4 冒険者ジャン 追放された冒険者
王都のパトロールをするため冒険者ギルドに来た。
燭台に炎が灯っている
ドーナツ状のテーブルの中央に受付嬢が立っている
受付嬢はウェーブのかかったロングヘアに泣きホクロのあるセクシーな巨乳のお姉さんだ
ギルドカードを作りたいです。
受付嬢は棚の下にしゃがんでから一枚の紙を取り出す
こちらの書類に記入をお願いします。
お名前
年齢
職業になります。
フレイル
13歳
見習い騎士
こちらギルドカードになります。
Fランクと書かれた紙を受け取る
依頼はありますか。
手ごろなのだとこの辺になります。
ほう、薬草採取とスライム狩りか。
では薬草採取でお願いします。
かしこまりました。
私は薬草を採取するためギルドの床を探す
ここに薬草があるのだ。
はははっ!
冒険者たちがテーブルをはさんで休憩がてら談笑している。
はあ!
正拳を床に叩きつけ穴を開けると床板の裏面を手探りで触る。
草の感触を頼りに引っ張ると薬草を見つけた
ほう、これが薬草。
同じようにチョビ、チョビ引っこ抜いて採取していく。
冒険者が言った
おい、邪魔だよ。
申し訳ない。
謝罪して採取を続ける
まあいいけどよ。
他に薬草は生えていないだろうかとテーブルの下を探す
テーブルの裏に鉱石を見つけた。
く、硬く癒着している。これは剝がすのに一苦労だ。
わははははははははは!
冒険者たちの笑い声がテーブルの向こうから聞こえてくる
一度テーブルの下から抜け出ると
受け付けに向かった
鉱石を見つけました。
何か採取できるものはありますか?
でしたら腰に下げた剣を使ったらどうですか?
唖然とする。
鉱石を剣で打ち付けたら刃こぼれしてしまう。常識のない受け付け嬢だ。
けど聖剣だし。大丈夫か。
再びテーブルの前まで行く
テーブルの左右には冒険者が、テーブルには料理と酒が置かれている
はあ!
テーブルを蹴り飛ばし
ガシャン!ガシャン!
テーブルの上の酒やつまみを床にぶちまけた
椅子に座っている冒険者たちは何事もなく楽しそうに談笑している
テーブルの裏面が自分の立っているほうを向いた。鉱石がビッチリとへばりついている
剣を抜く
カン!カン!カン!
剣を使い少しずつ鉱石を砕いていく
ボコり
これは!
ごつい鉱石が取れた
手に拳台の鉱石を握る
岩の中央に紫色の鉱石が輝いている
同じ要領でカン!カン!カン!カン!鉱石をはがしていく
採取はこんなものでいいだろうか。
受け付けに持っていくと
受付嬢が
まあすごい。と驚いていた
うふっ。
何を思ったか受け付け嬢が怪しく笑っている
報酬の計算をするので少々お待ちください。
受け付け嬢がカウンターの下で会計をしている間、
ギルド内を見回すと8人組みの冒険者が何やら談笑している
そろそろを武器を取り行くか。
そう言ってギルドを出ていく
武器屋か、薬草や鉱石がもっと取れるかもしれない。
私も冒険者たちのあとを追ってギルドを出て武器屋へと入店する
ああ、受け付けで報酬を受け取り忘れた。あとで取りに行けばいいか
冒険者たちが武器を買っている。
リーダーの冒険者が仲間に武器を持たせていた。
ほら
ああ、クリス!
武器を受け取っているのは聖法使いのようだ。
・リーダークリス戦士
・聖法使い
・武闘家
・魔法使い
・商人
・傭兵
・吟遊詩人
・荷物持ちジャン
聖法使いが手に持つのは新品、ピカピカの杖だ。杖の先に奇妙な頭がついている
武器屋の店員が店の奥から燃え上がるハサミを持って来る
これがフレイムシザーか!
聞くところによると魔物の希少な部位を砕いて作ると言われる魔剣だ。
初めて見る。
美しくメラメラと燃える刃だ。
武器屋のポニーテールの美少女店員が解説する。
鼻の頭に黒いすすがついていて、皮製の赤いエプロンをつけている。可愛らしくハツラツとした雰囲気のある美少女だ
炎を刀身に宿したハサミ、まだフレイムシザーの作り方がわからなかった時代には去る偉大な魔法使いがその元型を製造したと言われているわ。
おい、ジャンこれ持っとけ
クリスは隣の男に武器を押し付けるとフレイムシザーを受け取る。
すげえ、これさえあれば・・・
これでクリスの攻撃力もグン!と上がるわね!
おお!任せてくれ!
盛り上がっている。
今日の依頼どうしようか
ゴブリンキング今日こそ討伐したいんだ!
いいねえ!やろうか!
あははははは!
一同は楽しそうに森へと向かっていく
さて私は武器屋で鉱石か薬草を採取しなければ
お、この壁に飾られている剣は採取できるようだ。よし、剣を取り出すと
カン!カン!カン!
壁の剣が音を立ててはずれる
シルバー・セイバーか。
豪華な装飾が剣の柄に施され、刀身にはイーグルをかたどったエンブレムが刻まれている
まだまだある。
次にカカシに飾られている鎧を採取する
カン!カン!カン!
鎧の固定が破壊されカカシから外れる
ウルフ・メイルか。胸の中心に狼の顔がクワッ!と口を開いて犬歯をのぞかせている
大量の荷物を抱えて武器屋を出ると
お?
店の看板を見た。
金細工が施されている。これは高そうだ。
カン!カン!カン!
看板をわきに抱え
ギルドへと戻ることにした。
・
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・
・
ギルドに行くと薬草、鉱石、シルバー・セイバー、ウルフ・メイル、武器屋の看板を換金したお金、しめて金貨45枚と銀貨80枚になった
働いたものだ。
酒場に来た私はコインをカウンターに置いた
氷水ください。
ポニーテールのセクシーお姉さんバーテンダーがナイフで氷を丸くカットしていく
シャン、シャン、と綺麗な音が響く
氷を陶器のグラスに入れてから魔法で水をそそぐ
よく冷えた水をチビチビと飲みながらカウンターの中をウロウロして置いてあるお酒の瓶を見物していると。
狭いカウンターの中、バーテンダーのお尻とお尻がぶつかる
痛い!
申し訳ない。
いいよ。
にっこり笑顔を向けられた
気を取り直してウロウロしていると
ドン!
ガシャン!
陶器の瓶が跳ねる音がした。
その程度で血気盛んな冒険者たちが静まり帰ることなどなく。
皆、好き勝手に酒を飲み談笑、大声で笑い合っている。
あれは・・・。
冒険者クリスと仲間のパーティーたちだった。
ジャン、だ~か~ら~。お前はク・ビ!追放!わかる~?
そんな!クリス!そんな!俺一生懸命やってたのに!そんな!
お前さぁ、いらねーから!使えねー戦士が荷物持ちとして俺たちの修行に寄生しやがって!俺たちの取り分減るの!わかる?
そ、それはだって!最初に相談して!
だから予想よりも働けてねええって言ってんの!
そんなはずありません!
いつも薬品は常備してるし。回復も食料も最大限サポートできてるはずです!
ああ、それできて当たり前。その程度で威張られても話になんないの!
そ、そんなめちゃくちゃな・・・。
てわけで明日から来なくていいから。
クビにだけはしないでください!
しらねーよ!
クリスの突き飛ばしがジャンを突き飛ばす
うあ!
ジャンは尻もちをついて倒れた
じゃあな!
そ、そんな・・・。
ジャンは絶望した顔で立ち上がると肩を落としてトボトボと歩いて行ってしまう
二度と戻って来るな!あ、ここの飯代はきっちり払ってけよな!ツケとくから!あはははははははははは!あははははははははは!あはははははははははは!
冒険者クリスとその仲間たちの笑い声が響き渡った。
私は水を飲み終えるとそっ、と店を後にした。
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数日後
街をパトロールしているとジャンと名乗っていた男が路上で座り込んでいるのを見つけた。
彼のひとりごとが聞こえてくる
うう、うう・・・仕事を探しても見つからない。貯金も残り少ない。明日からどうすればいいんだ。
嘆き悲しむ彼を哀れに思った
声をかけてみるか。
もし、ジャンさん?
少しやつれた顔でこちらを見上げてくる。
あ、あなたは?どうして俺の名前を
私は騎士フレイル。明日の宿もないご様子。私の家に来ますか?
よろしいのですか?
手狭ですがそれでよろしければ
ジャンさんは泥に汚れるのも気にせず膝を付くと
あ、ありがとうございます!騎士様!
そう言って頭を下げた
もう日も暮れそうな時間になる
一日の仕事を終えて
家の玄関前まで来ると
ささ、中へどうぞ。
おじゃまします。
中へと招き入れた。
家のアルコールランプに火を灯し
燕麦を入れた木の器にミルクを入れ食卓に置いていく
神に祈りを捧げていると彼は原理主義者だとわかった。
この国のエイレースケイアには原理主義と近代主義が存在する。
同じ神を信仰しながら聖典に対する解釈が違うのだ。
いわく彼ら原理主義は嗜好品の一切を食べない。タバコは吸わない。酒は飲まない。女は決められた聖夜にしか抱かない。
治癒のための聖法を扱っていいのは神官のみ。
そうした厳しい戒律の中で生きているのだ。
夕食を飲みながら彼の話を聞くと
クリスの元を去った戦士兼、荷物持ちのジャンさんの名は冒険者の間に知れ渡るようになった。
あの飛ぶ鳥を落とす勢いのクリスから追放された。
その事実は彼を追い詰めた。
ジャンさんが声をかけたパーティーはことごとく思ったことだろ。
あいつは何か問題があるのだと
あぁ、おいしい。数日ぶりのご飯です。おいしい。
ジャンさんは涙ながらに燕麦を食べる
本当に、ありがとうございます。ありがとうございます。
まだまだありますから。
それから寝る
次の日
可もなく不可もなく。というわけにはいかないものの
朝ごはんできましたよ。
ああ!これは申し訳ない。宿までお貸ししていただいた上に朝食まで!
いえ、お気になさらず。さあ、食べましょう。
神に祈りを捧げ、朝食を食べる。
他人と食卓を囲む楽しいことだ。
いつもより燕麦がおいしく感じる。
剣を手にする。
さて、私は出ます。ジャンさんはご自由に、日暮れには帰ります。
待ってください!私も出ます!
二人で家を出る
それからひとり衛兵詰め所に向かい
街のパトロールを開始、数時間後、ジャンさんを見かけた。
どうやらあのあと街に出てまた仕事でも探しているのだろうか。
おや?
ジャンさんがあとをつけているのは追放されたはずのクリスのパーティーだった
道端で膝を付いて頼み込んでいる。
クリス!頼む!俺をまたパーティーに入れてくれ!
くどいぞ!お前はクビだと言ったはずだ
そこを何とか!
クリスは不快そうに悩んだあとニヤリと笑って言った
・・・だったらいいぜ。それならこれから森に行くからついて来い。
あ、ありがとうございます!
ジャンさんがあとをついていく姿を見た。
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それから数時間後、帰宅して夕飯の調理をしているも、ジャンさんが一向に帰って来ない。
ふと、昼間のやり取りを思い出す。
もしかしてジャンさん!
大急ぎで森に向かう。
夕暮れ時、森の中はもう1時間もすれば完全に日が落ちるだろうか。
ジャンさーん!ジャンさーん!
暗がりの中に火を見つける。
もしかしてと思い近寄ってみると
ジャンさんが両手を縛られて木からつるされていた。
ジャンさん!
その周囲には2mの肉食ブタたちが徘徊している。
口の回りを真っ赤に染めて、ジャンさんの足を引きちぎるように食べていた。
貴様たち!
即座に抜刀、
はあ!
ブヒイイイイイイイイイイイイイイイイイイイ!
ブタを両断する
でや!
さらにもう一頭、ぶっ叩斬る。
ブヒイイイイイイイイイイイイイイイイイイイ!
ブタは片付けた。
大丈夫ですか!しっかりしてください!
ジャンさんを下ろすと足は食べ残しのようにボロボロになっていた。
ああ、フレイルさん。
へへ、どうしても戻りたくてクリスさんに頼み込んだら吊るされてさ。野性の動物のエサだって。ひでえ、やつらだよ。ははっ!
しゃべらないで!ものすごい出血だ!
けどよ。俺・・・俺・・・悔しいよおお・・・悔しいよおお・・・。
そういいの残してジャンさんは倒れた
ジャンさん!
息はしている。気を失ったようだ。しかし危険な状態だ
死なせるものか!
私はジャンさん背負うと街を目指した。険しい道をまっすぐに走ると雨が降り注いで来た。
こんなときに!
ジャンさんとは会って間もない。
友人と呼ぶのにもまだまだ希薄な関係性だ。
それでも理不尽な死にかたをしてほしくなかった。
自分自身理不尽なできごとに対する痛みがわかるからこそ誰かに理不尽な想いをしてほしくない。
森が目の前に立ちはだかる。
行く手をさえぎろうと生い茂っていた。
うわぁ!
泥が足下をすくい転げ落ちる。鎧が泥まみれになった。
こ、このくらい・・・うぉおぉぉぉぉぉぉ!
泥が雨が林が行く手をさえぎった。
あやうく遭難しかけながら何とか森を出ると街が見えた。
ジャンさん!もうすぐだ!
急いで街の中へ入る。
お、おい!フレイル!その人は!
門番の衛兵は顔見知りだ。
速く教会へ!
待ってろ!すぐに門を開ける!
この世界には病院はない。
治癒聖法が使える聖法使いは希少で基本は教会にいる神官に頼みに行くしかない。
馬を駆けすぐに教会へと飛び込む
大理石の階段を駆け上がりながら
台座の上に待機する神官たちに叫ぶ
彼を助けてください!
神官たちがやってくると手を貸してくれる。
3人で台座の上に彼を乗せると聖法による治癒が始まった。
これで何とか持ちこたえてくれるだろうか。
片をつけねば。
私の剣を握る手に力がこもっていた。
さぞ無念だったでしょう。
あなたの無念、私が引き受けよう。
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・
・
雨が降っていた
クリスは仲間たちと大笑いしていた。
あはははははははははは!
あいつ最高だったぜ。
死にたくないって泣いてたよね!はははははは!
死ぬわけねええだろ!荷物持ちが寄生してるのが悪いんだよ!
どうせ、明日には誰かが見つけるし。いいきみだ!
あはははははははははは!
あはははははははははは!
あはははははははははは!
ふう~、そろそろ宿に戻るか。
7人は宿屋へと入るとベッドの上に飛び込んだ。
ああ~、気持ちよく酔ってるぜええ~。
酔いも回り。部屋の明かりを消すと
ぐうう~。
寝息が聞こえてくる。
薄暗い部屋に
グザ!
ぶああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!
悲鳴が轟いた
な、なんだ!なんだ!なんだ!
どうした!
跳び起きたクリスたちが燭台に火をつける
薄ぼんやりした闇の中で目にしたのは聖法使いが寝ているベッドの真下から突き出た剣だった。
う、うわあああああああああああああああああああああ!
魔法使いが尻もちをつく
剣が聖法使いの体を貫通している。
ギギ、ギギ、と音を立て
ベッドがゆっくり持ち上がり、ひっくり返される。
ベッドの下から血まみれの鎧の騎士が現れた。
純白の鎧が血に染まっている
我が名は清廉騎士、断罪者なり。
て、てめえええええええええええ!
武闘家が殴りかかって来る
鋭い右拳を鎧でガード
ぐえええ!
膝蹴りを叩き込むと胴体が宙を浮いた
はあ!
すかさず右に一閃、胴体を斬り裂く。
女武闘家だったが容赦はない。
返り血が降り注いだ。
アイリス!
おそらく武闘家の名を叫ぶリーダーのクリス
おおおおおおおおおおおおおお!
無理な姿勢で剣を振るうと剣がクリスの頭の横の壁に剣が刺さった。
避けたかあああああ!
残すはクリス、商人、吟遊詩人、傭兵の4人だ
わ、わああああああああああああああああああああああああ!
やつらは転びながらドタバタと逃げ出していく
足で壁を蹴り剣を引き抜く
待てえええええええええええええええええ!
・
・
・
・
・
・
「「わああああああああああああああああああああああああああ!」」
夜、街を歩いていた人々が目にしたのは
男と女たちが駆けてくる姿とそれを追って全身血だらけの鬼のような騎士が追いかけて来る姿だった。
クリスは逃げる途中、いくつもの人々とすれ違った。
ひいいいい!
な、なんだあれええええ!
悲鳴がいくつもあがる
待てええええええええええええええええ!
体のすぐ横にあったタルが一撃でバラバラに粉砕される。
わああああああああああああああああああああ!
悲鳴をあげ一心不乱に街の中ジグザグに逃げていく。
振り返れば騎士はなおも追って来る
クリスが叫ぶ
一度わかれるぞ!群れていると狙われる!
わ、わかったわ!
西の宿屋の前で落ち合おう!
みんな生きて・・・
ザシュー!
空から降りて来た血濡れの騎士が吟遊詩人の上半身を串刺しにする
鮮血が宙を舞うと青い二つの目がブォン!と光りこちらを見ていた
逃げろおおおおおおおおおおおおおおおお!
全員同じ方向に逃げていく
馬鹿!全員同じ方向に逃げてどうするんだよ!
傭兵が剣を構えて叫ぶ
お前たちはいけ!
よせ!ゼス!
クリス!もうダメだ!行こう!
しかたなくクリスと商人が逃げていく
立ちはだかる傭兵は手を組み、エイレースケイアの主神へと祈りをささげる。
主、パリョ・テオスよ。俺に力を!
剣を手に構えた
傭兵が叫ぶ
うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!
傭兵の剣を剣で叩き折ると傭兵の体が上下真っ二つに両断される
じゅばーーーーー!
血が雨となって降り注ぐ
そんな!あのゼスが負けた!
あっ!
ゴロン、商人が転ぶ
ま、待ってえええ!クリスうううううううううううううう!
クリスは仲間を置き去りにして逃げていく
商人の背後に死が迫る
か、金ならやる!ほら!
硬貨の詰まった麻袋からコインを差し出して来る
黄金の輝きが目をくらませる
はあ!
×字に八つ裂きにする
ぎゃああああああああああああああああああああああああああああ!
息絶えた
・
・
・
・
・
・
も、もう!許してくれええええ!
生きたい。生きたい。生きたい。
そう強く思った。
広場に出ると人がごったがえしていた。
中央では噴水が水しぶきをあげている
しめた!人ごみだ!これにまぎれれば!
こんな時間だが。運よく人が行きかっている。
一気に駆け抜けた
噴水の前まで来て座る。
人ごみで溢れている
人が俺を隠してくれるはずだ
追って来る気配はない。
このままここでやりすごしてタイミングを見て街を出よう
人がこんな夜更けに集まっている。
これは祭りか?
人々が笑顔で出店を楽しんでいた。
死を前にした緊張感と人々の笑顔と団らんとした雰囲気が奇妙な安堵感を覚えさせる。
は、はははっ。悪い冗談だ。
油断したそのときだった
ザバアー!
水の音がして振り返ると噴水の中から血濡れの騎士が姿を現す。
グサ!
胸に強烈な異物感を覚える。
見れば、鉄の剣が胸を貫いていた。
体が宙に浮かんでいき
きゃああああああああああああああああああああああ!
どこかから悲鳴が響き渡るがそれどころではない。
胸の剣が邪魔して後ろを振り返ることなどできない
痛みと懺悔の気持ちでいっぱいになりながら空を見上げた
背中で血染めの騎士は言った。
罪を償う時が来た。
はあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!
騎士のうなり声が聞こえて来る
騎士の握る剣がわずかに震え力がこもっていく気がした。
幻想的な光景だった。
体中に優しさを感じさせる黄色い光があふれ、それは次第にすべてを浄化する白い光へと変換していく。
貴様たちはその礼を欠き。やりすぎた。追放された者の無念を知れ!
光の剣、シャイニング・スラッシュ!
光の本流が天を突き闇を打ち払う。
きゃあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!
誰かの悲鳴が響き
広場に臓物がぶちまけられると噴水が血の色一色に染まった。
・
・
・
・
・
・
最近、どこかの吟遊詩人が歌を作りそれが流行った
純白の騎士が罪人を裁いて回っている歌だ。
その歌には恐怖と制裁をイメージした歌詞が多分に含まれているそうだ
心当たりがあるとすればあのときの吟遊詩人が一命を取り留めたとしか思えない。
そのせいで私の知名度がグンと上がった。
ジャンさんが全快した
仕事も見つかり
たまに集まって談笑する。
冒険者を継続してひとりで頑張るそうだ。
たまに手伝う約束をしたらとても感謝していた。
フレイルさん、ありがとう。
そう言った笑顔が脳裏に焼き付く。
私はその気持ちのいい思い出を何度も頭の中で再生しながらこれからを生きていくのだろう。




