大出血サービス!?
ここから、主人公の変身がはじまります。
さて、この話の主人公である主人、日下部拓也の話をしましょうか。いま、思えば女の子みたいとよく言われたこともあったそうです。どっちかというと美形なのに、根性無しで無口なため、恋愛経験はほとんどなかったとか。
しかし、男として生まれ、男として育ち、普通に声変わりをし、夢精も経験したそうです。裸の女のエロ本をみて興奮する普通の男だったのです。28歳のあの日までは・・・
一面の田んぼに挟まれた土地、そこに東亜製薬総合研究所があります。広大な敷地には、研究所の建物と数面のテニスコートと野球グラウンドもあるですよ。すごいでしょ。白亜の塔ともいうべき白タイルで覆われた6階建てと4階建ての2棟の建物が緑の芝生にたっています。6階建ての建物は、本館と呼ばれ、4階建ての建物は実験動物の動物舎です。
主人はそこにいるません。その隣に、そこには、スレート屋根の工場のような建物があり、その隣に2階建ての誠に小さな建物が見えませんか? そこが主人の通っている看板だけは立派な食品研究所の建物にです。当時、主人は、東亜製薬総の食品研究所に勤めていました。
いま、東亜製薬総合研究所にけたまましい救急車の音が響いてきました。救急車が来たようです。何があったのでしょうか?
救急車は、正面の6階建ての本館玄関に止まり・・・と思うとと、再び、動きだしました。
ワイシャツにネクタイだけの男が別の方向をし示しています。
「こっち、こっちだ。」
「どこだ。」とそう言って、救急車の運転手は男の指し示す方向を見ました。
そこには、名前だけが立派な食品研究所がありました。
さて、そこの1階です。ある男が、工場の作業服のような灰色の綿製の服を着て、机に突っ伏していました。その男の股間は多量の血によって真っ赤です。それが主人、日下部拓也でした。
ここは、研究所です。ご存じかどうかしりませんが、眼鏡を掛け白衣をきて賢い人がうろうろしていると想像してはいけません。ほとんどは、工場の作業服のような灰色の綿製の上着と長ズボンをきているのです。工場の技術部門から研究部門へと変化したので、工場の作業着をそのまま研究者の制服としているです。結構、日本の会社にはそのなのが多いみたいですよ。白衣は、服をきていたら引っかけて危険だからしないそうです。ほんとかしら・・
主人を中心に食品研究所の人間が全員集まって大騒ぎです。
「一体何があったんだ!」
「ケガだよ。日下部がケガをしたらしい。」
「しっかりしろ。」と田口主任が心配そうに声をかけています。
「おい、救急車が来たぞ。」
「え? だれが、救急車を呼べと言ったんだ。タクシーと言ったろう。」
「そう言ったんですが、研究総務の和田さんが、いきなり119に掛けちゃいました。」
「仕方がないなあ、大丈夫か。日下部。」
「いえ、主任、大丈夫です。たいしたことはありませから。」
「たいしたことがないなんてはあるか。そんな大出血して・・」
救急隊員が担架をかかえて飛び込んできました。
「被害者はどこです?」
「こちらです。」
「出血か。名前は? 何があったんですか?」
「それがなんとも・・本人が気分が悪いとしいって、机で休むといいましてね。すると、お腹が痛いと言い出してこの出血、我々も一体何があったのかわかりません。」
救急隊員も要領が得られないので搬送すべきかどうか困っています。
「ともかく病院へ搬送するか。」
「ああ。大丈夫です。痛みも・・・いや、まだ痛いなぁ。」
「それみろ。ともかく病院へいって診てもらえ。」
あらあら、本人の意思に関係なく、担架に乗せられちゃいました。研究仲間が次々に励ましの言葉を掛けてくれます。やさしいですね。
「気を落とすな。がんばれよ。」
「骨は拾ってやるからな。」
「南無阿弥陀仏・・・」
(ううう、くそ、こいつら遊んでやがるな・・・)
救急車はけたたましいサイレンの音をたてて出て行ったと思ったら、すぐ音がとまっちゃいました。え、もう着いたの?
実は、東亜製薬研究所の前が病院なのです。こんな距離だったら救急車を呼ぶなと言いたいところでしょが、呼んじゃたものはしょうがない。こうして、救急病棟の視察室へ主人は運び込まれました。
救急車による患者の搬送を受けて、救急病棟と診察室は騒然となりました。患者をベッドに寝かせると看護婦さんは、点滴の用意をし先生を呼びます。
「吉岡先生、研究所からの急患です。」
「研究所か。指でも切ったか。火傷か・・」
カルテのチェックをしていた外科の吉岡先生はめんどくさそうに診察室へ行きました。
「患者はこれか! わあ、すごい出血だ。」
「意識はあるようだな。しっかりしろ。」
「名前は言えるか。」
「クサカベタクヤです。」
「性別は・・男だな。」
「はい。」
「私は、吉岡一郎、外科の主任をしている。」
「血色が悪いな。だれか、血圧を脈拍を測ってくれ。」
「降圧剤を点滴しましょうか。」
「用意しておいてくれ。輸血の用意もだ。点滴は出血の部位を確認してからだが・・・」
「わかりました。」
「服を切ってくれ。患部を見る!」
看護婦の手によって、あっという間に、ズボンが切り裂かれ、血に染まったパンツも切り裂かれました。
患部を見て、吉岡は驚きの声をあげました。
「え? こんな馬鹿な!」
「うそ。先生、こんなことあるですか。」と看護婦も叫びます。
怖いものを見たかのように、看護婦が口を押さえて後ずさりします。
主人の日下部拓也は、何に驚いているのかわかりません。(そんなに重病なのか。)
「先生、どうしましょう。」
「ともかく、ガーゼをあてて、包帯をまいてくれ。」
「わかりました。」
吉岡先生は眉間に深い皺を寄せて考え込んでいました。
「産婦人科に来栖先輩がいたな。呼んできてくれ。私では手に負えない。」
「はい。」
ここは、産婦人科病棟の来栖美香先生の診療室です。
「来栖先生、すみません。吉岡先生が来て頂きたいと。」
「何だよ。総合研究所からの急患だろ。どうせ外科領分だろ。」
「それが手に負えないから来てくれと・・」
「馬鹿なことをいうな。患者は男だと聞いたぞ。産婦人科のオレに何の用があるだ?」
先生は呼べというし、来ないという、間に入った看護婦は困ってしまって泣きそうです。その顔をみてかわいそうになったのか来栖先生は折れてくれました。
「めんどくせえな。行ってやるよ。」
思えばこの先生と長い腐れ縁の初めての出会いがこのときでした。 来栖美香先生は、色っぽい格好しているため、歩く生殖器だの飲み屋の姉ちゃんなどと陰口をたたかれますが、本当は身持ちの堅いメガネ美人です。年齢は主人より4つ上ですが、吉岡先生とは同じ大学ですので、先輩後輩の仲なんです。もともと、姉御肌の上、2年ほどアメリカの病院に勤めていたため、症例経験が豊富で信頼されています。ちなみに、ヘビースモーカーです。タバコを灰皿に押しつけて、大あくびをして立ち上がりました。
「何だ。吉岡、しょうもないことでいちいちオレを呼ぶなよ。患者が動揺するじゃないか。」
「それがですねぇ。ありえないことでして・・ともかく見て下さい。」
吉岡先生は、来栖先生の手を引っ張り、主人の股間包帯をほどき股間を見せます。
来栖先生は、めんどくさそうにのぞき込みますが・・・
「男の股ぐら見て何を・・・・おお、ホントかよ。」
「ねぇ。私が来栖先生を呼んだ訳わかりますか・・」
「こりゃ、お前だ無理だな。CT空いているか?でればMRIも撮りたいが。」
「CTは大丈夫でしょ。血液検査も一通りやっています。」
「そうか、だれか付き添いとかいるか?」
「この人の上司がいます。」
「そりゃ、都合がいい。まずはこちらの所見を伝えよう。CT結果を確認してからでないと何ともいえないが・・」
あらあら、だんだん大変なことになってきています。主人は大丈夫なんでしょうか?
主人は、包帯を再び巻かれ、来栖先生の診察室に来ています。
「私が上司の田口です。先生、日下部はどうなんでしょ?」
「実はですね・・・ごにょごょ・・」
主人は衝立の裏です。もうちょっとのところで聞こえません。
「えーー。それってほんとですか。出血の原因はアレだったんでか?」
「ああ、CTの結果がでないと断定できんが恐らくアレだ。」
はて、アレとは何なんでしょう?青い顔をした田口主任ができました。
「うーん。気を確かにな。アレとはなあ。おれば帰って部長に報告してくる。」
「あの・・アレとはなんなんです?」
「うーーん。アレとはアレだ。しかし、大丈夫だ。心配することはない。」
さっさと帰ってしまいました。
「日下部さん。ちょっと外で待ってくれないか。すべての結果が揃ったら話すよ。1時間ぐらいかな。」
そう言って、主人は診療絵室から追い出されました。
主人の日下部は不安な時間を過ごす他無かったようです。だって、主人方をちらちらと見ながら看護婦どうしがこんな会話しているですもの。
「エーー、あの人が・・信じられない。」
「そうよ。実はアレだったらしいの。」
ほどなく呼ばれたようですよ。
「日下部さん。入って下さい。先生の診察があります。」
「はい。」
まあ、主人としては心臓バクバクだったみたいですね。一体どんな病名がつけられるのか!
来栖先生は大変難しい顔をしてこうおっしゃられました。
「全く、特異な症例だったので、我々も判断に迷った。そのため、血液検査を始め、レントゲンにCTと検査をして確認する必要があった訳だ。その結果、我々はこう判断した。君の出血の原因は・・・」
主人は思わずつばを飲み込みました。
「言うぞ。原因は・・」
もったいつけますねぇ。
「初潮だ! おめでとさん。赤飯炊いてもらうか?」とにっこりしていいました。
「・・・・」
主人は言葉の意味が好く飲み込めなかったみたいでした。ぐるぐると言葉を反芻してやつと言葉を発しました。
「ええええええええ! 僕は男ですよ。初潮だなんで・・なんで生理があるんです。」
「しかたがないだろう。レントゲンとCTで確認したが、子宮ちゃんとあるんだから、生理くらいあるさ。ともかく出血の原因は生理だとわかった。自然の摂理となれば問題ない。病気でもなんでもない。ゆえ、治療の必要も全くない。」
「ちょっと、まってください。子宮?なんでそんなものがあるんです?」
「そんなの知るか。両性有隅という一種の奇形だな。君の体の中には男性性器と女性性器があるんだ。」
「ホントですか!」
「間違いない。男としての陰茎、睾丸、精子嚢があり、女としての、膣、子宮が存在している。但し、卵巣は無いようだ。お前、金玉がぶらがってないのを不思議におもわなかったのか? 陰毛に覆われていたとはいえ、割れ目があるのに気がつかなかったのか?」
「わわわわ。」
「その子宮が長い間かかって成長し、初潮となったようだな。今後、どんな変化をするか楽しみだな。」
主人は唖然としたまま何も言えませんでした。
「・・・・」
「ついでは、お願いがある。ぜひ、研究させてもらいたいものだ。きさまの了承無くては発表はしないし、プラバシーも守る。こんなことになった原因を知りたいだろう。」
「は・・はい。」
「次の診察は、3日後の土曜日の2時だ。」
診察が終わったとき、日はとっぷりと暮れていました。街灯が地面を照らしています。主人はとぼとぼと家路につき、自分の部屋で裸になり改めて自分の体を眺めたそうです。
主人は、立派なおチンチンがあります。しかし、その影にかくれてお尻の穴との間にこんなものがあるなんて気がつかなかったのでした。
「これが子宮口か。大陰唇というだっけ。あるなあ。単なるしわだと思ってたよ。」
あごをなぜつつつ言いました。
「そういえば、髭がなくとなくうすくなっているなと思ったんだよ。」
「エロ本をみても普通にオナニーできるのになぁ。」
これは、今も同じだそうです。男より女に欲情するそうです。これって、自分の体に欲情しないのかしら、不思議ですね。
いまは、看護婦という言葉はありません。男女平等で男も成れるようになったので看護師といいます。しかし、1987年当時はまだ一般的ではないので看護婦ということばを使いました。




