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諏訪の国から  作者: えんるこら
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2/10

異世界へようこそ

仕事の合間に暇つぶしで書いてるので遅筆かと思われますがよろしくお願いいたします。

 「・・・い!ねぇ大丈夫!?おーい!」


女の声?さっき聞こえてきたのとは違う・・・。


「うう・・・。」


「良かった!気がついた?」


やや朦朧とするものの、体を起こして地面に座り込んだ。


「あ、あぁ、大丈夫、だ・・・。口の中がちょっと砂っぽい・・・。」


なんてことだ、民のために命を捨てようとしていたのに気絶し、


あまつさえ女に発見されると・・・は?


「なあに?あたしの頭に何かついてるの?」


見上げたその女の髪は青く、風変わりな衣服を身に纏い、そして鳶色の目をしていた。


「南蛮人か?」


「はぁ?」


多分南蛮人だろう。いや、それよりも気になることがある。


「ところで女、ここは・・・、どこだ?」


さっきまで天目山に居たはずだ。周囲を見てもまったく見覚えが無い平野が広がり、


一方には大きな湖が広がっていた。


「心配してあげたってのに随分な物言いねぇ。あたしにはシンクって名前があるの!」


シンク、やはり南蛮人か。


「ちなみに、ここはウィンディア領一の湖、アイスレイクの北側だよ。


ヘンテコなカッコのおにーさん!」


いや、そっちの方が変な格好だろう。それに全然知らない地名だ。うぃんでぃあ?あいすれいく?


「シンク殿・・・。すまないが全くわからない。ここは天目山から遠いのか?」


「てんもくざん?なにそれ?そんな山この島には無いよー。


もしかしてどこかから魔法で飛ばされてきたの?」


「まほう?」


不思議そうな顔をした女・・・、シンク殿から俺は聞きなれない言葉を聞いた。


「え、魔法知らないの!?おにーさんほんとどっから来たのさ。」


「全然知らない。どこからって、甲斐の国からだが・・・。」


シンク殿はさらに不思議そうな顔をしていた。


「カイ・・・?そんな国、三大陸のどこにも聞いたことないよ?ひょっとして他の世界から来たとか。」


「三大陸・・・?他の世界?」


「んー、それもわからないってことはやっぱ他の世界からきたのかな。」


俺にわかるわけないだろ・・・。


ただ、ここが天目山でも日本でもないって事は確かだろう。どうしてこんなことになったか。


「なんにせよ、こんな何も無いとこにずっと居てもしかたないし、近くの町まで案内してあげるよ。」


考え込んでいた俺にシンク殿が提案してきた。


「近くに町があるのか?」


「ここから西に歩いて半日ってとこだけど、あたしも帰るところだったんだー。」


半日か。そう遠くはないな。


「ではシンク殿、案内を頼んでいいかな?」


「あいさー!えーっと・・・、おにーさんの名前、なんだっけ?」


そういえば名乗ってなかったな。南蛮人に名乗るときは名前が先で家名が後だったか?


念のため武田の名は隠しておこう。


「俺はカツヨリ・スワだ。」


「カツヨリ・スワ、かー。じゃあカツヨリって呼ぶね!


あたしのこと殿なんて付けずに呼び捨てで呼んで、なんかくすぐったいからさ。」


まさか娘ほどの女子と呼び捨てに呼び合うことになるとは。


「あぁ、わかったよ。シンク。」


「そういえばカツヨリ、顔周りが泥だらけだよ。湖で顔洗ってきたら?」


さっきまで口の中が砂っぽかったのはそのせいか。


「ありがとうシンク。ちょっと待っててくれ。」


そう言って立ち上がりすぐそばの湖まで歩き、顔を洗うために湖を覗き込んだときだった。


「うわっ!!」


「ちょ、どうしたのカツヨリ!?」


どうしたもこうしたもない。


「お、俺の顔・・・!」


湖に映った俺の顔は、先ほどまで死を決意していた36歳の俺ではなく。


「顔がどうかしたの?」


「わ、若・・・!」


驚愕に顔を歪めた18歳頃の自分の顔が映りこんでいたのだ。




数分後、落ち着いた俺はシンクと今の状況を整理した。


一つ、ここは俺がもといた世界。日本のあった世界ではないということ。


ウィンディアという国らしい。


二つ、俺はいわゆる神隠しにあい、この世界に来てしまったということ。


つまり切腹をしようとしたときに聞こえた声は神の声?


三つ、何故か俺は36歳から18歳ぐらいまで若返っているということ。


「とは言え、なんでこんなことになったかは全くわからないわけだが。」


「神様の気まぐれってやつじゃないのかなー?」


日本にも神様ってやつはいるらしい。誰も見たことは無いが信じてるやつはいる。


父上の宿敵であった、上杉やなんかは毘沙門天を信仰していたし。


キリシタン大名やなんかもそういうやつらだった。


「そんなことがあるのか?」


「あたしも聞いた話だけどね。百年に一回くらいで別の世界のものが流れてくることがあるらしいよ。」


シンクも半信半疑といった感じのようだ。


「ま、それでもほとんど海に落ちちゃうみたいだけどねー。


カツヨリはラッキーだよ!湖じゃなくて陸にいたんだから!」


確かに・・・。海の上とか湖の中だったりしたらとうに死んでいたわけだが、


これでもさっきまで死のうとしていたのだから微妙な心境だな。


腑に落ちない所は多々あるがこの世界に来たのは神隠しにあったということで納得しておこう。


しかし、若返っていることについては全くわからない。


このままシンクと二人でいくら考えても答えは出ないだろう。


「カツヨリ、そろそろ王都に向かわないと日が暮れちゃうよー。」


「そうだな、いろいろすまなかったシンク。改めてよろしく。」


心配そうなシンクに礼をし、道案内を頼むことにした。


「はいはい!じゃあ行こっか!」


途端に表情が明るくなった。礼をしたのがそんなに嬉しかったのだろうか。


状況をまとめているときに聞いたことだがシンクはこのあたり、


ウィンディア国の女王ハル・ウィンディアという人に仕えているらしい。


異世界から来たという特異な存在である俺を女王に謁見させるつもりでいるらしい。


いきなり異世界で俺に何ができるというわけではないし、


ここはシンクに従ったほうが得策だと思ったからだ。


そんなシンクに対して俺は気になっていることがある。


彼女が身につけている衣服は日本の一重とは大きく異なり、薄手の外套の中には


丈の短い腰巻スカートに胸当てといくらかの装飾品しか身につけていないのである。


その上、鍛えているであろう細身に不釣合いなほど大きな乳房が胸当て越しに見てとれた。


なんていうか、その、すごく目に毒だ・・・。


「カツヨリー!はやくはやくー!」


立ち尽くしていた俺にシンクが遠くから声をかけてきた。


「あ、あぁ。すまない!今いく・・・。」


(若殿!早く撤退を!)


なんだ!?この既視感・・・は?


「どうしたのー!」


「・・・悪い!すぐ行くよ!」


またシンクに心配をかけるのは良くない。


俺は先ほど感じた既視感を振り払い彼女のもとへ走っていった。



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