暇潰しの魔王退治
※注意
シリアス展開は一瞬しかありません。
しかも、ロクでもないシリアスです。
時は不明。とにかく色んなファンタジーみたいに魔王退治を目指す勇者たちは幾多の試練を潜り抜け、魔王の眼前に立っていた。
「ついに追い詰めたぞ、魔王!」
そうお決まりの言葉をかけたのは英雄。
「くくく……観念するがいい。貴様程度では我らに触れることすら叶わんのだからな」
そう言ったのは英雄の仲間、深那々(みなな)。
「くっ……!退いてくれ。さもないと、また俺の右目が……!がぁああああ!
……くくく……ふはははは!贄はどこだぁ!」
赤と金のオッドアイの中二病少年、玄麈がほざく。
三対一。もはや、魔王退治という大儀がなければイジメである。
「いいだろう。なら、私の本気を見せてやる」
そういうと、金髪の男、魔王はドス黒い殺気を放つ。同時に魔王の姿が変わる。
全長は3メートルを越え、肌の色は紫に変化、爪は鋭くなり、背中からコウモリの様な翼と頭からは角が生え、瞳はつぶらになり、顔も小顔になった。
「ふはははは!恐れ入ったか!」
声はロリ声になっている。
「……っ!な、なんて奴だ!」
こうも俺の好きなパーツ(声、瞳)を攻めるなんて!
英雄は瞳フェチ、声フェチなのだ。
「ふん!片腹痛いわ!」
そう言ったのは深那々。
「確かに貴様のキャラ作りは成功しただろう。しかし、我らにはヤツがいる。行け、中二病少年!」
そう指図されるとゆらりと、幽鬼の様に魔王の前に歩み出た。
「いいだろう。我、ルシファーが潰してやろう。そもそも、我が誕生の起源は人間が生まれた頃にあり……(以下略)だ。それでも我と戦うか?」
そう玄麈がほざいてみるがすでに聞いている者はいなかった。
魔王は世界設定を無視して携帯電話をいじり、英雄と深那々はしりとりをしていた。
と、魔王は携帯電話のディスプレイに落としていた目を上げ、玄麈を見た。
「え?やっと終わったのか?」
そう聞くと玄麈の額に青筋が浮かんだ。
「いいだろう!なら、我が本気を出して戦ってやろう!」
次の瞬間、玄麈は背中から翼を生やし、大地を駆けた。
「え?あれ?翼の意味、ないよな?」
すると、玄麈は両目をカッと見開き、一言。
「見かけ倒しだ!」
「意味ねぇ!」
そんなやりとりをしている間に玄麈は魔王の懐に入っている。
手を貫手の形にし、その手を槍の様に放つ。
が、その攻撃は魔王の体を貫くことはなく、逆に玄麈の手が砕けた。
「ざまぁ」
と英雄が小さな声で言った。
「くっ……!なんて硬さ」「当たり前だ!私はモース硬度測定不可の体を持つのだからな」
ちなみに、モース硬度とは、硬さの尺度であり、一から十までのレベルがある。ダイヤモンドのモース硬度は十で最も硬いとされる。
「なら、一緒にやるぞ、深那々、玄麈。一点集中で攻撃するんだ。硬ければ硬い程、案外脆いからな」
二人はコクリと頷き、駆け出す。
深那々は手に持つランスを構え、突撃。英雄は手に魔力を溜め、拳を作る。玄麈は残りの手で貫手を作る。
魔王は動かない。
そして、三人の攻撃は同時に魔王の腹部に命中。
タイミング、威力、攻撃を入れる角度、どれをとっても、三人の最善を尽くした技。しかし、それを持ってしても
「ふははは!効かん、効かんぞ!痛くも痒くもないぞ」
だが次の瞬間、魔王はその態度を変えることになる。
「……痒っ」
そう言うと魔王は胸をかき始めた。
同時に蚊が独特の羽音と同時に魔王の胸から飛翔した。
「へっ」
見下した様な笑みを浮かべて蚊は去って行った。
「…………」
しばしの沈黙。そして次に深那々が提案した。
「……魔王、出直して来るわ。いい?」
当然、通る訳もなく
「うん、いいよ。また来てね」
喋り方を変えたバージョンに加え、ロリ声で魔王がそう言うと英雄は悶える。
「くっ……!確かに魔王は強い!」
うめく様に英雄が呟く。
「……って、いいのっ?」
「何を言う!我は……!」
何かをほざこうとした玄麈の口を深那々が塞ぐ。
「もちろん。部屋に戻ってRPGしたいから!」
「世界観思いっ切り無視!」
英雄(主人公だから作者の言いなり)はそう叫んだ。
「ってな訳で戻ろうぞ!」
深那々がそう言いながら帰ると英雄と玄麈もそれに続いた。
「てな訳で強くなるぞ!」
深那々が主人公張りにそう宣言すると、玄麈はお決まりの眼帯と包帯を腕全体に巻いていた。
「でもさ、幸運にも強くなるアテならあるよな?」
「ああ。何より、俺には奥の手が……」
「ああ、はいはい。じゃあ、強くなりますか」
深那々が言うと三人は頷いて同時に叫んだ。
「蚊ァ!ぶっ殺す」
理由は簡単。
痛くも痒くもない。しかし、蚊は痒くできた。つまり、蚊の方が強いのだ。
それを絶滅できれば痒くはできる、という意味だ。
それから数日後、三人は全力で蚊を絶滅させた。
「僕が、僕が強くなったらそれに比例してルシファーも」
「中二病、乙」
面倒そうに深那々がため息を吐いた。「でもこれで、俺たちは強くなった。何せ、魔王に痒みを与えられる実力になったんだからな」
「どこまでも向上心のない勇者たちだなぁ……」
そう言うと近くにいた木陰から一人の美少女が現れた。
頭からはヌコミミがはみ出している。
髪は銀髪、瞳は琥珀色、ヌコミミの色も髪と同じく銀色だ。
すると突然、玄麈が傾けた額に手を当てた。
「うっ……俺に……俺に近づくな!」
深那々は平然とした顔で玄麈の背後に回り、顔色一つ変えずに首を絞めた。
「俺の後ろに立つな!お前だと分かっていたから良かったものの」
「あぁ、はいはい。ちょっとオチようね」
次の瞬間、ガクリと玄麈はオチた。
「……で、あんた誰?見た感じだと魔王の仲間だと思うけど」
「いや、英雄。この女の正体を知る必要はない。このキャラ、危険だ」
「僕は仲間が一番危険だと思う」
「?どこが?」
ふざけではなく、本気で深那々は疑問に思っている様だった。
「はぁ……。考えてみろ。ヒドイ中二病少年とそいつを平然とオトせる奴らだぞ?変人以外の何者でもないだろ?」
しばし考える深那々。その後、へらっと笑った。
「まぁ、勇者の募集方法が物で釣る、だからね」
時は一ヶ月前に戻る。
ふと、英雄はかわら板を見た。そこには
『魔王を倒したい人。ちょっと王城に来てねぇん。今、来てくれるとコンビニで21円で売られてる台形のチョコあげちゃう』
と書かれていた。
当然、世界観的にはコンビニなど存在するハズはない。
それでも最近、糖分が不足している英雄はとりあえず王城へ行ってみた。
すると、そこには二人の少年少女がいた。一人はダークブルーの長髪、エメラルドの瞳の美少女。
もう一人の少年は金と赤のオッドアイ、金色の髪だ。
二人はすでに王の前に片膝を着いている体勢だ。
英雄もそれに倣い、美少女の横で片膝を着いた。
それと同時に王が口を開いた。
「ふむ。三人か……まぁ、いい。とりあえず、約束の物だ。受け取れ」
王は台形のチョコを投げてよこした。
それを受けとった三人は三者三様の言葉を吐く。
「ちっ……ヌガー?ま、いいか」
「クッキー&クリーム?ほう。白と黒が混ざった、混沌の物か……いいだろう」
「……きなこ餅」
きなこ餅味を貰った英雄は、はぁ、とため息を吐いた。
「それはそうとかわら板のことは見てきれたな?そんな訳でお前たちには魔王をちょろっと退治して欲しい。無論、報酬は望む物を出そう」と、ここで王は言葉を切った。同時に、王は値踏みするかの様な目で三人を見た。
「しかし、魔王とて、弱くはない。行くにはそれなりの実力がなければな。だから、ちょっとした試験をさせて貰う」
パチンと指を鳴らすと王の横に立っていた三人の槍を持った兵士が歩み出た。
「諸君らには彼らを倒して貰う。異論は許さん。さぁ、前へ出よ」
そう言われるがままにきなこ餅味を口の中に投げ入れた英雄が前へ出た。
「僕が最初に出ます」
すると、三人の兵士の中でがっしりした体型の男が前へ出た。
槍を構える兵士とは逆に英雄は構えない。むしろ、ポケットに手を突っ込む。
それを挑発と受けとった兵士は駆け出し、槍の後ろを持ちながら突き出す。
それと同時に英雄も走り出した。
「直線に来ると分かってる攻撃を避けるのは簡単だ」
そう言うとニヤリと兵士は笑った。すると、伸びていた槍が横に振られ、英雄を薙ぎ払おうとする。
しかし、英雄は体勢を低くして兵士の懐に潜り込んだ。同時にポケットから手を出すと同時に兵士の口にその手を突っ込んだ。
すると、兵士の口から赤い、塊が溢れ出す。
そして、兵士は顔を真っ青にして倒れた。
「……殺すな、とは確かに言わなかったがな」
そう王が言うと英雄はあっけらかんと答えた。
「何言ってるんですか?生きてますよ。赤いのは買ってからしばらく放置してたら勝手に完成したトマトピューレの袋を召し上がって貰ったからです」
「……仮にも、勇者だろう?」
「ええ。ですから勇者らしい戦い方をさせて貰いました。ダメでした?」
「ダメだよ!というか、ヒドイよ、色んな意味で」
王の言ってる意味が分からず、首をかしげる。
王は、はぁ、と息を吐くと「次」と言った。
次に前へ出たのは美少女だった。
「俺の実力、見せてやろう」
対するは三人の中で一番険しい顔をしている兵士だった。
さっき同様、前へ出るだけで開始の合図はない。
次の瞬間、美少女の手が飛び出していた。例えではなく本当に。
美少女から飛び立った腕は高速で兵士の顔にクリーンヒットし、旋回して美少女の腕に戻っていった。
「これで問題ないか?」
「いや、あるよ!その体、おかし過ぎるだろ!……まぁ、いい。認めよう。一応、勝ったしな。では、最後」
そう呼ばれるとオッドアイの少年が無言で立ち上がった。
相手は三人の中で一番ガタイのイイ兵士だ。
「へっ!こんなガキ相手ならいっそ、今の女とやりたかったぜ」
兵士が言うと少年は兵士を見た。
「……頼むから、俺の前に敵として現れないでくれ。さもあいとあいつが、ルシファーが……!あ、あぁああああ……!
……ククク。フハハハハ!この我、堕天使ルシファーが相手しよう。そも、我のルーツは人間が誕生(以下略)だ」
表情の一変した少年の長々とした話が終わると、兵士は顔を歪ませていた。
「い、痛いィ!痛いィ!なんかよく分からんがとにかく痛いィ!ダメだ、勝てる気がしない」
そう言うと足早に兵士は逃げて行った。
少年は視線を逃げ出した兵士から王へ向ける。
しかし、少年は向いただけで何も喋らない。
「まともな勇者がいない……」
王は熱くなった目頭を手で覆った。
「はぁ……まぁいい。手段はともかくお前たちは勝った。人外と中二病がいるが。そう考えたらなんか少年、お前がまともに見えてきた……」
王は目頭を手で覆っていたが、そこから涙が流れ落ちていた。
「基本的に苦労しそうなパーティだ。それでも行ってくれるか?」
王がそう問い掛けるが三人はすぐに返した。
「僕の名に恥じない英雄になる為に」
「この世に破壊と再生の混沌をもたらす為に」
「ザ〇トの為に」
王は三者三様の答えを聞いてがっくりと肩を落とした。
「本当、苦労する旅になるぞ……それでもいいか?あと英雄、お前はエロイカの意味合いの英雄ではない」
「分かってるさ。不安しかないけど魔王退治、やってやるさ」
そう、美少女が答えると王が叫んだ。
「お前もその一人だがな!」
そんなこんなで今に至る。
「あ、回想終わった?」
またも世界観無視でカップ麺を食べていたヌコミミ少女は聞く。
「あ、うん。ごめん。で、何か用でもあるんじゃないの?」
妥当な所で王が派遣した人間だが、少女の外見は魔物だ。
「そうだな。単刀直入に言う。我らは四天NOだ。まっちゃん(魔王)が寂しいからお前らを連れて来いとほざきやがった。一緒に来て貰おう」
英雄は想像してみる。まっちゃん(魔王)が寂しがっている様子を。
「すぐ行きます!」
しかし、走り去ろうとした英雄を少女が阻んだ。
「ここを通りたければ、我を倒して通れ」
しかし、少女が最後まで言葉を紡ぐことはなかった。
深那々が両目から閃光を放ち、それを浴びた少女が消滅したからだ。
「……王の言う通り、やっぱお前、人外だ」
ボソリと深那々に聞こえない声のボリュームで呟く。
だが、ここで英雄と深那々はピタリと動きを止めた。
周囲をいつの間にか囲まれていたからだ。
「……どうする?このままじゃ全滅だ」
「クソッ。この中二病、全く役に立たないな」
そう言うと深那々は憎々し気に倒れている玄麈を蹴った。
「いや!元は深那々のせいでしょっ?」
「いや!この程度でオチたこいつが悪い」
普通、首を思い切り絞めたら誰でもオチるよ。
そんなことを思っている内に勇者たちの包囲は狭まる。
突然、気配の一つが急接近した。
二人が構える。しかし、現れたソレは手を前へ突き出し、制止した。
「待って下さい。僕らは戦いに来たのではありません。話を聞いて下さい」
黒髪、狐の様に目を細めている男が言う。
「そうか。でも、無言で俺らを包囲したんだ。当たり前の対応だろ?」
「確かに。そこは謝ります。しかし、戦意が無いのは本当です。争いは何も生みませんから」
英雄は感動した。
「こ、こんなマトモなキャラが現れるなんて……!」
男は前に出していた手を下に下ろした。
「そうです。争いは何も生みません。ですから、語り合いましょう」
ほっと英雄が安堵したのもつかの間、当の男が殴りかかってきた。
「な!ちょっと。戦いは何も生まないんじゃないのかっ?」
すると、男はニコリと笑った。
「ええ。ですから、語り合うんです。拳で」
「分かるかァ!つか、やっぱマトモなキャラいねぇ」
そう言ってる間に男は英雄に拳を放つ。英雄はそれをスレスレで回避する。
そんな間、深那々にも敵が来ていた。
「ひゃは!血だぁ……!血を寄越せ!」
荒い息遣いで金髪の男が深那々の前に現れていた。
「さぁ、始めようぜ」
そう言うなり、深那々は先手必勝と言わんばかりに駆け出す。
とりあえず深那々は人外っぷりを存分に発揮する。口を大きく開き、周囲の木々にダメージを与える音波を放つ。
だが、男もそんな攻撃に当たる訳もなく
「ぐぉ……!」
当たった。普通に。
男はそのまま仰向けに倒れるが、すぐに起き上がる。
「あ、危ねぇじゃねぇか!俺はなぁ、論争という争いが好きなんだよ!」
そんなこんなでバカ二人とバカ二人が戦う。
その時、もう一つの気配があった。
その気配に二人は反応できない。
そのまま、気配は真っ直ぐに倒れている玄麈に向けて腰の剣を突き立てる。
その瞬間、玄麈は目を開ける。
左足を軸に地面スレスレで跳躍。そのまま着地と同時に起き上がった。
「ふははは!残念だったな。玄麈が寝ている間、我、ルシファーはこれの制御下から外れる」
深那々、英雄にとっては本当に残念な仲間である。
ルシファーが敵を見てみるとその相手は銀髪おかっぱの少年だった。
顔には袈裟斬りの跡が残っている。
「許せないんだよ、お前はァ!」
などど玄麈とは初見なハズなのに言う。
ちなみに、玄麈に銀髪おかっぱの知り合いはいない。
二人は少し距離をとり、相手の出方を見る。
すると、銀髪おかっぱが口を開いた。
「早く来い。じゃないと」
「じゃないと?」
ルシファー(笑)がオウムの様に繰り返す。と、
「傷が疼く――」
しかし、銀髪おかっぱが最後までその言葉を紡ぐことはなかった。
ルシファーが敵の腹部に拳を埋めていたからだ。
銀髪おかっぱは膝を地面に着け
「痛い……!痛いィ……!」
と呻きながら倒れた。
「お前ごときが!僕に勝てるわけ、ないだろっ?」
吐き捨てる様に玄麈は言った。
深那々は男と向かい合っている。
「そもそも!お前らは魔王について何を知っている?あの方はあの方の悩みがある。お前たちはそれを知っているか?知らないだろう。事情も知らぬのに殺すか?殺せばこの世界の争いは絶えるか?あの方は世界に平和を与える為にあえて自分から泥にまみれようとしている。それをお前らは――」
「うっさい」
そう言うと深那々の指に穴が空き、次の瞬間、そこから閃光が飛び出した。
それは男を穿つ。
「確かにお前の言う通りかもしれない。お前は正しいよ。でも、今はそんなの、問題じゃない。もっと重要なことがある」
深那々は断言する。
「じゃあ、それは何だ?」
次の瞬間、深那々の空いた穴から今度は小さな銃弾が出て、銃幕を張り、男を蜂の巣にした。
「…………なんだろね?」
そう叫ぶと男は
「ネタねぇのかよっ?」
と言い残し、ガクリと倒れた。
英雄は男の無茶苦茶な言い草を聞きながら回避を続けていた。
が、諸事情により、英雄は必殺の言葉を放ち、男を倒した。
「お前のスタイルが一番危険だぁ!」
「気にしてたこと言われたぁ!」
英雄、全力の一撃を男は顔面に受け、倒れた。
頃もよく、二人も敵を倒していた。
「ふぅ。間違いなく修行の成果が出てるね」
「これに比例してルシファーも強くなってしまう……」
「当たり前だ。何せ、世界中の蚊を殺したんだぜ?強いに決まってる」
英雄は二人の言葉に頷き、言った。
「よし、魔王に痒みを与えに行こう!」
テンションの高い一行は魔王の城に向かった。
「あ、皆だ!久しぶり」
魔王はロリ声で迎える。しかし、修行をした英雄の敵では
「久しぶり~♪」
あった。
「……魔王。我らは貴様に痒みを与えに来た」
次の瞬間、深那々は口から大口径の砲門を出した。
そして、照準用のレーザーを発射。一瞬遅れて砲門より一回り太い熱線が発射された。
それは魔王を直撃し、土煙が舞う。
「深那々がロボットって言っても僕、もう驚けないや……」
色々諦めた口調で英雄は呟いた。
だが魔王は立っていた。それでも、出力が高かったのか魔王も無傷ではなかった。体のあちこちがダメージを負い、出血していた。
「ま、まさか私の絶対防壁の解除キーである蚊を全滅させるとは……」
何!?蚊に生命線任せてんのっ?そりゃ勝てんわ。
英雄は心の中で叫んだ。
「うぅ……痛い、痛いよぉ、お兄ちゃん」
ロリ声に加え、涙声が加わったソレは声フェチにとって、核爆弾以上の爆発力だ。
それでも
「ボクタチハマケルワケニハイカナインダ……」
「声、やる気ねぇ!」
熱線を発射し、その砲身を冷却していた深那々と空気と化していた中二病少年に言った。
「援護する!行け、ス〇ーク」
「この我が力を貸してやる。行け!」
徹夜明けのよく分からないテンションよろしく英雄は突っ込む。
フルバーストよろしく、深那々は自身に搭載されている中、遠距離兵装を放つ。
玄麈はその瞳で魔王を射抜く。予想外な程、キレイな瞳の玄麈に魔王は驚いて動けない。
両手をポケットに突っ込み、魔王とすれ違い様にその手を居合の様に一瞬で出し、魔王の口に突っ込む。
「むぐ……がぁ……!」
顔を真っ青にし、つぶらな瞳を閉じて魔王は倒れた。
「自然精製のキュウリとトマトのピューレ。フレンチ風だよ。よく味わってね」
こうして、グダグダ気味に魔王退治は終わった。
ちわ~っス。
かっぷめんです!
地味に駄作を量産する気なのでこれからもよろしくお願いします