第6話:村の危機と初めての戦い
剣術基礎スキルがレベル5に達し、さらに「剣術実戦スキル」が発現した神崎守。しかし、その力を試す間もなく、村に新たな危機が迫っていた――。
昼下がりの村は、いつも通り穏やかな空気に包まれていた。守も畑仕事を終え、村の広場で子供たちと遊んでいた。
「お兄ちゃん、今日は何して遊ぶ?」
「うーん、昨日の冒険者ごっこは楽しかったけど、今日は……」
守が考えていると、遠くから急いで走ってくる一人の村人の姿が見えた。
「大変だ!村の外れに魔物が現れたぞ!」
その声に、広場にいた人々がざわめき始める。
「魔物だって!?こんな近くにか?」
「子供たちを家に避難させろ!」
慌てて動き出す村人たち。守も驚きながら、周囲の様子を見ていた。
「魔物……?」
そこへガルドとレナが駆けつけてきた。
「おい、守!聞いたか、魔物が村の外れに出たらしい!」
「ええ……でも、どうするんですか?」
「決まってるだろ、俺たち冒険者が片付ける。それが仕事だ。」
ガルドは自信満々に言いながら腰の剣を抜いた。
「でも、ここからすぐ近くなんですよね?村の人たち、大丈夫なんですか?」
守の不安そうな声に、レナが優しく答える。
「だからこそ、私たちがすぐに行くの。心配しないで、守はここで村人を守ってて。」
「俺が……村人を?」
レナの言葉に、守は思わず自分の手を見つめた。
そんな時、遠くから再び叫び声が響く。
「逃げろー!魔物がこっちに来るぞ!」
村の外れで見張りをしていた村人が走り込んできた。そしてその後ろから現れたのは――巨大な狼のような魔物だった。
「なんだ、あれ……でっかい!」
守は思わず声を上げた。その魔物は全身が黒い毛で覆われ、赤く光る目が特徴的だった。
「……シャドウウルフだな。小型の魔物にしては厄介な相手だ。」
ガルドが剣を構え、前に出る。
「おいレナ、村人たちを下がらせろ!」
「わかった!」
レナは村人たちに声をかけながら避難を誘導する。その間、シャドウウルフがガルドに向かって低い唸り声を上げていた。
「おい、坊主!」
ガルドが守に声をかける。
「俺がこいつを引きつける。その間に村の子供たちを守れ!」
「えっ!?俺が?」
「お前だよ!剣術のスキルがあるんだろ?少しは戦えるだろう!」
「そ、そりゃスキルはあるけど……こんな魔物相手なんて無理だよ!」
守は必死で拒否しようとするが、ガルドはニヤリと笑った。
「おいおい、昨日あんなにいい動きしてたじゃねぇか。それが使えりゃ十分だ。」
「いや、昨日は練習だったからできたんで……」
守の言葉を聞かず、ガルドはシャドウウルフに向かって走り出した。
「こっちだ、化け物!」
ガルドが挑発すると、シャドウウルフは彼に向かって飛びかかる。
「うおっ、結構速いな!」
ガルドは素早くかわし、剣で反撃する。だがシャドウウルフの動きは鋭く、簡単には仕留められない。
「ちょっと!本当に俺どうすればいいんだよ……!」
守は焦りながらも、木剣を握りしめた。その時、近くで怯えている子供たちの声が耳に入る。
「お兄ちゃん……怖いよ……」
守はその声にハッとした。
「……そうだ。俺がここで逃げたら、この子たちはどうなるんだ……!」
手の震えを抑え、守は木剣を構えた。
「やるしかない……!」
その時、ガルドの声が響く。
「おい坊主!ウルフの動きが速すぎて捕まえられねぇ!お前、こいつの注意を引け!」
「えぇ!?そんな無茶振りを……!」
守は叫びながらも、シャドウウルフに向かって駆け出した。
「おい、こっちだー!」
木剣を振り回し、大声を出す守。それに反応してシャドウウルフがこちらに向きを変える。
「やばっ、こっち来た……!」
シャドウウルフが飛びかかってくる寸前、守はなんとか横に飛び退いてかわす。
「やった……避けた……!」
だが、喜ぶ間もなく、頭の中にアナウンスが響いた。
「剣術実戦スキルがレベル2になりました」
「またスキルが……!」
その瞬間、守の体が自然と動き、シャドウウルフの動きを予測して剣を振るう。
「当たれっ!」
木剣がシャドウウルフの肩に命中し、魔物が後退する。
「やった!当たった!」
「よし!坊主、その調子だ!」
ガルドが再び攻撃を仕掛け、シャドウウルフにとどめを刺す。
シャドウウルフが倒れ込むと、村人たちから歓声が上がった。
「やった!魔物が倒れたぞ!」
「冒険者さん、ありがとう!」
守もその場に座り込み、大きく息をついた。
「ふぅ……生きてる……」
ガルドが近づいてきて、守の肩を叩く。
「よくやったな、坊主。お前、やっぱりただの迷い人じゃねぇな。」
「いやいや、俺はただ……必死だっただけで……」
守は苦笑いを浮かべながらも、少しだけ自信を感じていた。
「このスキル……やっぱり役に立つんだ。」
こうして、守は初めての戦いを乗り越え、村の人々の信頼を少しずつ得ていくのだった――。