウィンディアでは一・二を争うほどの剛の者で、白兵戦においてはカツヨリよりも遥かに強い。
おおらかな性格だが状況により真面目になる。
橙色のロングヘアーをポニーテールにしている。バストは紛れも無くウィンディア一の剛の者(Iカップ)
●ハーベスト・ウィステリア
得意武器:大剣
得意魔法:火
ハルの近衛であり、山隊の隊長。山隊は城内及び戦場での本陣警護にあたる。
普段は好青年のような感じだが、マリーチェの影響か楽観的なところがある。
ハルの家臣で唯一の男性。浮いた話はないらしが、城外で女性といるところを見たと言う噂も。
●ノル・ウィンディア
得意武器:剣
得意魔法:地・風
ハルの妹で、第二王女。姉様スキー。
隊の所属は無いが、二つの属性に対して四段階の素質を持っている。
口下手で単語で区切りながら喋る。
金髪のショートヘアー。Aカップで身長と共に成長の予定は無い。