05 余興
「いやぁ、さっぱりしちゃったねぇ」
身も心もぽかぽかとなった咲弥は、ゆるみきった顔でそのように宣言することになった。
温泉の手前に広がる、水晶石の岩場である。昨日の昼から着用していた下着と防寒のインナーウェアも新しいものに着替えたので、実に清々しい心地であった。
すっかり温まってしまったので、防寒ジャケットとスウェットのトップスはまだ着込んでおらず、インナーウェアの袖をまくっている。そうしてチコと一緒に濡れた頭をわしわしとタオルで拭きながら、咲弥は光るカーテンの向こう側に呼びかけた。
「もう服を着たから、こっちは大丈夫だよぉ」
「了解である」という言葉とともに、光のカーテンが消失した。
それでドラゴンとケルベロスとアトルの姿があらわになる。ドラゴンは尻尾を使って器用にバスタオルを扱っていたが、アトルはまだ濡れた頭のままケイの面倒を見ており、ルウとベエもびしょぬれの姿のまま順番を待っていた。
「あらあら。アトルくんもまずは自分の頭をしっかり拭きなさいな。ルウくんとベエくんは、こっちで受け持つからさぁ」
「うむ。どうやら体毛が豊かであると、水気をぬぐうのもひと苦労なようであるな。おおよその水気をぬぐったならば、こちらに並ぶがいい」
そうして水気をぬぐった六名が立ち並ぶと、ドラゴンは虚空に魔法陣を描いた。普段の青白い魔法陣と異なり、赤と緑が入り混じったカラーリングだ。
「火と風の精霊に助力を願う」
ドラゴンがそのように告げるなり、魔法陣から温風が噴き出した。
ケイは「ぎゃー!」と驚きの声をあげたが、アトルやチコはきゃっきゃとはしゃいでいる。ドライヤーの強風ていどの風量であったので、髪を乾かすには最適であった。
「おー、これならバスタオルも乾かせそうだねぇ。どこに干そうか悩んでたから、こいつは助かるなぁ」
髪の処置を終えた咲弥はアトルたちの手も借りて、六枚のバスタオルの乾燥に取り掛かる。いまだ水晶石のきらめきに包まれながら、何かの遊戯にでも耽っているような心地であった。
「あ、よかったらキミたちもご一緒しなよぉ」
咲弥が手招きをすると、少し離れた場所でこちらの様子をうかがっていた一角ウサギの群れがぴょんぴょんと近づいてくる。そうして温風を吹きつけられると、一角ウサギたちはびっくりした様子で目をぱちくりとさせた。
「これにて、身支度は完了であるな。では、サクヤの荷物をこちらで預かろう」
「ありがとぉ。でもその前に、もういっぺん車を出してもらえる?」
ドラゴンは小首を傾げつつ、咲弥の要望に従ってくれた。
咲弥はバスタオルや入浴グッズを助手席に放り込みつつ、後部のトランクからクーラーボックスとコンテナボックスを引っ張り出す。そして、クーラーボックスからはパックのフルーツ牛乳を、コンテナボックスからは各自のカップや深皿を取り出した。
「温泉で汗をかいたら、水分補給しないとねぇ。これもみんなの害にならないかなぁ?」
「うむ。そちらの品は初めて目にしたが、我々には無害であるようだ」
ということで、咲弥はそれぞれの容器にクリーミーなオレンジ色をしたフルーツ牛乳を注いでいった。
アトルとチコは「おいしーのですー」ととろけた笑顔になり、ルウも凛々しい面持ちのまま瞳を輝かせている。甘党ならぬケイとベエも、不満はない様子であった。
「よしよし。あたしにとっては、ここまでが温泉のワンセットだからさぁ。今度こそ、ミッション完了だねぇ」
「うむ。では、冬場でも連泊が可能になったということであろうか?」
「うん。今回はお試しで、二泊三日にチャレンジさせていただこうかなぁ」
アトルとチコは「わーい!」と両腕を振り上げて、ケルベロスたちは無言のまま尻尾をぴこぴこと振りたてる。そしてドラゴンは、限りなく温かな眼差しであった。
「そうすると、温泉の近くに設営したいところだよねぇ。この辺に、目ぼしいスポットはあるかなぁ?」
「うむ。先刻の硫黄泉と逆方向に進むと、手頃な空き地が存在するようである。さらに下ると、川も存在するようであるな」
「おー、そいつはうってつけだねぇ。とりあえず、そこまで移動しようかぁ」
すると、頭上から「ふふん」と鼻を鳴らす音が降ってきた。こちらが騒いでいる間、スキュラはずっと小山の上で見物していたのだ。
「また川の恵みに手をつけるようだったら、水場であたしの名を呼びなぁ。それまで、ひと眠りさせていただくよぉ」
「了解だよぉ。スキュラさんも、お疲れさまぁ」
咲弥はスウェットと防寒ジャケットを着込み、すっかり乾いた頭にワークキャップをかぶった。
鍾乳洞を出て、岩肌に沿って歩を進めると、ドラゴンが言っていた通りの場所が現れる。足もとには下生えの草が生い茂っていたがおおよそは平地であり、ふた組のテントとタープを設置しても余りある広さであった。
「いいねいいねぇ。さくさく設営を進めて、ちょっと遅めのランチを楽しみますかぁ」
「ふん。今日の昼メシは、そいつらかよ?」
ケイがぶっきらぼうに声をあげると、灰褐色の毛玉の群れが咲弥の足もとに逃げ込んできた。五頭の一角ウサギが、ここまでついてきてしまったのである。
「ケイくん、キミはなんと無慈悲なことを言うのだね。この子たちは食べずに愛でると約束したではありませぬか」
「ふん! そんな約束をした覚えはねーな! ただ、そいつらは臭くてまずいって言っただけだよ!」
「つまり、あたしたちに食べられる運命ではなかったってことだねぇ。おお、可愛いや可愛や」
咲弥はその場にしゃがみこみ、一角ウサギの背中を撫でる。たちまち一角ウサギは目を細めつつ鼻をひくつかせて、いっそうの愛くるしさを発露させた。
「二つの世界を融合させたため、この山の生態系には小さからぬ歪みが生じた。それを調和させるために、かつては何種かの獣を間引く必要があったが……そちらの一角ウサギは、むしろ縄張りを狭められた側となる。健やかな共存の道を選んでもらえれば、我も得難く思うぞ」
ドラゴンもそのように言ってくれたため、咲弥は思うさま一角ウサギのモフモフを堪能することがかなったのだった。
「ではでは、設営を開始しますかぁ」
今日の朝方に片付けたばかりのテントやタープを、再び設置していく。もちろん咲弥としては楽しいばかりであったし、アトルやチコの顔も幸せいっぱいであった。
姿を消したスキュラの代わりに、五頭の一角ウサギが鼻をひくつかせながら咲弥たちの働きを見守っている。ドラゴンの言う通り、咲弥の世界のウサギよりは知能が高いのだろう。なおかつ、飼い猫や飼い犬に匹敵する人懐っこさを有しているように感じられた。
「あ、そういえばドラゴンくんに聞いておきたいことがあったんだけど……ロキさんやユグドラシルさんってのも、まだお山にいるんでしょ? あたし、挨拶とかしなくていいのかなぁ?」
「ふむ? 挨拶とは?」
「あたしのほうが新参だから、挨拶とかが必要かと思ってさぁ。これまでお山を守ってくれてたことにも、お礼を言いたいしねぇ」
「なるほど」と、ドラゴンは優しく目を細めた。
「しかし、ロキは他者との接触を忌避する気質であるし、ユグドラシルはかなりの老齢であるのでな。我としては、サクヤの意思を尊重したいところであるのだが……いずれ機会を見てということで、どうであろうか?」
「うん、そっか。迷惑がられたら本末転倒だから、ドラゴンくんのアドバイスに従うよぉ」
「うむ。きっと顔をあわせたならば絆を深めることもかなおうが、急ぐ必要はなかろうと思うぞ」
そんな言葉を交わしている間に、ひとまずの設営は完了した。
今日は朝からミルクココアしか胃袋に入れていないので、異界の食材による簡単なバーベキューで小腹を満たすことにする。しかしバーベキューは六日ぶりであったので、誰もがご満悦の面持ちであった。
そんな中、一角ウサギたちはつぶらな瞳でこちらの賑わいをじっと見守っている。
それに気づいた咲弥は、頭をかきながらドラゴンおよび亜人族の兄妹を見回すことになった。
「えーと、この子たちに畑の収穫を分けてあげるのは、さすがに控えるべきかなぁ?」
「これらの収穫は、あくまでサクヤの所有物であるのだ。サクヤの好きにするがよいぞ」
「そーなのです! ぼくたちはしゅーかくぶつをいっぱいいっぱいいただいているので、のこりはすべてサクヤさまのものなのです!」
しかしそれは祖父とコメコ族の間で交わされた取引であるため、なんの苦労もしていない咲弥としては気が引けるところである。
が、そんな気後れを相殺してしまうぐらい、一角ウサギたちは愛くるしい姿をしていた。
「じゃ、ちょっとだけいただくねぇ。でも、この子たちのお口に合うのかしらん」
咲弥は巨大なバラのごとき『黄昏の花弁』の葉を剥いて、一角ウサギの口もとに差し出してみた。
五頭の一角ウサギがすんすんと鼻を鳴らしたのちに、発達した門歯で紫色の花弁めいた葉をかじり取る。そこそこのサイズであった葉は、あっという間に食べ尽くされてしまった。
「おー、お口に合ったみたいだねぇ。ではでは、もう一枚だけ」
同じサイズの葉を差し出すと、そちらもあっという間にたいらげられてしまう。
そうして五頭の一角ウサギはぴょんぴょん飛び跳ねたり、丸っこい背中を咲弥のすねにこすりつけたりして、それぞれ喜びの思いをあらわにしたのだった。
「あいやー。ちょっとばっかり、ペットを飼う人たちの気持ちがわかっちゃったなぁ」
「左様であるか。まあ、一角ウサギはこちらの世界の住人であるため、サクヤの世界に出ることはできん。山に身を置いている間だけでも、可愛がってやるがよかろう」
「うんうん。どうせこの後は、山にいる時間のほうが長くなるぐらいだろうしねぇ」
咲弥は一角ウサギの一頭を胸もとに抱え込みつつ、ドラゴンに笑いかけた。
すると、その向こう側にケイのむっつりとした顔がうかがえる。咲弥は一角ウサギを足もとにおろしてから、ケイに向かって「さあ」と両腕を広げてみせた。
「さあ、じゃねーよ! 獣なんざにデレデレしやがって、酔狂な女だな!」
「一角ウサギくんとケルベロスくんでは、モフモフの心地好さが別腹であるのだよ。だから、さあ」
「うるせー! こっちに近づくな!」
そうして楽しく騒いでいる間にも、時間はゆったりと過ぎ去っていく。
小腹を満たしたドラゴンは地面に伏せてくつろぎながら、長い首をもたげて咲弥を見つめてきた。
「それで、この後はどのように過ごす算段であろうかな?」
「うん? ドラゴンくんは、退屈しちゃったかなぁ?」
「否。我はサクヤのかたわらにあるだけで満たされた心地であるが、ケルベロスたちは力が有り余っていようからな」
「もー、さりげなくあたしを悩殺しないでってばぁ」
咲弥はドラゴンの背中をぺちぺちと叩いてから、コンテナボックスの蓋を開いた。
「まあ、実はあたしもこんなもんを準備してきたんだけどさぁ。みんなのお好みに合うかしらん」
アトルとチコと三頭のケルベロスたちも、興味深げに咲弥の手もとを覗き込んでくる。が、誰ひとり、その正体はわからないようであった。
「それは……おさらなのです?」
「いや、これはフリスビーっていって、投げて遊ぶ玩具なんだよねぇ」
本日の買い出しでディスカウントストアに向かった際、お馴染みのキャンプ用品店でワゴンセールに出されていたひと品である。
「まあ、あたしもじっちゃんもこういう遊びには興味が薄かったから、あたしにとっても初挑戦なんだけどさぁ。試しに、遊んでみない?」
「……それでどのような遊戯が可能であるのか、まったく見当がつかないのだが……」
ベエが鬱々たる声を発すると、ルウが毅然たる調子で「いえ」と応じた。
「人間族は古きの時代、円盤投げという競技に興じていたのだと聞き及びます。その円盤を投じて、飛距離を競うのでしょうか?」
「そういう遊び方もできるのかなぁ。あたしの世界では、投げ合って取り合うのが主流だねぇ」
口で説明するよりも、まずは実践であろう。咲弥はキャンプメンバーに指示を出して、空き地に大きな輪を作ってもらった。
「あたしが適当に投げるから、取れそうな人が取ってみてねぇ」
正しい投げ方もわきまえていない咲弥は、適当なフォームでフリスビーを振りかざした。
目標はドラゴンに定めたが、フリスビーはあさっての方向に飛来してしまう。その先にたたずむのは、陰気に顔を伏せたベエであった。
が、ベエは意外な機敏さで跳躍し、飛来したフリスビーを口でキャッチする。
咲弥は「おおー」と拍手をした。
「上手い上手い。それを投げたりできるかなぁ?」
ベエはひとつ小首を傾げてから、首を横合いに振りたてた。
フリスビーはぎゅんぎゅんと回転しながら、チコのもとに向かっていく。チコは「はわわ」と慌てつつ、両手でそれをキャッチした。
「おー、チコちゃんも上手だねぇ。ではでは、次の一投をどうぞ」
「りょ、りょーかいなのです! りゅーおーさま、しつれいいたしますなのです!」
チコの向かいに位置取っていたのが、ドラゴンであったのだ。先刻の咲弥とそっくりのフォームでチコがフリスビーを投じると、ベエにも負けない勢いでドラゴンのもとに向かっていった。
ドラゴンは慌てず騒がず、尻尾の先端を差し伸べる。
するとフリスビーの裏側のふちが尻尾の先端に引っかかり、皿回しのようにくるくると回転しながらその場に留まった。
「みんな上手だねぇ。ほんじゃあ、ドラゴンくんもどうぞぉ」
「うむ。これは微細な力加減が必要なようであるな」
ドラゴンはそのまま尻尾の先端でフリスビーを回しつつ、ひゅんっと鋭い音をたてて投じた。
これまで以上の勢いで飛来したフリスビーが、ルウの口にキャッチされる。
すると、なかなか出番の回ってこないケイが不満の声をあげた。
「おい! これの何が楽しいんだよ?」
「はてさて? あたしも初挑戦だから、みんなと一緒に楽しさを追求していく所存だよぉ」
「こんなもん、楽しいわけねーだろ! 洟を垂らしたガキだって、もっと気のきいた遊びを考えるだろーよ!」
と、ケイはそのようにわめいていたが――数分後には、その場になかなかの熱気がたちこめることになった。何せ咲弥を除く面々は誰もが力持ちであるため、宙を舞うフリスビーの勢いが尋常ではないのだ。
もちろんフリスビーは軽い樹脂製であるので、どんなに力を込めても飛空のスピードには限界がある。しかし彼らの怪力は回転の勢いに影響を与えて、受け取る際などはなかなかの衝撃であるのだ。咲弥などは手の皮が破けそうであったので、二投目からはグローブを着用したぐらいであった。
そしていつしか、亜人族の兄妹とケルベロスたちは瞳を輝かせている。おそらくそちらの面々は、根っから体を動かすことを好んでいるのだろう。どんな暴投でも素早く駆けつけて、時には天高く跳躍しながら、彼らはすべてのキャッチに成功していた。
そんな面々と十五分ばかりもフリスビーに興じていると、咲弥はすっかり汗だくになってしまう。
羽織っていた防寒ジャケットを脱ぎながら、咲弥は「タイムタイム」と降参の声をあげた。
「ちょっとくたびれたから、休憩させていただくねぇ。よかったら、みんなは続けててよぉ」
「なんだよ、だらしねーな! 鍛え方が足りねーんじゃねーか?」
そのように語るケイも、ぴこぴこと尻尾を振っている。
そのさまに胸を温かくしながらタープの下に舞い戻ると、ローチェアのそばに五頭の一角ウサギが待ち受けていた。
「さすがにみんなは参加できないよねぇ。あたしも一緒に見物させていただくよぉ」
咲弥はローチェアに身を沈めながら、ウォータジャグの冷たい水をマグカップに注ぐ。そこに、ドラゴンが悠然たる足取りで近づいてきた。
「おやおや? ドラゴンくんも休憩かな?」
「うむ。あちらの遊戯も興味深いが、サクヤとの語らいにはそれ以上の魅力を感じるのでな」
「もー、悩殺しないでってばぁ」
咲弥が笑うと、ドラゴンも微笑むように目を細めた。
一角ウサギは咲弥の右側に寄り集まったので、ドラゴンは空いた左側に身を伏せる。そうしてみんなで、フリスビー遊びの場を見守ることになった。
「ケルベロスたちは、ひときわ琴線に触れたようであるな。さすが、サクヤの判断は的確である」
「いやいや。キャンプでの遊びなんて、限られてるからねぇ。……ちなみに、じっちゃんとのキャンプでは何をしてたの? 釣りができないと、いっそうやることもなかったでしょ?」
「取り立てて、何も。アトルたちのために皿や匙を作りあげるさまを見守ったり、器具の手入れを手伝ったりということもなくはなかったが……おおよそはこうして語らうか、あるいは山の息吹を楽しむばかりであったな」
「うん。釣り竿を握ってても、だいたいはそんな感じだったよぉ。そうやってのんびりくつろぐのも、キャンプの醍醐味だしねぇ」
「うむ。アトルやチコなどは、居眠りをすることも少なくはなかった。あれはあれで、実に幸福そうな姿であったが……今のアトルたちは、また異なる喜びを噛みしめていることであろう」
「うんうん。時間はたっぷりあるんだから、この後はお昼寝だって楽しめるさぁ」
そんな風に答えながら、咲弥は自らの手を団扇の代わりにしてあおいだ。水分を摂取したおかげで、また汗をかいてしまったのだ。それに気づいたドラゴンが、楽しげに目を細めた。
「身を清めたばかりであるが、ずいぶんな汗をかいてしまったようであるな」
「うん。これでもういっぺん温泉を楽しむ口実ができたねぇ。まあ、そんな口実がなくっても、今日中に楽しむつもりだったけどさぁ」
ローチェアの背もたれにゆったりともたれながら、咲弥はドラゴンに笑いかけた。
「あと、あっちの温泉を使えるぐらい暖かくなったら、月見酒を楽しめるんじゃないかなぁ。ぬるい温泉なら、お酒を飲んでもそんなに危なくないはずだからさぁ」
「うむ。温泉ひとつ取っても、まだまだ楽しみが残されているようであるな」
「そりゃそうさぁ。キャンプの楽しみに終わりはないからねぇ」
ドラゴンの優しい眼差しを目に焼きつけてから、咲弥はケルベロスたちのもとに視線を向けなおした。
三月上旬のやわらかな陽射しに照らされて、ケルベロスたちの黒い毛並みがきらきらと輝いている。アトルとチコも、心から楽しそうな笑顔だ。ひとりローチェアに身をうずめる咲弥も、それで彼らに負けないぐらいの幸せを噛みしめることがかなったのだった。
2025.1/27
今回の更新はここまでです。更新再開まで少々お待ちください。




