第7話:畑仕事と剣術鍛錬の日々
シャドウウルフとの戦いを乗り越えた神崎守。初めての実戦を経験し、スキルの成長を実感したものの、自分の未熟さも痛感した。もっと強くなるため、村での畑仕事と剣術鍛錬を並行して過ごす日々が始まる――。
「守君、今日もよろしくね!」
朝早く、畑に立った守は村人たちに元気に挨拶する。
「おはようございます!今日も頑張ります!」
既に慣れた手つきで鍬を握り、畑の耕作を始める守。以前は重くて思うように扱えなかった鍬も、今ではしっかりと扱えるようになっている。
「守君、本当に上達したよねぇ。初めて来た時なんて鍬が土に刺さらなくて困ってたのに。」
村のおばさんが笑いながら声をかける。
「いや、最初は本当にダメダメでしたよね。でも最近は楽しくなってきました。」
守は自信がついたように鍬を振るいながら答えた。
しばらくして、隣で作業していた農夫のジルが近づいてきた。
「守君、今日は収穫も手伝ってくれるか?そろそろここの作物がいい感じに育ってるからな。」
「はい!収穫ですね、やります!」
ジルに教えてもらいながら、守は慎重に野菜を抜いていく。
「うわ、これ大きいな……ちゃんと育ってるんだな。」
「それはこの畑の土が良いからさ。それに、守君がしっかり耕してくれてたおかげでもあるんだよ。」
「えっ、俺のおかげですか?」
「そうさ。土の手入れがしっかりしてると、野菜はちゃんと応えてくれるもんなんだ。」
ジルの言葉に守は少し照れながらも、嬉しそうに笑った。
「野菜ってすごいですね……こんなに手間をかけて育てるものだったなんて、日本にいた時は全然知らなかったです。」
「守君、日本ってどこなんだ?」
「えっ、えっと……遠いところです!」
「そうか、まぁいい。お前が真面目に働いてくれてるなら、それで十分だ。」
ジルは笑いながら肩を叩き、また収穫作業に戻った。
昼になり、収穫を終えた守は大きな野菜の山を見て感動していた。
「これ、全部俺たちが育てたんですよね……すごいな。」
「守君、せっかくだからこの野菜で料理でもしてみたらどうだ?」
「えっ、俺がですか?料理とか全然自信ないですよ。」
「大丈夫だよ、簡単なスープくらいなら作れるさ。村のおばさんたちに聞いてみるといい。」
「わかりました!じゃあ、やってみます!」
午後、守は昼食を済ませた後、鍛錬場として使われている村の広場にやってきた。そこには剣を持ったガルドが既に待っていた。
「お、来たな坊主。今日も鍛錬付き合ってやるぞ。」
「お願いします!」
守は腰につけていた木剣を握りしめ、ガルドの前に立った。
「さて、昨日は魔物相手にいい動きしてたが、まだまだ粗が目立つ。まずは基礎からみっちり鍛えてやるからな!」
「えぇ……基礎ですか?」
「馬鹿野郎、基礎ができてないといざって時に動けなくなるんだよ!ほら、構えろ!」
ガルドの叱咤に守は慌てて剣を構える。
「そうだ、そんくらい低く構えろ。力を抜きすぎず、剣がぶれないようにするんだ。」
「は、はいっ!」
ガルドが軽く木剣を振り、守の防御を試す。守はその一撃を受け止めるが、衝撃で後退してしまう。
「おい、もっと腰に力を入れろ!剣は体全体で支えるもんだ。」
「わ、わかりました!」
その後も、ガルドは守に対して次々と攻撃を仕掛ける。守は必死に受け止めたり、かわしたりしながら、少しずつ動きが洗練されていくのを感じていた。
「ふぅ……もう限界です……!」
守が木剣を地面につき、息を切らしていると、ガルドが満足そうに頷いた。
「よし、今日はここまでだ。だが、だいぶマシになったじゃねぇか。」
「えっ……そうですか?」
「ああ、お前の動きがかなり良くなってるのがわかる。まぁ、まだまだだけどな!」
ガルドは笑いながら守の肩を叩いた。
鍛錬を終えた守は、夕方の空を見上げながら広場で座り込んでいた。
「畑仕事も剣術も……毎日やることが多すぎて大変だけど……なんか、充実してるな。」
ふと、守の頭に過去の生活が浮かぶ。学校へ行って、勉強して、友達と遊ぶ日常。
「俺……今までこんなに何かに一生懸命になったことあったかな……?」
静かに呟く守。その目には、少しずつ自信が芽生え始めているようだった。
「よし、明日も頑張るか……!」
そう心に決めた守は、夕暮れの村に向かって歩き出した。