東北旅行
今回の話は、私と主人の出会いの話です。ふふふ。
スタートは、美容院へ行くところから始まります。主人は何故か、理髪店兼美容院のヘアサロントーカイというところに行ってそうです。いまは、美容院へも男が平気でいける雰囲気がありますが、当時はかなりの抵抗があったんだそうです。たまたま、そこは、ユニセツクスを目指していたところで、刈り上げも顔剃もパーマもやるというところでした。
日曜日の朝、束ねている髪をほどくと、髪の毛がずいぶんとのびていました。考えれば女性化が始まっていらい散髪にて行っていないのです。
「うーん。ずいぶんと伸びてきたな。よし、今日こそいくか。」
主人の行きつけのヘアサロントーカイは、高校生のころから行っているなじみ店であり、そこ以外には行きたくないのですが、女性化を説明するのがめんどうだと思うとつい足が遠のいていました。
「いらっしゃいませ。」と女性店員が声を掛けてきました。
「3時に予約した。日下部だけど。」
「日下部様ですね。ここにお名前をお願いします。」
そう言って紙切れを出します。氏名とカットとパーマの区別を書く紙でした。
「本日はカットだけですね。日下部拓也、男みたいなお名前ですね。」
(そりゃ。男だからな。)
「ええ。」とあいまいな返事をする主人です。
案内された椅子に座ると男の美容師さんが来ました。主人の知らない人でした。
(まあ、3年も来てないんだからな。人も変わるわな。)
「いらっしゃいませ。ウチははじめてですか。」
「うーん。3年くらい来てないかな。」
「じゃ、カルテがありますね。まずはシャンプーからしましょうか。」
主人は、シャンプーを始めました。
程なく経営者の東海さんがやってきました。女性店員は、カードをめくり悩んでいました。ここは、ひとりひとりに、どんな加工をしたかことこまかに書き込むカルテを作っているのです。これをみれば、別の担当者に、「いつものように」といっても大丈夫なのでした。この管理は大変でしょうね。
「先生、ちょっと、変なんですよ。日下部拓也という男性カルテはあるんですが、日下部とい女人のカルテがないんです。」
「ははは、何をおかしなことを、日下部さんは、商店街の日下部酒店の息子さんだよ。」
「エー、ウソ。どうみてもあの人は女ですよ。」
「何をおかしなことを・」と東海さんは笑っています。
見れば、主人は仰向けでシャンプーしています。
「かゆいところはございませんか。」
「いえ、べつに。」
まもなく、タオルを頭に巻いて、主人が起き上がりました。
「おや、店長、久しぶりですです。」
「え?日下部のぼっちゃんですか。まるで女だ!」と驚愕しています。
(だから女だといっているじゃないですか。先生たら!)
「そうなんですよ。何故かすっかりおんなになっちゃって、おかしいでしょ。」と笑って答えます。笑い事ではないきがしますが・・・
「何があったんですか?整形?」
「違います。ある日突然、生理が始まって、胸が大きくなるわ、声は変わるわと、どんどん変身してね。両性具有だったらしんですよ。今もおちんちんありますよ。」
ホントに良い性格してますねぇ。こんなすごい話を屈託も無く平気でしゃべる主人でした。
店長の東海さんが、主人の髪の毛を切り揃えています。
「なんか髪質がずいぶん変わっていますね。」
「え?ホントですか。」
「細くて色が薄い髪多くなっていますよ。」
「へぇ、髪の毛が生え替わっているんだ。」
「そのようですね。しかし、会社は大丈夫なんですか。」
「初潮による出血騒ぎを起こしたのが会社でね。隠しようがなかったんですよ。研究職だし、他社との接触も少ない、ちょとと変人の男扱いで行こうということになりました。だだ、胸が大きくなったんで、女子更衣室に移りましたけど。」
「ところで、あれはメイク道具ですよね。メイクもサービスしているんですか。」
「まだ、始めたばかりですが、やってますよ。さっき、受付した女の子がメイクアーティストです。」
「へー。明日から女装して旅行するんですよ。メイクしてもらえますか?」
「いいですよ。」
(この顔、この体で、女装ねぇ・・)
30分ほどして、フルメイクが終わりました。さすが、化粧美人です。きれいです。
「これでどうですか。ちょっと、濃いですかね。」
「ん。いいですね。このくらい変わった方が良いです。3日間持ちますかね。」
「さっき、説明したように、直せば大丈夫ですよ。夜も化粧を落とさないことになりますが、3日ぐらいなら大丈夫でしょう。」
「なるほどね。」
「ありがとうございました。」
こうして主人はヘアサロントーカイを出ました。
ここは、東北の大鷹岬というところです。え?そんなところ無いって。当然です。これは小説です。気にしないでください。ともかく、ここは、玄武岩の岬で、奇岩で有名な岬なんです。私は、親友のアッコとユキと3人で東北旅行にきていました。
時刻表とくびっぴきで予定を組み、宿の予約をしたのは私です。バスの時刻表も調べて、完璧です。
定期バスを降りて、岬に向かいます。きれいな海と空です。潮の香りが素敵です。そこで、あの人にあったのです。そんなに衝撃的なものではありませんが、そういうことにしておいてください。
栗色の髪、体にぴったりしたスーツで短めのスカートに黒ストッキング、色気漂う美女です。その人は葉書大のスケッチブックに水彩で岬の風景を書いていました。上手です。画才のない私に遠く及びません。
「わあ、この人、絵かいたはるわ。上手やね。」と言う私。
「あ、ホント」とアッコも頷きます。
「カメラの代わりなんです。」
その人は、ニコッと笑って、スケッチブックを閉じ、サングラスをかけて立ち上がりました。すっごく高い身長です。胸が大きく開いていてこぼれそうです。彼女は黙って消えました。これが、主人でした。
「かっこええな。美大生かな。」
「スタイルいいわ。モデルさんかしら。」とユキも感心しています。
「ええ足しとるわ。ホインやし。」
「あんたは男か!」とアッコに突っ込まれました。
私はぼけっと見送っていました。私は女ですよ。ただ、きれいなものが好きなだけ・・と思う。その後、きれいな海をバックに写真をとり、次の観光地にバスで移動しました。
ここは、バスの停留所です。レストハウスがあり土産物も売っています。私たち3人はバスを待っていました。ここから、ちょっと歩けば、鍾乳洞があり、そこに行ってきたのですが、乗り継ぎはうまくありません。後、1時間は待たないと次のバスが来ないのです。
私たちは海辺にあるようなプラスチック製の白い机を前におしゃべりをしていました。
「ヒマねえ。」
「しゃないわ。これしかバスないもん。」
テーブルには、椅子が2脚ずつありましたが、1脚を引き寄せ3人でテーブルを囲んで座っていました。でも、残った1脚の上に荷物を載せていたのです。
「すいません。この荷物は君たちのものかな。」
突然、声をかけられました。アッコが隣の机の椅子に荷物をおいていたのです。そして、声をかけたサングラスの女は、大鷹岬の美大生、主人ではありませんか!
「あっ・・・いえ、どうぞ。」
彼女は持ってきたポットからカップにコーヒーを注いで地図を見ています。
私は小声でユキに言いました。
「あの人、大鷹岬の美大生だよね。」
「美大生かどうかわからないけど。確かに大鷹岬であったひとよ。」
「どうやら、私たちとおんなじコースを観光しているみたいね。」
「だったら・・・」と私は一大決心をしした。
「すみません。あなたは、大鷹岬で絵を描いていた人ですよね。」
「ええ、そうですよ。」
「やっぱり、大鷹岬の美女さんや。」
「絵を見せて頂けますか。」
「良いですよ。」
みんなでわいわいと絵を見ています。
「ああ、大鷹岬の帽子岩じゃないですか。うまいなあ。」
「あれ、この絵は青湖ですか。あそこ、行ったんだ。」
「私たちは、バス繋がりが悪いからあきらめたのよね。」
「ああ、アッコ、行きたかったな。残念だわ。」
「車なら10分ほどすぐだよ。小さな駐車場もあるし・・」
「え、車なんですか。いいな。」
「私たちも、車ならば行けたのにね。」
「無理無理、だれも、免許もってないもん。」
[それは残念だね。ところで、今日の宿は、絹津川温泉?」
「ええ。絹津川観光ホテルです。」
「僕も絹津川温泉なんだ。民宿だけどね、どうだい。僕の車乗っていくかい。青湖も寄れるよ。」
「えー。いいんですか。」
「このままじゃ。アッコさんは、成仏できないだろう?」
アッコは恥ずかしそうに笑いました。
青湖はきれいでした。行くに行けなかった青湖に行けてアッコも満足です。3人でぱちぱちと写真を撮りました。
今、海岸の峠を走っています。運転手は主人、私は助手席です。
「わぁ。きれい。」
大きく海原が見えました。海が青いです。
「え?どこどこ。」
私は横を見ようとする主人の顔をグイと押さえていいました。
「運転手はだめ!前見て。私がその分たっぷり見てあげるから。」
「ちぇ・・ぶづぶつ。」
絹津川観光ホテルにつきました。
「あのう。ちょっとお願いがあります。」
「もし、よろしかったら、もう1日私たちと付き合ってくれませんか。」
「もう、1日かあ。コースは同じだし、良いけど。」
「ガソリン代持ちます!」
「まあ、いいか。どうせきままな一人旅だし・・」
「バンザイ!」
「ところで、名前聞いてませんでしたが」
「ぼくかい。日下部といいます。」
「日下部さんですか。私は清原千香といいます。」
「じゃ、清原さん。この紙見といて、僕の旅行計画なんだ。詳しくは明日それ見て詰めよう。それじゃ。明日8時、迎えにくるよ。」
「はあい。」
宿です。テーブルを囲んでお茶を飲んでいます。
「日下部さんは、いい人ねえ。やさしい。」
「男っぽいわね。決断がはやいわ。」
「うじうじしないのね。」
このときは、当然、主人が男だと知りません。
「さてと、渡されたメモを・・・・う、読めん。何語なのよ。」
私が上下逆さまにしたり、裏返したりしてうなるのをみて、アッコがいいました。
「大げさよね。どれみせて・・・」とアッコも紙をみて悩みます。
「きれいなひとなのにね。こんな悪筆だとは・・」とユキがいいました。
翌日は、楽しいものでした。何をしゃべっても新鮮でした。主人は何でもふんふんと聞いてくれます。海岸ではホタテの貝殻焼きを食べました。すっごく、おいしかったです。今、主人は岸壁の堤防の上で絵を描いています。
「ねえ、アッコとユキ、相談があるんだけど。」
「なあに、チカちゃん。」
「あのね・・・」
波の音が繰り返ししていました。干してある網から潮の香りがします。砂を歩くときゅきゅとおとしました。白く雪のようです。
「日下部さん。ちょっとお話が」
「私たち話あったんです。運転のお礼がしたい。」
「何よりも、夜まで日下部さんと話をしていたい。」
「それで、決めました。」
「私たちと一緒に泊まりませんか。宿代はもちます。」
「え?・・・うーん。それって、4人同室ということでしょ。どうしようかな。」
思わぬ反応でした。なんの問題も無いはずかのに・・・
「弱ったなあ。申し出はうれしいんだけど。」
「どうしてなんですか。女同士なのに」
「イビキでもかくとか。それならば、チカで慣れているから」
「コラ。何を・・・」
「うーん。違うんだよ。証拠をみせるね。」
そう悲しそうにいうと、後ろを向いて波間に立ちました。
海にからショボショボという音が聞こえました。しばし、3人には何のことかわかりません。
「おしっこ・・・え、立ちション?」
「えーーーーえ!」
「男なんですか!」
「実はそうなんだ。」
みんな驚き、声がでません。
「実はねえ。両性具有、男女両方の性器をもっているんだ。」
「その巨乳は偽物?」
「ほんもの。自然に大きくなったものだからね。子宮もあって、生理もあります。」
「でも、声も高いし、体臭も、まるでオンナですよ。こんなことあり得ない。」
「二度目の声変わりをしました。きめこまやな柔肌です。体毛も薄くなって髭が生えてこなくなったんです。男の体臭もしなくなりました。まつげも長くなりました。」
「・・・」
「でも、僕は男なんです。普段は男の格好して、旅行時だけ化粧して女装してあそんでます。」と悲しそうな顔でいいました。
主人は運転免許証をみせてくれました。
「日下部拓也、本当ね。性別、男。」と驚くアッコです。
「うそー」
「うーん。」と私は考え込んでいます。
このとき、私としては、考えていました。自分はどうなのか。何をしたいのか。
「別にいいんじゃないの。どっちでも。」
「えー。」
「私達は、日下部さんに身の危険を感じた?男っぽくて頼りになるとはおもったけど。嫌らしいことは言わない。日下部さんは、別に女だと偽って近づいた訳じゃ無い。私たちがそう思い込んでいただけよ。それに正直に話してくれた。そもそも、オンナだとしても、置き引きする悪い人かもしれないのよ。そんなことは無いと人と信じたんでしょ。」
(うーん。私、かっこいい。説得できたかな。)
「確かよね。こんなことで翻すべきではないわね。」
「そうね。改めて、お願いします。同室してください。」
「わかりました。」
(やったー)
八戸ロイヤルホテルに1台の小型自動車が止まりました。運転席のドアが開き、サングラスをかけた美女が顔を出します。スニーカーをはいたすらっとした黒いストッキングの足。ドアボーイは思わずつばを飲み込みました。にこにこして問いかけました。
「いらっしゃいませ。お泊まりで。」
「はい。車はどうしたらいいの?」
サングラスを外して、にっこりとほほえみます。
{鍵をお預け頂いたら、私が駐車場に運びます。失礼ですがお名前は?」
「大阪の日下部です。」
「ありがとう。僕は苦手なの。うれしいわ。」と鼻から声をだします。
(うまい!)
ドアボーイがバックドアに手を空けると、わっと3人が飛び出して来ました。
「あんた、早くでなさいよ。」
「あいた!押さないで・・・」
「わぁ、荷物がぐちゃぐちゃよ。」
「きれいなホテルねぇ」
「あっ、ひっぱたらだめ。」
「わぉ!」
「きゃー」
まあ、そのかしましいことかしましいこと・・・・
フロントに向かいますと、ボーイが告げました。
「日下部様、4名です。」
「日下部、くさかべ、くさ・・・予約がないですねぇ。」
「あっ、ちゃう、ちゃう。予約は私や。清原千香や。」
「清原さまですね。3名1室から、4名に変更でしたね。717号室です。」
「はい。」
「宿泊名簿を作りますので、全員のお名前を」
「はあい。」
(清原千香、園田敦子、遠野有希、日下部・・はて、拓也でいいかな。)
「日下部さん、書いて。」
「いいよ。」
(相変わらず下手な字やな。日下部美希?!)
広いロビーを歩きながら、私は聞きました。
「あれ、日下部拓也じゃなかったけ。」
「うん。旅行ではの名前を使っているだ。拓也というと、ややこしいだろ?」
「ふーん。なるほどね。」
部屋は思った以上に豪華でした。急な変更の無理を通すために、グレードの変更をせざる得なかったためです。ベット4つに和室までありました。オーシャンビューの良い眺めです。
「わぉ。良い眺めだね。」
「グレードアップしたからね。」
「いくら?」
「一人2000円アップ。」
「違うでしょ、日下部さん分ももつから」
「エート、1泊、1万から1万2千円だから、これを3でわって、6千円アップよ。」
「自分の宿代ぐらいだすよ。」
「気にしないんでください。キャンセル料もあったんでしょ。」
早速、浴衣に着替えます。みんな裸になると、やっぱり、ナイスボディの主人でした。あの胸、腰、尻と嘘みたいです。ああ、誰か嘘だと言って!浴衣も丹前も主人の身長には短すぎます。浴衣のしたから、黒いストッキングの足が見えています。
「あちゃー。あってないわね。」
「後で、フロントに行って替えをもらってこうか。」
「ほな、フロいこか。」
「僕は、個室浴でシャワーするから・・」
「えー。なんで」
「おちんちんがあるんで、女風呂は入れないし、おっぱいがあるんで男風呂も無理。」
「なるほど・・」
(くそ、裸をみらへんのか。残念やな。)
「じゃ、留守番をお願いね。」
「はあい。いってらっしゃい。」
フロから戻ると、主人は丸テーブルに窓を見て座って居ました。うーん、肩の線がきれいだ。主人は座ったまま体の向きを変えました。すそがはらりとはだけ、細くしまった白い足が見えます。
「ただいま。」
「いい湯だった?」
「気持ちよかったわよ。ねぇ。」
「化粧はおとしたんですか。でもかわいいですね。」
「うーん。美人はとくじゃわい。」
「色白ですね。白粉なんていらないじゃないですか。」
「あと胸襟をちょっと広げて、裾をはらりと広げると、そこからしろいふとももが・・うーん。やっぱり浴衣はいいな。」
「あんたは、女か!」
「日下部さんはいつもそんな色ぽいかっこうしているですか。」
「ぜんぜん、研究所では工場のつなぎみたいややつだし、通勤は背広にネクタイだよ。こないだ僕を女と間違えてチカンするヤツがいてね。」
(そりゃ、そうでしょ。男まちがえるわけないじゃん。)
「こんな体になって、くやしから、旅行の時だけ女装するんだ。」
「そうですか。」
(どこが女装なのよ。そのままじゃない・・)
「それで、わざわざ、モテそうにない、ウブそうな男の隣に座るんだ。男がどんなのに興奮するかわかるからね。」
なんか想像できます。新幹線で主人が、化粧をばっちりときめて、乗り込んできます。分厚いメガネを掛けた小太りの男の隣にゆき、こういうのです。主人は肩や背の空いたこのボティコンシャスな黒服です。短いスカートに黒のストッキングです。
「隣あいてますか。」
「あ、はい。」
相手のの男は、こんな美人が来てラッキーと思うのです。鞄を主人は棚に置くために、片膝を座席におきます。スカートがまくれ上がるのです。男の目は釘付けです。
「おっと!」
トドメとして、ちょっとふらついて、胸の谷間をみせます。そして、軽く胸を頭に当てるのです。
「ごめんなさい。」
その後、足を組んでみせ、スカートを上げ下げしてみたり、ブラジャーをいじくって見せるのです。体からは女の良い匂いがします。男は興奮の絶頂です。そこで、ぴしゃりといいます。
「何か用ですか!」
「いえ別に・」
「無いんだったら変な目で見ないでください。」とじろりとにらむのです。
以後、ちらりとでも見たら、不快そうな目でにらみ返すのです。男がはおきな体を小さくして、俯くしかありません。天国と思ったのが、地獄です。
「そいてつは、むらむらとしたのを必死で押さえて、こっちをみないようにしているだせ。」とイジワルに笑います。
(はあ、いいご趣味で・・)
「でもね、この色ぽい格好は男を引いているじゃないだけどね。勘違いする馬鹿がいるだよ。初日にドライブインで浜弁当とかいうのを一人で食べていたらね。」
主人がこの格好で、4人座席に一人で食べています。そこに、革のつなぎを着たバイクやろうがきました。
「よう、彼女、同席していいかい。」
「良いよね。一人でくってもうまくないじゃん。」
「えー。」
主人はいやな顔をしましすが、意に介せずすわりこみます。
「いや、こんな美人と同席できてしやわせだな。」
「グラナマスな美人だし。」
「ちょっと、あっちいってくれる。僕は男だから、男は嫌いなんだ。」
主人は本気でおこり、後ずさりします。
「ははは、面白い冗談をいうなぁ。」
「こんな色っぽい格好してさ。」
「うるさいな。証拠をみせてやるから、着いておいで!」
そう言って立ち上がるのと男子トイレ入るのです。男達は何事かと笑いながら、ついてきますが、男子トイレに入るのにビックリ!さらに、スカートをまくり上げて、あさがおに向けてオシッコをし始めるのです。
「え、ホントに男!」
「立ちションしているぜ。」
「さすがにこれをみて、そいつらは立ち去ったよ。」
浴衣姿で立ちションのまねをする主人でした。
「あらまぁ。」
「ショックだったでしょうね。」
「さあてと、飯食いにいこうか!」
さかずに豪華ホテルでした。舟盛りに、一人鍋と食材も豪華です。せっかくだから、ビールもつけちゃえ。
「だんはん。おひとつどうぞ。」と私が調子にのって注ぐと。
「おっとと。いやあ、器量よしの酌だと酒もうまいよ。」と受ける主人。
うまいなぁ。こいつ! さすが大阪人。
土産物をあさり、月夜の庭にでました。
「良い月夜だね。」
「ちょっときいていいですか。日下部さんは男と女どっちが好きですか。」
「どっちもすきだけど。」
「性的にはどっちですか。」
「おちんちんと、おっぱいに子宮がある。たぶん、どっちもできる思うけど。男は考えられないなあ。」
「女になって、気がついてたんだけど。男は汗臭い!君らは平気か?」
「うーん。匂いはあんまり関係ないから、難しいわね。」
「女の匂いは平気ななんですか。」
「嫌いじゃないなあ。たぶんあれは、性臭なんだとおもう。男は単純なんだ。おんなの体臭や胸の膨らみをみて、むらむらとくる。最近、それがなくなりつつあってね。いつまで、男でいられるか不安になってきんだ。」
「私たちはどうなんです。」
「うーん。友達といおうか。」
「それって女を感じないてことですか。」
「違うよ。なんなら、ひとりずつやるか。今夜は月夜の晩だ。オオカミに変身しようぜ。」
「きゃー」
「ははは」
その夜です。私は主人と隣り合わせのベッドで寝ていました。初夜でーす。ちがうか。
「私、男の人ねるのはじめてなんです。緊張しちゃうなぁ。」
「そんなこと言われたのはじめてだよ。うれしいな。みんな、平気で裸になるし、男と思ってないんだもの。」
「そんなことないですよ。」
数分後・・・私は寝ていました。いびきをかいて。
主人が夜中にカバッとおきました。そして、ティッシュを探しています。それを丸めて耳に詰めました。
(いびきってほんとだったんだ・・寝られるかな。)
朝です。主人を始めみんなは、顔を洗って、ニュースや天気予報をみていました。みんないつ寝ているのかしら。眠いですが、おまえこそ、寝過ぎだと突っ込まれるのでいいません。
みんなで朝食を食べ、出発の身支度をしました。主人は例の色っぽい服に着替えて、口紅をしていました。チェックアウトの最中、アッコが主人に聞いていました。
「あら、化粧はしないんですか」
「いやあ、化粧できないんですよ。いつも、女の子にしてもらってます。だから口紅だけです。」
「ふーん。なるほどね。もったいない。」
「3日間おつきあい頂いてありがとうございました。」
「いやぁ。1人旅の予定だったから、楽しかったよ。さて、駅までおくろうか。」
「この先は、どうするんですか。」
「仙台でレンタカーを返して、そこからは列車だよ。」
「東京からは新幹線ですよね。」
「うん、君たちよりずいぶん遅くなるけどね。おっ着いたよ。」
そこで、日下部さんと私たちは別れました。そして、東京に着いたとき、私はとんでもない提案をしたのです。
「え?新幹線を変える?なんでそんな時間にするの。」
「今からならば、自由席とれるでしょ。」
「どうして・・あ、日下部さんね。」
「日程表に新幹線まで書いてあったのよ。それに乗りたい。」
「実は、私も同じことを考えていたの。」
「わかったわ。家に遅くなると電話しないとね。」
「京都に着くのが9時頃になるわね。駅弁もかわないと。」
ここは、新幹線です。主人が乗り込んできました。隣はさえない中年です。主人は心の中でラッキーと叫んですわりました。例によって悩殺ポーズです。相手は雑誌を広げ、見てるよな見ているような・・ホントに趣味がわるいですね。
「あっ。いた!」
「えー、清原さん、どうしてここに!」
「列車を変えたの。あっちの自由席に4人分とってあるから来て。」
「わかった。それでは、そういうことですので移ります。ここは好きに使っていいですよ。」
おしゃべりをして、お弁当を食べ、楽しい3時間が過ぎました。もう、京都です。私は京都、主人は大阪なのでここでお別れです。
「これ、電話番号、きっと電話くださいね。」
降りたた後も、私はガラス越しに声をかけています。
「まるで、長距離恋愛の恋人同士ね。」
「ふふふ、恋愛のあげく、結婚までいったりして・・まさかね。」
私の姿をみて、そんなことを言っていたのを私は知りませんでした。
ここは、京都のとある家です。ぶちゃけると私の家です。当時、私は占いに凝っていました。
「わぁ、母さん見て。日下部さんとは相性ぴったりや。四柱推命でも星占いでもやで。」
「ふーん。あのなあ。あんたもう30やで。少しは結婚のこと考えへんか。」
そう言って、お母さんは、見合い写真を取り出します。
「この人なんかどうや。なかなかハンサムやで。」
「部屋で本読んでいるわ。」
私は、自室に戻って本を読み始めました。しかし、出るのはため息ばかりです。
「あーあ」。なんで、あの人おっぱいなんかついとるやろ。なければボーイフレンドとして紹介するのになあ。」
ここは、主人の実家です。 実は主人は、日下部酒店の御曹司で、実家は酒屋です。酒販売となると倉庫が必要ですので、長屋型の家の1戸立ちを改築して倉庫としていました。ガレージ付きの倉庫となっていますが、フロ、台所、トイレ揃っています。女性化が進行してから、フロ一人で入るようになり、下着は自分で洗うようになりました。最近は、晩ご飯しか食べる時しか、親元へはいかなくなりました。
いつもように、背広をからスウェットに着替えて、実家にいきました。母親がお客さんと話しています。
「あら、こないだのお嬢さんじゃないの。」
お客さんがにこやかに言います。先日、配達したときに、早く嫁にいくように勧めていたおばさんです。
「あ、はい。」
「今日は、いい話をもってきたのよ。」
そう言って、厚紙に挟まれた写真を見せます。
「相手は、お医者さん。親もそうなのよ。」
「おのう。奥さん。ウチの子は、まだ、良いですから。」
「そんなことないわよ。30過ぎているでしょ。本当にこんないい話なかなかないんだから。」
「はあ。」
お客さんが帰ったあと、主人のお母さんはため息をついていました。
「最近は、こんなのばっかり・・」
「また、女と間違えて、見合い写真かあ。」
お母さんは、じろりと主人を見ていいました。
「あんた。胸がまた大きくなったんじゃない。いっそのこと、お婿さんをもらう?旦那さんをもらうなら引く手あまたよ。」
「やだよ。男は嫌いだ。」
主人は男です。男との結婚なんて考えられません。
総合研究所編はここで終わりです。続きは、「s・he シー(女性秘書編)」を読んでください。




