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暁の皇子  作者: さら更紗
Ⅳ 運命
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Ⅳ 運命 -22

 

「ユースティス様はどんなお方なの?」

 用意された季節のお菓子を堪能し、新しく仕入れたという(かん)(よう)茶を味わうと、タミアはさりげなくターシャに訊いた。

 やっぱり来たか。

 ターシャはごくりとお茶を飲んだ。

 ただ単にお茶に誘いに来たわけがない、とは思っていた。

 きっとユースティスとのことを探りに来たのだろうということは、容易に察しがついた。そもそも、母親であるタミアに知らせないで、婚約云々ということを推し進めているのがおかしい。

 それでも、話がタミアの頭越しにされてしまったのは、大公もターシャ本人も、これが家庭の話というよりは、政治的な話だと認識していたからだ。

 タミアは政治のことには興味を持っていない。いや、持たないと決めているようだった。

 彼女は政治に一切口を挟まなかった。その代わりアランが背負っている大公一家を、不安定なものにせぬよう、心を砕いていた。

 少々変わり者の姫がいても、周りにとやかく言われないのは、タミアの大公に対する献身的な態度を、国民が知っているからだ。

 タミアは家族を大事にし、ターシャの味方をしてくれる。

 ターシャの望みが、大公に反対されない限りは。

「とても真面目で、素敵な方よ。頭もいいし、何より面白いわ」

「面白い?」

 タミアは目を丸くして、訊き返した。

「ええ、そう。話していると楽しいの」

「……そう」

 タミアはじっとターシャを見て、呟いた。

 ターシャは緊張する。別に隠し事をするつもりはない。悪いことをしているわけでもないし、ユースティスが反大公派であることがばれても、アランが承諾している以上、反対することはないだろう。

 ただ時々、この人は実は、見かけよりもたくさんのことを理解し、考えているのではないかと思うことがあるのだ。

 ターシャがごまかせないなと思うのは、実は父ではなく、母であった。

「でも、ターシャはまだ十歳じゃない」

 責めるような言葉の割には、柔らかなしゃべり方で、ミアがターシャの方に身を乗り出した。

「本当に?」

 ターシャの本心を疑っているようだった。無理もない。一四歳のミアだって、結婚には早すぎる。

「婚約だなんて、早すぎない?」

 ターシャはニッコリ笑って、姉を見た。

「そういうお姉さまは、気になる人はいないの?」

 ミアはうーん、と首を傾げた。

「素敵だなと思う人はいたわ」

 ターシャは合わせるように、頷く。確かにミアは惚れっぽい。殿方に会う機会があるたびに、ときめいている。

「でも、ターシャの婚約話を聞いて、なんだか醒めちゃったの」

 そういうミアの横で、二人の母親は両手で持っていた茶器を、テーブルに置いた。

「あなたたちはまだ子どもよ。きちんとわきまえなさい」

 静かな声でそう言うと、ターシャに目を向けた。

「ターシャには何か考えがあるんでしょう。ただ、自分はまだ子どもであること。それを忘れないで」

 ターシャは神妙に頷いた。

 タミアも頷くと、ニッコリと微笑んだ。

「さあ、二人でどんな逢瀬を楽しんでいるのか、教えてちょうだい」

 げっ

 ターシャは心の中で呻いた。

 彼女の母親は、こうなるとしつこい。自分が満足するまで放してくれない。

 陽が沈むまで、あとどれくらいかな?

 ターシャは頭上に輝く太陽を、恨めし気に見上げた。


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