0 自分が嬉々として追放したくせに罪悪感を自覚せず幼馴染のあの子を使って追放させることで自分の罪の意識から逃れつつ手を汚さないようにしているあいつがいるが俺は絶対に許さない!
瑠璃色の乙女の異名を持つルナーナはとても可愛らしい人相をした人だ。
大きな目をしていて、あどけなく見え、一度は誰もが心を許してしまいそうな美少女
彼女は世界を救おうとする敬虔なエイレースケイアの信徒であり有名な女騎士
闇夜の森の中、ルナーナはたき火の燃えるキャンプで食事を取っていた。
「フレイルを・・・追放しようと思います。」
「「ええっ!」」
一同が席を立ちあがる!
誰もがついにこのときが来たか!と思った。
実力者でパーティーの中心人物、女ハンターのマストマが言った。
「ルナーナそれはいいぃーーことだ!」
マストマは内心フレイルを嫌っていた。
死んでしまえばいい!とすら思っていた。
マストマと対を成すパーティーの実力者、女ハンターのリシアも言った
「あいつを、ね・・・。」
リシアは内心フレイルを嫌っていた。
消えてほしい!とすら思っていた。
非情なまでの罵詈雑言をわめきたてるメンバーたちの中で一人だけ異を唱えるものがいた。
剣士ウエイダーだ。
「おいおい、ルナーナ、お前幼馴染だろ?さすがにそれは酷すぎるんじゃないか?」
ルナーナは口元の前に両手の指を組むと重苦しい表情で言った
「いえ・・・これからの戦いはより過酷なものになります・・・。現についこの間の王国での戦いで死にかけていた。」
ウエイダーが言った。
「敵は魔王10体が融合した魔王すら捕食する化け物だ。あいつも頑張ったんだぜ?」
ルナーナが言った
「あれは・・・私がカバーしたから何とかなった・・・本当に危なかった。」
マストマが言った
「本当にな・・・頑張ればいいとか思ってるんじゃないか?」
リシアが言った
「甘すぎよね。戦力にならない雑兵とかただの・・・いえ、人間以下?肉の壁?ははっ、」
ウエイダーは仲間たちをいさめる
「お前らさ・・・言いすぎだぜ?」
ルナーナは言った
「いままでも私たちの誰かがカバーしてきましたが、それも限界です。次に守り切れる保証などない。おまけに魔王城に近づくたびに魔物は強くなっていく。可哀想ですがフレイルのためを思うなら斬り捨てるのも優しさです。」
誰もがうなづく中、ウエイダーはルナーナを抱き寄せる
「ああ・・・。」
恥ずかしそうにルナーナが頬を赤く染める。
そう、ルナーナはウエイダーに恋をしていた。
フレイルを愛していたはずなのに最近フレイルに対して何だか気持ちが冷めて来たような気がする。
追放する辛辣なものいいは事務的に徹することで感情を配したフレイルに対するせめてもの情だった
ウエイダーはルナーナの耳元に口を近付けるとささやくように言った
「あんまり・・・フレイルを悪く言うなよ」
「う・・・うん・・・ウエイダーがそう言うなら・・・。」
媚びに媚び、ルナーナの表情は完全に恋する少女だった。
恥ずかしそうにもじもじと返事をする。
ウエイダーが好きで好きでたまらなかった。
13年前、かつて結婚を誓い合い、常に寝食を共にして育った姉弟で家族で恋人のような存在それがフレイルだ。
その幼馴染のフレイルよりもはるかにウエイダーのほうがたくましく、男らしくて、たまらなかった。
フレイル、私、出会ってしまったの。私、運命の人に出会ってしまったの・・・。
一方でウエイダーは冷静に考えていた。
ルナーナはフレイルより俺を愛しているようだ
ほくそ笑むウエイダーの向かいにフレイルが立っていた。
死相の出た。げっそりやつれた顔をしていた。
誰もがフレイルの存在に驚愕する。
「ふ、フレイル!いたの!」
ルナーナが言いよどむ
フレイルは聞いた
「なぜだルナーナ・・・俺を捨てるのか・・・。」
「そ、それは・・・そうよ・・・。」
そう言ってルナーナはウエイダーを抱きしめる
「・・・俺たちは幼馴染だった、この13年間、幼い頃の約束を果たせるようずっと努力してきたんだ。あの約束は嘘だったのか!」
ルナーナは困った顔で言った
「嘘じゃない!嘘なわけない!でも私気づいちゃったの!ウエイダーがたまらなく好きなの!愛してるの!」
そう言ってルナーナはウエイダーをさらに強く抱きしめた
「ウエイダー好き!大好き!」
そう言いながらぎゅっと抱き着く。一つの生命体かのように密着して強くウエイダーにからみついていた
俺は何を見ている?
これはルナーナなのか?
それはもはやルナーナではなかった。
ルナーナの皮膚をかぶった別人だった。
俺はすべての元凶を見た
「ウエイダーァァァーー!」
「な、何だよ。」
「とぼけなくてもいい!お前がすべて悪い!」
「は、はあああああああああああああああああ!」
ウエイダーが激怒する
俺は言った
「お前がすべての黒幕なんだろ!」
ウエイダーが言う
「はあ?意味わかんねえし!ちげえし!だったら言わせてもらうけどな!俺はルナーナから言われたんだ。お前が弱すぎるからお前を守るためにパーティーから追放しようって!お前らは互いに好き同士で俺は二人を応援していたからな!」
ルナーナが慌てて言った
「ウエイダー!それは言わないで!」
「いいや!この際だから言ってやるよ!」
言い合いを始めるウエイダーたち、俺はすかさず口をはさむ
「応援していた?ウエイダー、お前俺のこと嫌いだろ?パーティーの中で一番俺を追い出したがっているのはお前じゃないか!」
俺の指摘をウエイダーは目を大きく見開いて興奮しながら言い返す。
「ちげえよぉ!ルナーナはお前を守れない!お前が強くなるのを待てないってよぉぉ!」
ウエイダーはさらに罵倒を続ける。
「戦闘ができない弱い剣士!荷物持ちや!アイテム拾いくらいしか!使い道がない!いてもいなくても同じ!お前はそういうやつなんだよ!」
ウエイダーの言っていることは、はずれてはいない。
だが俺の中でそうではないと叫ぶ自分もいた。
「俺はそんな男じゃない!強い敵には必ず立ち向かい俺なりに戦った。戦力になれなくても後には必死について行ったはずだ!」
ウエイダーが叫ぶ
「だから守り切れねえって言ってんだろうが!」
俺も叫んだ
「守られるつもりはない!守ってもらうつもりもだ!死ぬときは死ぬ!落とし前は自分でつけるつもりだった!」
ウエイダーは怒りに任せまくしたてる
「ルナーナや俺たちに媚びてもいたよな!どうでもいいことまで気を使ってウザすぎんだよ!」
俺は言い返す
「媚びなかったらどうなったかこれを見ればわかるはずだ!」
俺が手をかざすと空中に映像が映し出される
「これは俺が聖法で作り出したもの、俺がルナーナたちに媚びなかった場合どうなるかを記憶にしたものだ。見てくれ、まだパーティーを結成して間もない頃4人で旅をしていた頃だ。山の中、マストマが重そうに荷物を持っている。俺はその横で楽そうに最新式の魔法の台に乗っていた。足の生えた四角い箱で、時速5kmしか出ない代物だが全自動で歩いてくれる台だ。魔法の台に荷物を山積みにして幸い一人分開いた席に座ることができたので、パーティー内で人一倍、体力がない俺が座ることなった。俺は景色を見てのんびりしていたがそんな俺を見ながらマストマは不満そうに言ったのさ。遊んでるならかわってよてな。それを聞いた俺は凍り付いた。自分の体力のなさに落ち度があるとはいえ、まさか信頼していた仲間からそんな風に思われているだなんて!罪悪感にうちのめされた俺は席を譲ったが。山を登れないだろと返された。次だ!また別のとき野営キャンプ中、リシアがかいがいしく料理を作っていた。いざ食べようとして皆が食べる中、いただきますと礼を言わずに皆が食事を食べ始めたんだ。それはパーティーの誰もが言わずとも信頼し合い、感謝は伝わっていると、そう思っていたからだ!だがリシアは俺が感謝を述べず一口食べた途端、他の者には何も言わず俺の方を心底不服そうに嫌そうな顔をして見ていた。まるで俺には食べる権利がないとでも言いたげに実際そう思っていたのだろう!それ以降、必ずいただきます。と言った!リシアの食事を食べても緊張で味がしなくなったように感じたんだ!次だ!ウエイダーがケガで動けなかったときウエイダーに頼まれて鍛冶屋に武器を研ぎに行った。若店主のご好意で刃先をいつもより鋭くしてもらった。でもお前は激怒していた!経験の未熟な若店主は鈍器と斬撃の属性を両立した武器を完全に鋭く研いでしまった結果、武器の属性は斬撃のみになり戦闘能力が格段に落ちて使い物にならなくなった。俺だって店主の好意で武器が鋭くなっているなんて知らなかったのにウエイダーは俺を責め罵倒し罵った。使えないクズだと、死ね!とさえ!俺は悪かったと思ってウエイダーに必死に謝罪したが、お前はこう思ったはずだ。俺がこれ以上お前の逆鱗に触れないよう謝罪していると、うわべだけの謝罪はいらないと決めつけて。決して許したりせず、ずっと責めていた。わかるか?ルナーナこそ悪く言わなかった。けれどそれ以外のすべてのメンバーが俺を嫌っていた!この世界のお前たちだって同じことを言い!同じことを思ったはずだ!口では対等な仲間だと言っておいて、誰もが言葉にせず態度で俺に媚びろと命じていた!言葉にしないことで、自分の手を汚さず、自分を強く気高い者と信じ、綺麗な人間だと思いたかったからだ!そういう無自覚な加害をお前たちは持っていたんだ!だがそれはいい。人間なら多かれ少なかれあることなのだろう。許容しよう。だが俺はお前たちと対等などではなかった。常にしいたげられていた。何が媚びるなだ!俺には媚びるしかなかったんだ!そうでなければ俺の居場所などとうになくなっていたではないか!」
ウエイダーは顔に青筋を浮かべて言った
「ああ、ああ!そうだよ!言いたいことはそれだけかよ!無能が!媚びろよ!媚び続けろよおおおお!」
俺は言った
「努力はしよう。だが、そこまで言われるいわれがどこにある!俺は冒険者だ!金のために働く傭兵稼業だ!味方にもなれば敵にもなる!そういう存在だ!隷属する存在などでは断じてない!」
ウエイダーが言った
「はあ!隷属しろなんて誰も言ってねーし!」
俺は言った
「そんなことではない!物言わぬお前たちの本質の問題だ!ウエイダー!いまお前が何を感じて思っているか一言一句当ててやろうか!」
ウエイダーは言った
「は、はあ?こいつ何言っちゃってんの?頭おかしいんじゃねえの!」
俺はウエイダーの言葉を聞きながら思った
やつの言葉などまるで聞く価値がない。
やつの言葉のすべては俺を罵倒し、言い負かし、ねじ伏せることだけに心血を注いでいることがわかりきっていたらかだ。
人間誰しも話し合えばわかり合える。
そう多くの人は親から学ぶだろう。
だがこの男に限ってそれは通用しない。
この男もこの男の親も人は話し合えばわかり合えるなど親から教えられて来なかったからだ。
人外。
自分のことを正常と思っている異常者が目の前にいた。
多くの経験から俺にはウエイダーの心が手に取るようにわかった。
ウエイダーの心を声に出して読み上げていく。
「俺たちがお前を見下していたのは事実だ。お前が俺たちに何かを思うのは当然のことだ。けどお前が俺と対等だと?ふざけんな!そんなわけねえだろ!お前が俺に口答えできる立場か?能力がゴミのカスがさんざん足を引っ張りやがって!てめえの尻拭いをしているのは俺たちだ!自分の無能がまねいた結果だろうが!てめえが悪いんだ!あんましイキってんじゃねえぞ?てめえ調子に乗ってると殺すぞ!」
ウエイダーはぐぐっ、と口ごもり怒りの形相を浮かべつつ後ずさる。
一言一句、図星だからだ。
俺は言った。
「信頼も、仲間も、俺に取っては突き詰めればすべて嘘、偽りだ。ルナーナだけが俺を見てくれていた。」
ウエイダーが叫ぶ
「てめえが悪いんだろうが!自業自得だろ!」
俺の心が怒りに染まると俺の持つ剣に絶大な力がこもる
「お前からルナーナを取り戻す」
刺し違えてでもウエイダーをぶち殺してやりたい。その怒りをすべて力に変えていく
全生命エネルギーが剣に宿っていくと、刀身を絶断の剣へと変貌させた。
「俺にはルナーナだけだった!その俺からルナーナを奪ったお前が正しいだと!どこまで人を見下し馬鹿にすれば気が済むんだ!ふざけるなぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!お前が俺に何をしたかよく考えろ!人が越えてはならない一線を踏み越えて!俺の心を土足で踏み荒らした加害者が!被害者のような顔をするなぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
全力で剣を振るうとウエイダーを八つ裂きに斬り裂く
「ごはああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ
おああああああああああああああああああ!」
豪快に剣を振り抜きマストマの胴体を両断し、
「ぎいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!」
続いてリシアを斜めに引き裂き、
「ぎょええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええ!」
最後にルナーナに剣を向け
「やめ・・・!」
「死ね!ルナーナあああああああああああああああああああああああああああああ!」
ルナーナの顔面をぶった斬る
「ぼええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええ!」
ルナーナの絶叫が響き渡り。
ルナーナの亡骸は粉みじんに消滅した
ウエイダーの支配からルナーナは解き放たれた。
俺は涙を流して彼女の名を呼んだ。
「愛してた・・・ルナーナ。」
むなしいことだとわかっていても月を見上げてルナーナのことを想った。




