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正反対な幼馴染 【ブログ転載】(カミュ視点)

 カミュ視点で、時間軸は学生編【18-1話 体力勝負な図書館業務】の一場面です。


「結構なれたみたいだね」

 僕は図書館へやってくると、はしごに登っている幼馴染の女の子、オクトさんに声をかけた。

「まあね」

 オクトさんは僕の存在に気がつくとはしごからゆっくりと下りた。そして肩をすくめる。


 オクトさんが図書館で働くことになったのは、決してオクトさんの意思ではない。オクトさんは混ぜモノで、色んな意味で危うい存在。図書館を使いたければここで働けと言った館長の真意は僕にも分からないけれど、今のところ悪い方向には進んでいないようだ。

 図書館は中立の場。オクトさんが混ぜモノとして、あらゆるものに利用されないようにするには丁度いい場所でもある。しかし図書館の司書業務の仕事は、普通自分から志願してなるものであり、こんな一方的に選任されるものではない。

 何が目的なのか。

 それが分からない為、僕は適度に図書館で仕事をするオクトさんに会いに行くようにしていた。


 王家と敵対しそうな魔法使いに利用されないようにと、オクトさんには飛び級して僕とライと同じクラスになってもらった。勝手に物事を進めたので、オクトさんはかなり怒っていたが、これが一番安全な方法なのは間違いない。

 オクトさんは気をつけろと忠告しても、絶対流され騙されるタイプのヒトだ。オクトさんと出会って3年は経つが、彼女の性格は相変わらず、流されやすい。一応初めて会うヒトには警戒したりするが、すぐに警戒していたことを忘れる。頭が悪いわけではないので、ヒトを疑うという事が苦手なのだろう。

 さらにお人よしで、自分の利ではなく他人の利を優先する。入学試験の時に獣人の子を助けるために自分を犠牲にしようとしたのがいい例だ。危なっかしすぎる。

 

「アスタリスク魔術師は何も言っていない?」

「うん。怖いぐらい図書館のことには触れてこない……あの館長何者?」

「500年は生きているって噂だけど、どうなんだろうね」

 少し言葉が足りていない質問だったが、何度かオクトさんにアスタリスク魔術師が、ここで働くことに対して何も言わないかを聞いていたので、上手く伝わったようだ。

 500年も生きたヒト。おいそれとこちらに手札は見せてくれなさそうだが、それで納得するわけにはいかない。

 オクトさんが誰かに利用され、王家にとって邪魔な存在であると判断された時、僕は彼女と敵対しなければいけなくなる。そして彼女を殺す役を兄上から命令されるに違いない。オクトさんはヒトを信じやすく、一度信じた僕をきっと疑いもしないはずだから。

 ……僕はきっと王家を裏切る事はできない。命令されれば実行するだろう。

 それが嫌ならば、そんな未来が来ないように動くしかない。疑わしければ、しっかり確認が必要だ。


 そんな事を考えていると、オクトさんは本を持ってフラフラと移動し始めた。

「本持つよ」

「大丈夫。これぐらいなら運べる量だから」

 オクトさんは魔力が大きいらしく、かなり成長が遅い。実際まだ10にもならない年齢だからというのもあるが、重い本を持っている姿は大変そうに見える。

「オクトさんは真面目だね。少しぐらい頼ってくれてもいいのに」

「真面目で堅実な方が、人生上手くいく」

 こうやって隙を作らないところは評価できる。僕だっていくらなんでもいつも誰かを利用しようと考えているわけではない。でも僕はどちらかといえばヒトを利用する側の立場なので、そういったヒトの手口は熟知している。

 ただでも、オクトさんの場合は利用されまいとしての動きではないので、微妙だ。貸しとかそういった話がなくても、ほいほいと誰かに同情して利用されてしまいそうである。


 きっとオクトさんの場合は、自分の為というより他人に迷惑をかけないようにするという意味合いが強いのだろう。

「それって疲れない?」

 貸し借りは別として、どう考えてもオクトさんの今の体格を考えると、本を運ぶのは誰かに手伝って貰った方が効率も良い。僕としてはなんでも平等がいいとはかぎらないと思う。

 確かにオクトさんは混ぜモノだ。しかし見た目はどう見てもか弱い女の子。姿も醜いわけではなく、どちらかと言えば可憐の部類だ。普通に考えて手伝ってと頼めば、よっぽどでない限り図書館に所属しているヒトに手伝ってもらえるだろう。

 不器用すぎるというか、なんというかだ。ヒトの事は助けるくせに、自分の事は助けようとしない。


「いや。むしろカミュの生き方の方が疲れると思う」

 僕の質問に対して、オクトは意外な返しをしてきて驚いた。

 僕の方が疲れるねぇ。 

 確かに僕とオクトさんでは、考え方が正反対であるのは確かだ。僕はヒトを躊躇いもなく利用するし、嘘だってつく。あまりヒトのために生きているとはいえないだろう。とはいえそれが悪いことであるとは思わない。

 僕がヒトを利用し行ってきたことで、国としてよい結果が生まれているのは確かだ。全てのヒトが幸せになるなんて不可能だし、誰かが利益を出したという事は、何処かで不利益が生まれたという事。

 仕方がない事だと思う。

 

 考え方が違うオクトさんにそれを理解しろとは言わないし、それは無理な話だと思う。僕が驚いたのはそこではない。

 つい最近騙すような形で、僕達と同じ学年に飛び級させた事によりオクトさんを怒らせた。

 もちろん流されやすいオクトさんなので、すぐさま諦めの境地に入ったらしく、その後飛び級の件をとやかくいう事はなかったけれど、でも本当に最近のことなのだ。

 だからオクトさんは僕に対して不信を感じていても仕方がないし、怒っていても仕方がないと思っていた。

 それなのに、僕の方が疲れると思うという発言。オクトさんにとっては別に何という事はない、無意識の発言だとは思う。しかし内容は侮蔑ではなく、僕のことを心配しているという意味合いの強いもののような気がする。

 嫌っている相手に対して使うようなものではない。

 僕の疲れないかという問いかけに対して、オクトさんからは利用しているお前が言うな的な発言が返ってくるとばかり思っていた。


 オクトの中の僕は一体どうなっているのだろう。

 珍しく僕はそれが気になった。ライは友人兼兄弟のような部下で、友人ではない。というか王族は弱みになるような友人は作らない。たった一つの発言でヒトの生死までもが決められることもあるのだ。作らないというより、作れないといってもいい。

 しかしオクトは、僕の中の唯一のイレギュラー。

 部下ではない。ただ利用するだけの関係でもない。友人という枠組みに入れるしかない、唯一の存在。

 もちろん何かあり、弱みになるならば見捨てることになるだろう。しかしそうならないように、僕は根回しをしている。それはきっとこれからも、オクトが僕にとって幼馴染の友人でいて欲しいから。


「カミュ?」

「えっ。あ、ごめん。何だった?」

「何は、こっちのセリフ。用事があるんじゃないの?」

 オクトさんは黙り込んでしまった僕を訝しげに見ていた。

「調子が悪いなら、帰った方がいい」

 何処までもお人よしな小さな友人に苦笑いをする。

 やはり僕のことを既に怒ってはいないようだ。それどころか、勝手に利用したりする相手を心配するとか……本当に油断ならない。

 もちろん、そんなオクトさんだからこそ、この関係を守りたいと、僕に思わせるのだろう。

「少し考え事をしていただけだから、なんでもないよ。えっと、特に用事があるわけじゃないけど、オクトさんの仕事を応援したいなと思って見に来たんだ」

 そういうと、オクトさんはとても胡乱な目で僕を見てきた。

 まったく信用していない様子である。明らかに怪しんでいる姿に苦笑する。どうして普段怪しまなければいけない場面では警戒心ゼロなのに、珍しく優しくしようかなと思うと、バリバリの警戒心を向けてくるのだろう。


 あー、もしかして、オクトさんって誰かに優しくされたり、親切にされたりするのが苦手なのかな?

 だとしたら本当に損な性格だ。

「ちょっと、その目は酷いなぁ。本当だって」

「はいはい」

 オクトさんは適当に返事をするときびすを返し階段へ向かった。

 この様子だと、本当に信じていないらしい。


 それでもいいか。

 オクトさんが僕を信じるようになるのはあまりよくないことだ。僕は最後までオクトさんの味方でいる事はできない立場だから。

 必要ならば、僕の手を放して逃げて欲しい。

 それはきっと僕や国の利からは外れることだし、僕がそれを促す事はできない。でもオクトさんが勝手にそれをする分にはいいはずだから。

 

 この時初めて、僕は王子ではないカミュとして、そっとそれを願った。

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