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プロローグ
初投稿です。
天正10年3月、我が武田家は滅亡の危機にあった。
父上の死から家督を継いだが、織田、徳川に惨敗。
そのまま気づけば天目山にてこの命を絶とうとする自分が居た。
「父上・・・、申し訳ございません・・・。」
俺は父上のようにはなれなかった。虎のようにはなれなかった。
民を守るためにも、俺はここで自決することを選ぶべきであろう。
「おぼろなる 月もほのかに 雲かすみ 晴れて行くへの 西の山のは。」
辞世の句としてはまぁまぁではなかろうか。それを決めるのは俺ではないのだが。
覚悟は決まった、そろそろ逝くとしようかな。
「甲斐の民よ、すまなかった。」
何番具足の隙間より腹に小刀を当て、そして力を込めた。
(死んではダメっ!!)
「え?」
身体が動かない!?それに今の声は?
そう考えていると、突如白い光が視界を覆っていったのだった。