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17 王国の終わり霧の中の怪物

まる一日が過ぎた

昨日の革命騒ぎなどどうなったのかまるでわからないが外は妙に静かだった

外に出ると人の気配がない

謎の白い煙の中を歩いていくといくつもの死体が転がっていた

ただどの死体もはらわたを食い荒らされた跡がある

臓器が飛び出している

それでも警戒しながら先に進むと

武器屋が見えた

人がいるだろうか?

武器屋に入店すると

人の気配はまったくない。

無音の中、見なれた木の床に点々と血の跡が残り

中央の棚に陳列された剣が散乱している

店主は死んだのだろうか?

何か武器になるものはないか?

周囲を探していると

カウンターの裏で小さくうずくまる人影を見つけた

君、大丈夫か?

よく見ると人影はアーリーだった

アーリーの顔は血だらけだ。本人の血ではない。誰かの返り血だ。

かなり怯えているようだ。

アーリー!

ロイド!

お互いに無事を確かめ合うように抱きしめ合う

生きててくれたか

アーリーはガクガクと震えながら泣きそうな声で言った

怖かったぁ・・・。

僕もだ

ここは危ない。行こう。

ダメ。やつらが近くにいるぅ・・・。

キシャーーーー!

鳴き声に振り返ると裏口の扉を叩き割って見たこともない怪物が威嚇してきた

いやあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!

アーリーが絶叫する

キシャーーーー!

おおいかぶさるようにジャンプしてくる

はあ!

剣を突き出し迎え撃つ

串刺しにすると緑の血液が飛び散った

キシャーーーー!

ロイド!

来るな!

はあああ!

剣を上に振り抜き脚を両断すると怪物が血を噴き散らしながら片足ではってくる

はあ!

首を跳ねなんとか地に沈めた

キシャーーーー!

別の怪物がいるのかまだ声がする

走るぞ!

アーリーの手をつかみ店から走り出す

5000体は切り殺しただろうか。

一晩中剣を振り続けた。

修道院に向かって走る。

ここからでも見えるほどに怪物たちが修道院に群がっていた

ざっ、と見て50体はいる

黒い粘性の体を持つ怪物たちだ

怪物は複数種存在するようでその個体によって特徴が違う

消えろ!

目の前の怪物たちを次々と斬り捨て、さらに怪物を片手でつかみ投げ飛ばす

有に2mはある巨体が宙を舞い、建物の壁に突き刺さった

シスタードミ!

一気に扉を開け放つと

怪物たちが子供たちを・・・シスタードミを襲っていた

静かな建物の中へ入ると

アーリーはおびえ切っているのかガクガクと震えている

抱き寄せる

安心して、僕が君を守る。

そう伝えながら心のどこかでミレイを守れなかったくせに他の人を守るだなんて、いまさら何をとも思った。

この建物なら侵入される心配もない。たぶん。

扉をわずかに開けると隙間から外の様子をうかがう

8本脚の怪物が人間を丸かじりにしていた

人間に似ているが人間ではない何かだ。

他にも異形の怪物たちがうろついてる

外は化け物だらけだ。

ここで救助を待ったほうがいい。

アーリーは

うんうん、と首を上下に振るだけで必死のようだ。

とりあえずアーリーを床の上から椅子のに上に座るよう案内する。

アーリーは震えながらも手を引かれて椅子に座った。

僕も椅子に座る

お互い向かい合って息を潜めた。

おしゃべりでもして気をまぎらせてやりたかったが、怪物たちは音を聞いて寄って来るだろう。

そう言えばアーリーの顔は血に濡れたままだ

建物内は殺風景でろくに布がない。

水も外の井戸から組んで来なければならない。

しかたがないか。

上着を脱いでそれを差し出す

顔を拭くといい。

アーリーは聞こえているはずなのに何も言わずただ震えている。

怯え切ってしまっており顔の血をぬぐうどころではないようだ。

しかたがないので隣に移動して顔を拭いてやる。

こうして手を握っていれば君は大丈夫だ。僕がそばにいる。

アーリーの目がくるりと僕を見てた。

僕もアーリーを抱きしめると甘えるように寄り添って来た

十数時間が経過した。

空腹とのどの渇きを覚え始める。

それでも耐えるしかない。

窓の外を見ればいまだ多種多様な化け物たちが闊歩していた

ギイイイイーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!

醜い怪物共め。

小さな声で悪態をつく

アーリーは長い時間が経過したからかさすがに怯えが抑えられてきたようだ。

いまごろ王都のほうでも騎士たちが動いている頃だ。大丈夫だ。

そ、そうなの?

ああ、もちろんだ

それとも自分のように家から出られなくなっているのだろうか

どうする?おそらくほとんどの騎士たちは城の方にいるはずだ。

突き進み合流したほうがいいだろうか?

アーリーが不安そうな顔をしている。

大丈夫だ。

不安をできるだけ顔に出さないよう励まし続けた

日も暮れる。

アーリーに声をかける。

そろそろ寝よう。

ええ

簡素なわらの床の上にアーリーが横になると自然と唇を重ねた

僕が見張ってるから君は寝てていい

アーリーは数秒躊躇したあとで、ありがとう。

そう言って眠りにつく

あの怪物たち、どれも怪物になり果てた原理の聖女に似ていた。

死に際に聖女はこう言った

この世界に死を、とそれは僕に世界を滅ぼさせるためだったのではないだろうか?

まるで聖女の、あの怪物の子供のような存在に見える。

自らの命を引き換えに世界を滅ぼし

このまま国が滅びれば大勢が死ぬ。

ははっ!

思わず笑ってしまう。

自分が世界を、この国を滅ぼすきっかけを作り出したのだから。

ミレイを助けられず。こんなことまでして、いよいよもって救いがない。

いまにして思えば清廉騎士は聖女を斬るなと言っていた。やつはこのことを理解していたのかもしれない。


ロイド・・・。

横を見るとアーリーがいた

どうした?

アーリーは手を握ると言った

少し、休んだほうがいいよ。

お互いの体温を感じると心細い気持ちも柔らかくなっていった

一晩がすぎた頃、

隣では服を脱いだアーリーが腕の中で寝ていた。

アーリーが目を覚ます

ロイド、おはよう。

おはよう。

つがいの他愛無いじゃれ合いを済ませ

脱ぎ捨てた衣服を着る

食べ物を取って来る。

君はここを動かないで。

待って

チュ!とキスをして

行って来る

ロイドは剣を手に家を出た

霧の中を進んでいくと大量の化け物がふらふらと歩いている

メゲーーーーー!

声をあげる化け物

いまなら誰も見ていない

大急ぎで目の前の家まで走る

メゲーーーー!

気が付いた化け物が走って来る

くっ!

間に合え!

家の扉に飛び込むのと化け物が体当たりするのはほぼ同時だった

メゲーーー!

建物の中にまで化け物たちがいた

人を食っている

くそおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!

思いっきり剣を振るい、串刺し、両断して化け物たちを一掃する

血にまみれたテーブルの上で比較的気持ち悪くなさそうな血に濡れていない場所に座る

はあ・・・はあ・・・はあ・・・。

疲れた。

建物の中を探すとじゃがいもを見つけた

よし、

ポケットに押し込めるだけ押し込む

そっ、と扉を開けると化け物たちはいない。

いまのうちに

急いで外に出ると家まで走る

バッ、と扉に入った

大丈夫?

大丈夫だ。

取ってきたジャガイモ二人で食べた。

空腹も脱した。

このままここにいてもしかたがない城に向かおうと思う

わかった。

君は・・・

ここに置いていくかそれとも連れて行くか

長く悩んでいると

死ぬときはあなたと一緒がいい!

そう言って抱き着かれた

彼女の体温を感じ取る

わかった。

優しくそう語り掛けてあげると頬を赤くしてアーリーは僕を見た

お互い最後になるかもしれないキスを時間をかけてした。

外は雨が降っていた

準備を済ませ扉を開ける。

化け物たちはいないようだ。

アーリー、僕の後ろから離れないで

わ、わかったわ!

恐る恐る霧の向こうへと進んでいくと

黒い血が大量にぶちまけられ、辺り一面化け物の死骸だらけだった

こ、これは・・・。

化け物たちに会うこともなく。道を進んで城まで向かっていくと広場に出た

大量の化け物の死体と血が飛び散っていた

その中央に化け物に囲まれながら一心不乱に剣を振るう白い騎士がいた

清廉騎士・・・。

はあ!はあ!はあ!はあ!はあ!はあ!はあ!はあ!はあ!はあ!はあ!はあ!はあ!はあ!はあ!はあ!はあ!はあ!はあ!はあ!はあ!はあ!

まるで自分の中の邪念を振り払うかのような、鬼の形相で化け物たちを斬り続けている。

これが人の動きか!

畏怖すら覚えるほどの死体の山に思わず息を呑む

い、いまは騎士たちと合流するのが先だ。

先を急ぐと大勢の騎士たちが化け物たちと戦っていた

アーリーの手を引きながら声をかける

みんな!

ロイドか!みんな!ロイドが戻ったぞ!

「「おおおおお!」」

加勢し次々と怪物たちを斬り捨てていく。

昨日まで革命で殺し合っていたとは言え、この状況だ。四の五の言っている余裕はなく。

戦力としてみなされているのだろう。だがどこかそれだけではない信頼感のようなものも見えた。強さに対する期待のようなものだ。

アーリー、君は城の中へ!

わかった。

帰ってきてよ!

そう言ってキスをする

約束するさ。

言葉を交わしお互いに別れる。

6時間が経過したころ、さすがに終わらない猛攻を前に息切れを覚え始める。

くっ、手が痺れる。いったい、いつ終わるんだ・・・。

激しい戦いの中、徐々に消耗していく仲間の騎士たち

最初、200人いた騎士団はすでに半数以上が食い殺され

残すところ70人を切った。

周囲の仲間たちが次々と怪物にやられていく。戦線が崩れるのはもうすぐだ

敵の軍団が視界いっぱいにうごめいている

でやあああああああああああああ!

怪物の胴体を両断すると

はあ・・・はあ・・・はあ・・・。

肩で息をしてしまう

さすがに限界だった。

もう腕が上がらない。剣が重すぎる。

こ、ここまでなのか・・・。

人々が避難している城壁が燃え上がっていくのが見えた

壁には怪物たちが取りついている

アーリー!

たまらず彼女の名を叫び

急いで城壁のほうに向かうと建物の中からアーリーが駆け出してきた

ロイド!

アーリー!

互いに抱き合う

騎士たちの怒声と悲鳴、剣の金属音、怪物たちの鳴き声でかき消されないよう叫んだ

ロイドは兜を上げて素顔で言った

アーリー!君は僕を受け止めてくれた。愛してる。君を心の底から愛してる!誰よりも!

ロイド・・・ロイド!私たち生まれ変わってもまた会えるよね!

お互い口づけを交わした

ひときわ大きな怪物が迫る

やられる!

そう思ったときだった

怪物が真っ二つに両断され地面にズシリと沈む

やつが現れた

清廉騎士。

圧倒的な剣術で目の前の怪物たちを次々と殺害していく。

やつのおかげで周囲の怪物たちは全滅したが、遠くから新たな怪物たちの群れが押し寄せようとしていた

もうこの男しか頼れない。

そう覚悟すると自然と膝をついてはいつくばった

助けてくれ・・・

涙がこみあげて来る。こんな頼み死んでもしたくなかった。

相手は姉を殺した憎き仇、けれどアーリーを、彼女を守ってくれるのはこの男だけだと理解できてしまっていたからだ

ロイドは言った

清廉騎士、お前を憎んでいた。でもお前にしか何とかできないんだ!姉のことは・・・許せない。でもいまだけは恥を忍んで頼む!アーリーを助けてくれ!

そう言ってロイドは頭を下げた

私は疲れているのか、言葉がぼんやりと聞こえる。

かつて自身が姉を助けるためウエイダーにすがったように今ロイドに助けてほしいとすがられている。

応えなければならない義務感とどうしようもない虚無感があった。

彼に語るでもなく独白する

修道院が・・・襲われました。

え?

ロイドが戸惑いの声をあげた

思い出すのは目の前に広がる子供たちの無残な光景、それをむさぼる怪物たち、血を流すシスタードミの亡骸だった

・・・子供たちを・・・彼女を・・・助けられなかった。もはや私には何もない。生き甲斐(がい)も、生きる意志(いし)も、生きた(あかし)

ロイドは必死に説得する

お願いだ。生きてくれ!お前に死なれたら俺たちは!

生きる?生きてまた空虚(くうきょ)な善意を顔に張り付けて生きて行けと?

ぼ・・・僕だって!大事な人を失った!それもお前のせいでだ!ミレイだって!僕の大事な人だったんだ!

こんなことを言うのはおかしな話だがお前の気持ちはわかる!それでも僕たちは生きなければいけないんだ!

女がロイドの手を握り、ロイドが女の手をぎゅ、っと握り返したのを私は見逃さなかった

なんですか?その薄っぺらい言葉は、ミレイさんの代わりの女を見つけて心は癒された。彼女のことはもう忘れた。そういうことですか?

ち、違う!これはそんなことでは!

ない。と言い切れますか?

ロイドが顔を真っ青にしていく

自覚があるようだ

これは人間であるならば、許さなれなければならない。人の業だ。

最愛の人を忘れ、舌の根も乾かないうちに新たな女を(めと)り、ある種、死者を冒涜(ぼうとく)してでも幸せにならなければ生きていられない

哀れな者の罪だ。

誰か責められるものがいるとすればその人は愛した人を失った喪失感(そうしつかん)を知らない人なのだろう。

そう、許されていいのだ。何であろうとこの男には救いがあり、救いが必要で、それがどれだけ醜くとも、それが人間なのだ。

人は弱く。傷つき、追い詰められれば誰かにすがりたくなる。

そうだ。ロイドあなたは間違ってはいない。

同時にこうも思う。正しくもないのだと

では亡くなったミレイさんはどうなるのか、人を慈しむことが必ずしも美しくはないのだと今、理解する。

醜い。度し難いほどに醜い。二人の関係を単なる愛情と呼ぶには不純物が混ざりすぎている。

とても醜く、エゴにまみれ、穢れを含んだ、醜悪な妄念のようなものだ。

人の醜さに絶望する。

けれど(うらや)ましく(ねた)ましくもある。

理解できてしまうことが苦痛だ。人間を激しく嫌悪しながら、それを抜け出すことができない。呪いのようにすら思える。

この身を捨てて魂だけの存在になりたいほどだ。

私は人間を守ってきたつもりだ。いまその人間が邪悪な証がここにいる。彼がそれだ。

では、いったい今、私は何を守っているのか。

あなたはいいですね。どれだけ落ちぶれようとどれだけ傷つこうと頑張ってさえいれば最後には必ず救われる。自分を愛してくれる人が現れる。

私にはそれすらない。

そうシスタードミ、奇跡のような存在だった彼女の代わりになる人などこの先永遠に現れないだろう。

ロイドが叫ぶ

姉を殺しておいて、よくもそんなことが言えるな!不幸自慢かよ!

いっそ事の真相をぶちまけてやろうかと、ギリギリの良心で踏みとどまった。ロイドには復讐心が必要だからだ。

真実を告げれば彼は気持ちの後ろ盾を失う。立ち直れなくなる。

いや、ひょっとしたら今なら立ち直れるかもしれないが

なにより正義に生きると誓ったから黙っておく。

黙っていることは自分が信じた信念を裏切らないためにもなるからだ。

ロイドは言った

お、お前には・・・義務!そうだ!義務があるはずだ!それだけの力があるなら!みんなを守れるはずだ!

みんなを守ることを口実にして自分と女を守りたいだけなのはすぐに理解できた。

この醜悪な男の中で誰かを守りたいと思う想い、それだけが希望と呼べるものだった。

きっと私はこの希望を守ればいいのだ。

この軽薄で愚かで薄っぺらいカスのような踏みつぶせばかき消えてしまうような希望を、自らの命を盾にして後生大事に崇めながら。

ふと、気が付き、それを言葉にする

義務・・・あなた、フレイルを見捨てたじゃないですか。

な・・・何・・・?

あなたにはフレイルに対するいじめをやめさせる力があった。なのにあなたは彼がいじめられていたときウエイダーから守らなかった。そんなあなたが私に義務を説くと?

ロイドは口ごもってしまう

それは・・・いまは関係ないだろ・・・。

関係あります。

そんなこと言われたって!僕には関係ない!彼とウエイダーの問題じゃないか!

いいえ、違います。わかっているのでしょう?それともようやくわかりましたか?そう、力には責任がともなうものです。

その言葉を聞いた瞬間、ロイドはひどく打ちのめされた顔をしていた。

ようやく自覚できたのだ。

自らの思慮の浅はかさを、力がある者が力に甘んじるのではなく。力のない者を助ける。

そんな当たり前のことをしてこなかったのだ。

フレイルは言った

力ある者は責任を果たす義務がある。力を持ちながら責任を果たさない。あなたは偽物だ。だから私は戦う。偽物の勇者の代わりに本当の勇者として。

すっ、と音もなく心を刺すような言葉がロイドを射抜く。

それでも認めたくなかった。

だってそれはひょっとしたらカルラもベンノもヨーアキムもセロンもミレイも全部自分が原因で死んだことを意味していたからだ。

たしかに自分の無力が悪かった部分もあるかもしれないが、それは全面的な話ではなくあくまで副次的なものだ。本当に悪いのは聖女と国王だ。

だが今の言葉は決定的に違う。

自分がへキサセクスや清廉騎士に対し復讐に溺れず。力に責任を持ち思慮深く王国騎士長ギエーリの策略を見破り、冷静に迅速に行動さえしていれば結果は違ったかもしれないからだ。

ロイドはそのことに感づいてしまう。

しかし、強く思う。認めたくないと、だからやぶれかぶれで言い訳をひねり出した

自分の中でこれは自分に対する言い訳だと自覚しながら言わずにはいられなかったのだ

そんな!そんなの!たしたことない!それくらい誰でもやってる!普通のことだ!どこにでもある話だろ!ふざけんな!助けろよぉ!

その一言が私の怒りをあふれさせた

それくらい誰でもやってる普通のこと?だと・・・。

虐げられたものがどれだけ耐え!

苦しんでいるか!

それをまったく理解せず!

あざ笑い!

侮辱するような言葉を!

あなたは!

いま!

言ったのだ!

そう、それがあなたの本音だ。

あなたのような人に虐げられる者の気持ちがわかるはずがない!

毎日、悔しくて、苦しくて、泣きたくても・・・誰も助けてなんてくれない!

所詮(しょせん)は他人ごとでしかない!

他人は他人でしかない!

誰も助けてなんてくれないんだ!

そうだ。だから私は・・・この痛みを知るものを裏切らない。

助けたいと思ったんだ!

私はすべてを失った。

ただ一つだけ失っていないものがある。

そう正義だ!

彼方(かなた)から押し寄せる奪う者たちを見た。

異形の怪物たち、人から奪う者、理不尽の象徴、激しく憎むべき敵。

恨みも嫉妬も憎しみもすべて善意に変えて正義で凪ぎ払ってやる!

握りしめる剣から、見ていると心が温かくなるような優しい黄色い光が発光し、

次第にそれは正義を成すためにすべてを賭した残虐非道な白い光へと変化していった。

両手で剣をつかみ胸の前に持ってくるとピンと突き立てた。

それに呼応して鎧の体から白い闘気が交差して巻き上がり、鋭い二つの目が青く光った。

はあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!

腹の底から呼吸することで、光を極限まで高めていく

あらゆる理不尽を突き返そうと圧倒的な白い光が剣のつかから剣先まで充満し最大の力を収束させていく!

光の剣、シャイニング・スラッシュ!

膨大な光が万を超える怪物たちを両断し、壊滅させていく。

ギシャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!

無限とも思える肉の山を砕き浄化していく

光は王都すべてを照らした。

希望などという生易しい光ではない。

太陽すらも凌駕するほどに光輝いていく。

それでも剣を振り抜いた

はあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!

光の奔流は天を突き、闇を討ち払う

戦いは終わった。

何もない地にひとりの騎士を残して

その日、この世界を救った英雄の伝説が生まれた。

清廉騎士の伝説だ。

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