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諏訪の国から  作者: えんるこら
転生転移
3/10

王都と女王

明日から出張につきいきなりのペースダウン・・・。

シンクの案内でなんとか日が暮れる前にはウィンディアの王都に到着した。


王都は円形になっており、中心に城がありそこから中央の通りに家屋が立ち並び左右の道に


店屋があり、中央の通りと反対側には兵舎や軍備が配置されていた。


「なぁシンク。」


「んー、なーに?」


先ほどから感じるちょっとした不快感。


「さっきからやたら視線を感じるのだが・・・。」


「そりゃカツヨリの着てる鎧が珍しいからじゃないかな?」


シンクは当然のように言ってのけた。


中央通りではやたらと注目を浴びていた。住人達はやはり日本とも


南蛮人とも違った服装をしていたし、


彼等にとっては南蛮具足を身に着けた俺の方が変わっているのであろう。


幸いだったのはほんとんどの住人達はシンクのように露出が多い格好ではなかったことだろうか。


「そういうものか。」


「うんうん。それに、カツヨリの持ってる剣?も変わった形をしているよね。」


シンクは興味津々といった顔だった。


「刀のことか。いつか会った南蛮人も珍しがっていたな。この世界の剣は違う形をしているのか?」


「うん、同じくらいの長さでもっと幅広なやつが主流だよ。


その幅だとあたしの持ってるナイフが同じくらいかな。」


ないふ?と不思議そうな顔をしていると、シンクは今度見せてあげるよと笑っていた。


しばらく道を歩いて行くと城の前までたどり着いた。


「シンク様!お疲れ様です!」


城の前に立つ門番がシンクに挨拶をした。シンク様・・・?


「ありがとうハンセン。この人をハル様に謁見させるから中にいれるねー。」


「はっ!了解であります!」


なんか随分軽いな、刀だって持ってるのに警戒されなさすぎじゃないか?


日本との違和感を感じながらもシンクの後についてハンセンの横を通り場内へと入っていった。





 長い廊下を歩きほどなくして謁見の間前に到着した。


「カツヨリ、一応言っておくけどこの先に居るハル様は王女様だからね。


あたしとの初対面のときみたいに失礼しないようにね。」


「それくらいわかっているよ。」


早々に女と呼ばれたのをまだ根に持っているのだろうか。


さすがにこの先にいるのが王女と分かっていればそんなヘマはしない。これでも元は大名だからな。


「ならいいんだけどねー。アトペ、アサリ、扉を開けて。」


「「はい!」」


謁見の間前に居た門番二人にシンクが扉を開けるように指示を出す。


ガチャリ。


ギギギと音を立てながら二枚扉は開いていった。


扉が開ききるとシンクは部屋の中に歩き出す、俺もそれについて行く。


歩いている最中部屋の中を見ると、そこには5人の人が居た。


一人は身なりの良い緑の髪をした碧眼の女性。


一人は身の丈六尺を超えていよう大女。


一人は落ち着いた雰囲気の眼鏡をかけた青年。


一人は玉座の横に立つあどけない少女。


そして・・・。


部屋の中央まで歩いていくと、シンクは静かに頭を下げた。俺も慌てて頭をさげる。


「ハル様、ただいま戻りました。」


先ほどまでとは打って変わって真面目な雰囲気が漂うシンクから言葉が出る。


「シンク、よく戻った。調査の報告はまた後で聞こう。まずは面を上げよ。」


「はっ!」


シンクが応えると、俺も一緒に顔を玉座へ向けた。


そこには黄金色の髪を伸ばし、煌びやかな衣服に身を包んだ女性が座っていた。


この人が、ハル・・・。


「ふむ、そこの者。名をなんと申す。」


「あ、私はカツヨリ・スワと申します。」


「そうか、良い名前だな。・・・アサリ、アトペ、下がれ。」


「「はっ!」」


先ほど扉を開けてくれた二人が部屋から退出し扉を閉めた。




・・・・・。




なんだこの沈黙は、なんで扉が閉まってから誰も何も喋らないんだ?


「あ、あの」「ハル様、もう良いでしょう。」


俺の言葉を遮り眼鏡の青年が声を出した。


「そうか。」


ハル様がそう言うと急に部屋の空気が変わった。


そこで口を開いたのは俺の隣にいたシンクだった。


「いやー!戻ってくるの遅くなっちゃってほんとごめんなさいねー!」


え?


「まぁ良い良い、セプトメリア前線偵察の任大儀であったな。」


「ほんとですよー。」


え?え?え?


「ハル様、シンク、そちらのお客人が困ってらっしゃいますわよ?」


「おー、すまなかった。カツヨリとやら、お主どうやら他の世界から来たようだの?


先刻シンクからの報告を伝令より受けておる。」


隻眼の女性の一言でハル様の対象が俺になった。しかし、いつのまに伝令を飛ばしたのだ?


「え、あ、いや、まだ良く分かってなくて・・・。」


「そうかそうか、まぁ直に慣れるだろう!あっはっは!」


困惑する俺に、大女が言った。声もでかい!


「姉様、説明・・・。」


玉座の横の少女がハル様のことを姉様と呼んだ。ハル様の妹君?


「そうだったそうだった。これはな、私達の素なのだよ。」


「素・・・、ですか?」


「うむ。私達は皆幼馴染なのだ。先代王から王位を継いだのが最近でな。


見知った者同士、堅苦しい雰囲気が苦手なのだ。」


「では先程のは?」


「あー、さすがに他の者達にはこんなところは見せられないのだよ。これでも一応女王なのでな。」


あっけらかんと話す女王に俺は混乱していた。


「カツヨリー、そんな身構えなくても大丈夫だよー。」


「いやそんなこと言われても。というかシンク、


ここに来るときの失礼はしないでってどういうことだよ。」


「そりゃウィンディアの民でもないカツヨリがいきなり


兵士の前で変なこと言わないか心配してたんだよー。」


シンクの心配はなんだか明後日の方向であった。


そして俺は当然の疑問をハル様にぶつけた。


「ではハル様、その素というのを俺なんかに見せてしまっても良かったのですか?」


「うむ。ここに居る皆、カツヨリに他の世界の話を聞きたくてな。


長く話してもらうことになる故堅い空気のままでは我々もカツヨリも肩がこってしまうであろう。」


「そういうものなのでしょうか・・・。」


日本の将軍や大名とは大きく異なるところに俺はまたも驚愕していたのだった。




次話との兼ね合いのため、サブタイトルを変更しました。

13/6/26

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