6 ウエイダー聖剣を取り返しにやって来る
ジャンさん、それじゃあ私はこっちなので
頑張ってください!
はい!
親しくなったジャンさんと別れ兵士詰め所に向かい朝の準備を済ませ
いつものように騎士学校のクラスで教師を待っていると
クラスの扉が開く
ウエイダーが立っていた
ウエイダー?
ずいぶん長い間見ていなかった。
おい、フレイルちょっと来い。
突然、そういわれた
しかたがない。ついていってあげるとしよう。
ウエイダーのあとをついて学校の裏に来た。
あの聖剣は俺のものだ!やっぱり返せ!あの力は俺にこそふさわしい!
はい?
いまさら何を
あれは!俺のだ!返せよ!
はあ。
ため息が出る。
彼が剣を引き抜いたのも事実。試すだけならいいでしょう。
どうぞ。
聖剣を手渡す
なんだこれ?ただの剣じゃねえか。
聖剣ですよ。見た目を偽装してあるだけです。
偽装?まあいいや。
ニヤつきながら聖剣を手に取り鞘から出そうとする。
しかし、剣が鞘から抜けることはなかった。
な、なんで!抜けねえんだ!
剣が選んだのでしょう。あなたではなく。私を
ふっざけんなぁ!そんなはずあるか!俺は選ばれた人間なんだ!お前みたいな雑草なんかとは違う。選りすぐりの一握りの人間なんだよ!
何度も剣を抜こうとするがビクともしない。
もういいですか?
そう言って剣を引ったくると
待て!こんなはず!
飛び掛かってきたので投げ飛ばすと泥の中に転がって行った
では、私は行きます。
待てよおおおおおおおおおおおお!
私はあきれてしまって足を止めた
ウエイダー・・・あなた平然と話しかけてきましたけど私はまだあなたを許していませんからね。
そ、そんなのてめえが悪いんだろうが!
私は悪くない。
わりいよ!
平行線ですね。悪くないです。
わりいいんだよおお!
くどすぎる。怒りが頂点に達した
相当睨みつけながらウエイダーに詰め寄る。
あなたが私にしたことは地獄でした。いまだって斬り捨ててやりたい。
言葉以上に目からその狂気を感じ取ったのかウエイダーが息を呑む
・・・。
沈黙が流れた
お前が弱いのがわりいんだろうが!
沈黙が流れる。雨が降って来た
雨粒の音が大きく聞こえる
・・・俺には力があるから当然のことだ!当然の権利だ!力を多く持ってるやつがその分多く取り分取って何が悪いんだよ!
出て来た言葉がおおよそ人外の価値観すぎて話にならない。
この男はどこまで邪悪な価値観で生きているのかとあきれた。
争うことが前提の思考をしている。奪って当然そう言いたいのだ。
この男もまた壊れた倫理の被害者だった。
もはや善悪の判断もできないとは
そう言葉を吐き捨ててウエイダーを残し歩き出すと
俺を・・・この俺を差し置いて・・・聖剣がお前ごとき雑魚を選ぶだと・・・・・・。
ウエイダーはぶつぶつと何かを言ったかと思うと
フレイルゥゥー!
腰の剣を抜き、背中から斬りかかってきた。
剣を抜くだと!まさかここまでの阿呆だったとは
はぁ!
瞬時に抜刀、キキキキキキキキンキンキキキキキキキキキキンキンキン!
16回切り刻みウエイダーの剣を粉々に破壊する。
ひぃ!
ウエイダーが悲鳴をあげ腰を抜かして私を見上げていた。
粉々になった剣が一斉に降り注ぐ。
これが最強と歌われたあのウエイダーとは
この世界の命はとても軽い。殺人も容易に肯定される。
覚悟ができてしまえばあとは実行するだけ、前世とはまるで違う。暴力的で野蛮な世界だ。だからこその差か。
酷く冷めた目をしていたと思う。
そ、そんな目で・・・そんな目で俺を見るなぁぁ!見下してんじゃねえぞぉぉー!
そんなつもりはありませんよ。そう見えたのならあなたが下がったのでしょう。
昔からあなたは私を見下していましたけどね。聖剣との出会いが私を壊し変えてしまった。それだけのことです。
ふざけんなよおお・・・俺が最強だああああ!俺こそが勇者なんだ!そうじゃなきゃ俺は・・・ああああああああああああ!
あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!
私は自身の無力に絶叫する男を残しその場をあとにした。
・
・
・
・
・
・
それから数時間ウエイダーは絶望の底にいた
そのときだった。
ふふふ
女の笑い声がするとウエイダーは振り返った。
黒いローブの集団が歩いて来る。
その中央に黒いローブを目深にかぶった女が現れた。
なに笑ってんだよおおおおおおおおおおおおおおおお!
ウエイダーは女に剣を振りかぶり襲い掛かった
ぐあ!
見えない衝撃波がウエイダーを吹き飛ばす。
ドシャ
土の上にウエイダーが投げ出された
俺が押し負けただと!お前は!
女は言った
我が名はアペルピスィア・マギサ
エイレースケイアとは対となる魔王崇拝者へキサセクスの魔女
ウエイダー・ラフガディオ、お前に力をやろう
魔女が側近たちから漆黒の剣を受け取るとそれを振るった。
それだけで目の前の民家が粉々に吹き飛ぶ。
こ、これは・・・
魔剣。そしてもうひとつ
側近たちが何の変哲もない鉄の鎧を持って来る。
我が加護を施した鎧
鎧が空中を舞いウエイダーの体に装着されていく
そしてウエイダーは鎧からみなぎる力に感化されていく。
何の疑問も抵抗も持たずに魔剣を受け取り握りしめた
兜を下げると真っ赤な切れ長のひとつ目がブォン!と光った。鎧の体色が鉄の色から漆黒へと染まっていく。
ウエイダーは力を確認するように自分の手を握りしめた。
魔女は言った
魔王マーゾの魔名の下お前に邪悪の称号を授けよう。邪悪騎士を名乗るがいい。
ウエイダーが女に対し片膝をついて頭を垂れる
仰せのままに我がマスター!
あはははははははははははははははははははははははははははははは!
魔女の狂気的な笑い声が響き渡る。
ウエイダーが悪に落ちた
・
・
・
・
・
・
ふい~。げふっ!
酒瓶を床に散らかしながら男は6本目の酒瓶を開けた
殴られた跡のある子供が倒れている
いつの間にか人の気配がして見ると家のドアが開け放たれ、そこに真っ黒い騎士が立っていた
ふらつきながらドアの前まで歩いていく
ああ?なんだ?お前・・・
ドス!
ひぐ!
か細い悲鳴が上がる。
黒い剣が胸に突き刺さると男はドサリと倒れた。
親父・・・。
・
・
・
・
・
・
雨が降っていた
騎士様、お恵みを~・・・。
歳老いた老婆が手を差し伸べてくる
ではこれをどうぞ。
銀貨を渡す
おおお!騎士様~主神パリョ・テオスのお恵みがあらんことを!
こちらこそ、
私も一礼してからその場を去る
そんなときだ
フレイル!
振り返ると
黒い鎧の騎士が剣を構えて立っていた。
邪悪な力を宿した剣
あれは・・・魔剣か!
それにもしかしてウエイダーなのか?
お前を倒すためへキサセクスの魔女と契約した。この邪悪騎士の力でお前を倒す!
ロイドのことを思い出す。
鎧から力を感じる
ウエイダーも力を与えられたとみて間違いない。
ウエイダーから邪悪な力があふれていた
本気のようだ。
剣がわずかに震えていた。
魔剣を折れて言っているかのようだ
そうだ。私がウエイダーを憎むように聖剣も魔剣を憎んでいるのだ
あなたの剣が魔剣なら、私のこの剣は誰もが持つことを許される一握りの誇りを踏みにじられた者のためにある!
ウエイダー・・・闇に落ちたか・・・。
何を言っていやがる。ははっ、はははははは!俺は最強だああああああああああああ!
へキサセクスになったなら斬るしかない。しかたない。あなたが死ぬ前にこの姿を見せましょう。
兜の面を下ろすと鎧の色が鉄色から純白へと変色していく。青い両目がブォン!と光った。
何の変哲もないただの鉄の剣だったものが聖剣へと変化していく。
お前も同じなのか!
ウエイダーが私の姿を見て絶望する。
光と闇の対峙か・・・光りと闇の戦いなんて間違ってる。光なんてない。あるのは正義と闇だ!正義は振りかざすためにある!!
ウエイダーが怒りの声をあげた。
イライラする野郎があああああ!おおおおおおおおおおおおおお!
剣を手に襲い掛かかってきた
はああああああああああああ!
剣を手に迎え撃つ
互いの剣が激しく激突する。
はあ!
右に一閃
はあ!
左に一閃
はあ!
右に一閃
はあ!
左に一閃
はあ!
激しい剣の攻防
でや!
振るわれた剣を上体をそらして避ける
ふん!
右キックで相手の軸足を蹴り飛ばし転ばせる
はあ!
右回転しながらくるくると回り連続縦回転斬りを繰り出すと
ウエイダーは転んだ姿勢のままくるくると回転して斬撃を避けた
見事だった
着地する
おらああ!
瞬間ウエイダーの拳が飛んでくる
それをつかんで投げ捨てた
おわ!
なかなかの動きだ。さすが魔剣に選ばれし者
邪悪騎士の鎧から闘気が黒い煙となって交差して巻き上がると、切れ長のひとつ目が赤く輝いた。
おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!
上段に剣を振りかぶると呼吸にこうして剣のつかから剣先まで邪悪な闇が充満して最大の力を集束していく。
消え失せろおおおおおおおおおお!
闇の剣、ダーク・ネス・スラッシュ!
黒い闇の奔流が私めがけて襲い掛かる。
恨みも怒りも捨てよう。これは死ではない。救済だ!
私は聖剣を握る手が痛くなるほど固く握りしめていく。
すると剣から、見ていると心が温かくなるような優しい黄色い光が発光し、
次第にそれは解脱の心では捨てきれないぬぐい切れない復讐に取りつかれた不気味な白い光へと変化していった。
両手で剣をつかみ胸の前に持ってくるとピンと突き立てた。
それに呼応して鎧の体から白い闘気が交差して巻き上がり、鋭い二つの目が青く光った。
はあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!
腹の底から呼吸することで、圧倒的な白い光が剣のつかから剣先まで充満し最大の力を収束させていく!
己が非道の報いを受けるがいい!
光の剣、シャイニング・スラッシュ!
膨大な光の奔流が黒い闇と激突する
私を破壊しようと強力な闇が押し寄せてそれが少しずつ光に吞み込まれていく。
まるで闇すらも貪欲に呑み込もうとするかのような狂った光がついに闇を呑み込んだ
ば、馬鹿な!ぐあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!
それでもおさまらない光の奔流はウエイダーを呑み込み天を突き、闇を討ち払う
周囲は壊滅状態となっていた。
二つの力が暴発したのだ。
兜を上げると鎧の色が元の鉄色に戻った。
ウエイダーが倒れている。
言いようのない復讐心が心を満たした。手に握る剣が震える。殺してやる。殺してやるぞ。
ウエイダーああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!
剣を振り上げ振り下ろすと剣先はかろうじで地面を突き刺した。
いまにも殺してやりたい気持ちを理性で抑えて何とか耐える。
なぜそうしたのか自分でもわからない。それがなぜだか自分でも許せないことのようなそんな漠然とした気持ちがしたのだ。
私は・・・弱い・・・。
そう思い黙ってその場を去ることにした。




