第1話 キャラに自分を重ねて
W杯でバスケに興味を持って下さったあなたへ!
バスケを知らない方でも楽しめるような作品にしたいと思っています。だからバスケ知らないからって読むのやめないで!!!
バスケは兎にも角にも『一に身長、二に身長、三は飛ばすもやはり四に身長』と身長が高ければ高いほど有利になるスポーツだ。その証拠としてバスケ界最高峰のプロリーグであるNBAでの選手全体の平均身長は198㎝と意味が分からないし、世界的に見て低身長国な我が国日本においてもアマチュアレベルの大会でさえ190㎝越えは割とよく見かける。
バスケは身長が命。世界が滅びるその時まで決して揺らぐことのない常識である。
でもさぁ…それってつまんなくね?と一般ピーポーな俺氏は思うわけですよ。
やっぱ見たいじゃん、巨人が小人を踏みつぶす様よりも巨人が小人に無様に負ける姿を。小人が巨人を倒す下剋上をさ。もっと欲張ると俺自身がその小人になって跪く巨人を見下ろしてやりたい!
けれども現実は非情で、俺自身には巨人を置き去りにする身体能力や巨人の上から3ポイントシュートを叩きこむセンスなんてものはなかった。身長だって167㎝しかないし…。
小さな頃はそれでもいつか!と夢見たことがあった。日本のプロバスケ界には今の俺と同じ身長にもかかわらず第一線で戦い続けているガードがいるからね。
でも彼らの試合を見ていくうちにどう足搔いたって俺には無理だってことを嫌でも気づかされた。身体能力が身長を上回ったことなんて一度もなかったのだ。
実際、身長が理由で中学高校と部活の公式戦に出たことは……あぁ、あったか。三年生だから、今まで頑張って練習してきたからという理由で負け試合のラスト一分だけコートに送り出されたわ。レイアップ入れただけで拍手喝采だったなぁ……馬鹿にしてんのかと思ったよ。
――…とまぁこんな感じで挫折して捻くれました。
そんな時だった、このゲームに出会ったのは。
『実況ウルトラプロバスケ』
超人気ゲーム会社の野球、サッカーに続く実況シリーズ第三弾として登場したこのスマホゲームは俺の心を一瞬で掴んだ。
「たっだいま~」
丁度今は大学の講義から戻って来てすぐにそのゲームで一人のバスケ選手を育成し始めようとしていたところだ。
高校時代に比べたらあってないような重さのリュックを床に、身体をベッドに放り投げスマホの電源ボタンをポチっとな。もじもじと頭を動かしポジを整えたらゲーム開始。そしてさっそく『育成』の前準備である『才能の振り分け』を行う。
「身長は167㎝に……そのマイナス分をシュート力とスピード、テクニックに振り切って…っと。フィジカルとスタミナはある程度捨てていいや…で、その分を賢さに回す。ガードは馬鹿じゃ出来んからな~」
このゲームの選手育成は高校からではなく小学校から始まる。
他の二作品と比べて選手の能力値がとても細かく作り込まれていて、基礎能力値や選手の能力を底上げする役割を持つ特殊能力だけでなく才能の偏りまでも思いのまま。そして大学まで育て上げ見事試合などで活躍、スカウトの目に留まればプロバスケ界へのチケットが手に入る。育成はここで終わりだ。
しかしこのゲームの真に面白いところは育成後の自由度の高さにあり、育成した選手のプロ入りから引退までの人生を遊ぶことが出来る。上手くいけば日本を飛び出し本場アメリカにだって行ける。つまりは自分好みの選手を世界の舞台で大暴れさせられるのだ。
もうド嵌りだよね。現実世界では到底叶うことのない低身長による下剋上の夢物語をゲームの中とはいえ見れるのだから。
「これでよし」
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名前:石動俊哉
性別:男
身長:167㎝(G)
才能:
シュート S (上限+12)
パワー C (上限+2)
スピード S (上限+4)
スタミナ B (上限+6)
ジャンプ S (上限+6)
テクニック A (上限+12)
ディフェンス B
持ち物:
天才の入学届
招き猫
イベントデッキ:
【近所のお姉さん】姫野香澄USR/Lv50
【永遠の好敵手】久遠空USR/Lv50
【最速の男】飛島隼人USR/Lv50
【女子バスケ界の至宝】七星美月USR/Lv50
【頼れる主将】岩尾一鉄USR/Lv50
【世界制覇】アレン・バートUSR/Lv50
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熟考に熟考を重ねた末にようやく育成前準備を終え一先ず満足。
他のポジションと比べたらそこまで身長が必要になってこないPGとして育成するつもりなので身長は自分と同じでいい。才能はもちろんシュート力、スピード、そしてジャンプに偏らせた。テクニックよりもジャンプに偏らせたのは入部条件が『ダンクできること』とクレイジーな高校に進学する予定だからだ。テクニックは『上限解放』の高さで誤魔化せる。
ちなみに名前は……本名だ。育成選手に自分を重ねて悦に浸る。ひねくれている自覚はあるから放っておいてくれ。
「さぁて、始めましょうか」
いつも通り入念な確認を終えた俺は育成開始のボタンを押した。
これで育成が始まるはず…が、予想していたプロローグが始まることはなかった。
『イベント期間中に限り一度だけ特殊能力センス〇確定で育成を開始できますが、確定させますか?※確定させた場合は二度とこちらの世界に戻ってくることは出来ません』
代わりに表示されたのは見慣れない文章。読もうとするもプロローグを飛ばすために画面を連打していた指は既に『はい』をタップしていて読むこと叶わず。
「あ、やべ…押しちゃった」
次の瞬間、視界が暗転した―――。
バスケ基礎知識①『ポジション』…バスケは五人で戦うスポーツです!そして選手一人一人はそれぞれ違った役割を持っていて、働く場所が違います!
『PG』
試合をコントロールする司令塔の役割を持っていて、務める選手の特徴としては背が低くスピードがありバスケIQが高い等が挙げられます。働く場所は基本3Pラインの外側です。小さいので闇雲に中に突っ込むと潰されます。『一番』と呼ばれることが多いですね。W杯でいうと富樫選手や河村選手がこれにあたります。
『SG』
別名『二番』『シューター』と呼ばれる選手で遠距離からのシュートが超得意という特徴を持っています。PGよりは身長が高いけど中で戦うにはまだ足りず、外の方が圧倒的に得意。W杯で活躍した富永選手、馬場選手、西田選手がこれに当たります。
『SF』
端的に言えば3Pエリアの中でも外でもどっちでも戦える選手が就くポジションです。オールラウンダーとも言えますね。『三番』と呼ばれることが多くW杯で活躍した渡邊選手、比江島選手、原選手、吉井選手がこれにあたります。
『PF』
一応外でも戦えるゴリラと言ったところでしょうか。背が高く、パワーとスピードを兼ね備え、手先の技術もある。そんな恵まれた身体の持ち主がなるポジションが『四番』です。W杯で活躍した井上選手がこれにあたります。
『C』
3Pラインのさらに内側にあるペイントエリア内に特化した完全なるゴリラです。背が超高く、パワーが超ある選手にしか務まらないポジション、多少のろくて不器用でも高さと力でゴリ押してきます。『PG』~『PF』までは努力次第で何とかなりますが『C』だけはどうにもなりません。才能ゲーです。身長が低いだけで捻り潰されます。W杯で活躍したホーキンソン選手、川真田選手がこれにあたります。両選手2m、100㎏越えです。
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