表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
暁の皇子  作者: さら更紗
Ⅱ 外側
45/151

Ⅱ 外側 -31



「逃がしてよかったんですか」

 側近は忌々しそうに言った。狼公はそれには答えず、自分の顎を撫でていた。狼公が考え事に没頭した時の癖だ。

「あんな紐がついていたとはな」

 狼公はぼそりと言った。

 数時間前に男が訪ねてきた。

 見知らぬ男ではない。近年会ってはいなかったが、十数年前にはよく自分の前に現れた。それはあまり歓迎する形ではなかったが、それでも自分がこの地位にいられるのは、彼が目を逸らせてくれたからだ。

「お久しぶりです。景気がよさそうで何よりです、狼公」

 笑顔でも彼の目は笑っていなかった。

「ここに僕の知人が、何人かお世話になっているみたいです。どうやら今日ここを出る段取りをつけているみたいなので、連れて帰りますね。追手をかけても、深追いはしないでください」

 彼が自分と通じていると感づかせるなというお達しだ。この男の常套手段だった。

「分かった」

 売ってしまった耳の聞こえない子どもが、彼の知人に入っていないことを願いながら、彼は頷いた。しかし、男は続けて言った。後から言うのが、この男の嫌なところだ。

「一人足りないようですが、どうしました?」

 分かっていて、言う。しかし狼公としても、子どもを売った先は、違う意味で切ることが出来ない相手だった。

 汗をにじませながら黙っていると、男はあきらめたようにため息をついた。

「分かりました。そちらは僕が取り返しましょう。いいですか」

 念を押す男に、狼公は目だけで頷いた。

「悪いことは止めて下さい。二度目はないです」

 男はそう言うと、部屋を出て行こうとした。

「あいつらは誰だ?」

 去ろうとする男に、狼公は思わず尋ねた。

 扉を開けかけていた男が振り返った。その顔を見ただけで、狼公は尋ねたことを後悔した。

「訊かない方がいいですよ」

 そう言うと、男の姿は扉の向こうに消えていた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ