第5話:剣術実戦スキルの覚醒
村で少しずつ生活に慣れ始めた神崎守。剣術基礎スキルが突然発動したことに驚いた守は、自分の力をもっと知りたいと思うようになる。そんな中、助けてくれた冒険者たちがまだ村に滞在していることを知り、相談することを決意する。
「えっと……ガルドさん、ちょっと話してもいいですか?」
村の広場で剣を磨いていたガルドに、守は緊張しながら声をかけた。
「ん?どうした、坊主。」
ガルドが顔を上げる。守は少し戸惑いながらも言葉を続けた。
「あの……俺、最近わかったんですけど、たぶん……俺に“剣術”のスキルがあるみたいなんです。」
「剣術のスキルだと?」
ガルドは驚いた表情を浮かべ、守をじっと見つめた。
「うん。子供たちと棒で遊んでた時、突然“剣術基礎スキルがレベル1になりました”って頭の中でアナウンスが流れて……」
守が説明すると、ガルドは腕を組んで少し考え込んだ。
「なるほどな……つまりお前は、遊びの中でスキルを発動させたってわけか。」
「たぶん、そうだと思います。」
「ふむ……よし、一つ確かめてみるか。坊主、剣術の腕前を俺に見せてみろ。」
「えっ!?ガルドさんと剣を……いや、俺なんて全然素人で……!」
守は慌てて手を振るが、ガルドは笑いながら立ち上がり、腰の剣を抜いて木剣に持ち替えた。
「心配するな、これは木剣だ。ただのお遊びだと思えばいい。」
「えぇ……いやでも、それでも怖いな……」
守がそう言って渋っていると、隣にいた女性冒険者のレナがクスクスと笑った。
「大丈夫よ、ガルドは優しいから。それに、自分の力を知るのは悪いことじゃないわ。」
「う……そうですね。わかりました、お願いします!」
広場の片隅に移動し、ガルドが守に木剣を渡す。
「いいか、構えてみろ。」
守はぎこちなく木剣を握り、なんとか構えた。だが、ガルドはそれを見てため息をつく。
「おいおい、それじゃ全く戦えねぇぞ。もっと腰を低くして、剣を安定させろ。」
「こ、こうですか?」
「まぁ悪くない……が、まだ甘い。いいから振ってみろ!」
「は、はいっ!」
守は言われた通り木剣を振る。最初は不慣れで力も入らないが、何度か振るううちに自然と動きが変わっていくのを感じた。
「剣術基礎スキルがレベル2になりました」
「あっ、今スキルが……!」
「おお、さっそくレベルが上がったか!なら次は俺が動いてみるから、お前はそれに合わせて剣を振ってみろ!」
ガルドが木剣を構え、ゆっくりと守に向かって剣を振り下ろす。
「えっ!?ちょっと待って!」
慌てて木剣で受け止める守。だが、衝撃は思ったより軽い。
「何だ、ちゃんと受けられるじゃねぇか。次はこっちだ!」
次々と襲いかかるガルドの木剣に、守は必死で応じた。その中で頭の中に再びアナウンスが響く。
「剣術基礎スキルがレベル3になりました」
「剣術基礎スキルがレベル4になりました」
「えっ、こんなに早く!?レベルがどんどん上がっていく……!」
「よし、もう少しペースを上げるぞ!」
ガルドは本気を出すように攻撃を繰り出し始めた。それでも守は適応力のおかげで次第に動きが滑らかになり、木剣を正確に動かせるようになっていく。
「おら、次はどうする!?受けるだけじゃなくて攻めてみろ!」
「う、うりゃーっ!」
守は思い切ってガルドに木剣を振るう。何度か空振りするが、ついに一撃がガルドの肩に軽く触れる。
「おっ、やるじゃねぇか!」
ガルドが褒めたその瞬間、守の頭の中に強烈なアナウンスが流れた。
「剣術基礎スキルがレベル5になりました」
「剣術実戦スキルが発現しました」
「……えっ!?」
木剣を構えたまま、守は呆然とする。
「どうした、坊主。今度は顔が真っ青だぞ。」
「いや、えっと……またスキルが……今度は“剣術実戦”って……!」
「剣術実戦だと!?それはすげぇな!」
ガルドの目が大きく見開かれる。
「実戦スキルってことは、基礎を超えた実戦向きの技術が体に染み付いてるってことだ。いいか、坊主。お前、ただの素人じゃねぇぞ。」
「俺……そんなすごいことになってるんですか……?」
守は驚きと興奮を隠せないまま、木剣を見つめる。
「さぁ、次は実戦スキルがどれだけ通用するか試してみるか?」
「えぇ!?まだやるんですか!?」
ガルドの挑発に、守の異世界での剣術の道はまた一歩進むこととなった――。