最後まで笑顔だった人 ~あの日から、決めていた~
私(如月 笑美)は、絶対に人前では泣かない。小さい頃からそう決めていた。でも、アイツのせいで涙腺崩壊した。アイツと出会ったのは高校の入学式だ。
「やっば! 急がないと遅刻する」
私は、入学式の日寝坊して、遅刻寸前だった。走って学校に着いた。でも
「コラ。お前な〜、制服が乱れてる」
と1人の男子生徒が門で止められていた。私が先に行こうとすると
「あ、君、ちょっと待って。この子が終わってからチェックするから」
と私も先生に止められた。早くして欲しいなと思った。でも、男の子は直そうとしない。何分待っても直そうとしない。その結果、遅刻した。入学式に出れず、担任の飯田先生にも怒られた。説明したところで私が遅刻寸前だったことに変わりはないため
「はい。ごめんなさい」
とだけ言った。内心、面倒だった。また、そんな男の子が同じクラスで隣の席だった。最悪だ。
「あ! お前、さっきの……」
と、男の子が遅刻したことをバラしてしまいそうだったため、口を塞いだ。多分みんな知っているとは思うけど、2度も知られたくない。私は
「あのですね、さっきのは、あなたが全然直さないからでしょ」
とキレ気味で言った。男の子は
「そっか。あはは」
と笑っていた。
クラスの前で自己紹介をすることになった。男の子の番が来た。
「皆さん、はじめまして。俺の名前は、遠藤 雫です。
俺は、いつも笑っている、無理して笑っている奴がいることに違和感を感じています。泣きたい時は泣いていいと思う。でも、それを出来ない人がいる。何故かは周りの人が原因でもあると思います。だから、俺は、このクラスの人で無理して笑っている人を無くしたいです」
と、演説のように自己紹介をした。後からやる人が大変になるとも知らず、考えろよとイライラした。遠藤君の自己紹介が終わってから、少し経ち、私の番が来た。
「えっと、私の名前は如月笑美です。私は、笑うことが大好きです。小さい頃から泣いたことは滅多にありません。そんな私と笑いあってくれたら嬉しいです」
と負けじと自己紹介をした。自己紹介が終わった後、私と遠藤君の机の周りにたくさんの人がいた。私と遠藤君は隣の席のため、クラス全体が1部に集中するという自体に、私は思わず、笑ってしまった。
私は、遠藤君の演説を聞いて、イライラもしたけど、心の扉が5センチくらい開いたような気もした。だから、
君に伝えよう。どうして、私が、泣かないようにしてるのか。
私の両親はいない。私が産まれる前父は事故で死んだ。母は、私を産んですぐ、病気で死んだ。私を育てたのは母の弟であり、私の叔父である加藤玄だ。そして、母は、いつ死んでもいいようにと私宛に遺書を書いていたらしい。そう、母は私を死んででも産むつもりだったのだ。その遺書には
「笑美へ
これを読んでいるということはお母さん死んじゃっているんだね。お母さんとお話出来てない……のかな?ごめんね。お母さんが病気だもんで。あのね、笑美っていう名前はお母さんとお父さんでつけたの。その由来はね、笑美がいつでも、どんな時でも笑顔でいれますようにっていう願いを込めたんだ。お母さんとお父さんからの願いは1つだけ。笑顔で前向きに生きてね」
という内容だった。だから、私は両親の願いを叶えたくて、泣いていない。でも、涙は出てくる。だから、私は、人前だとバレちゃうから、1人で泣くようにしようと考え、1人で泣くようにしていた。両親のせいにはしたくない。でも、私が人前で泣かないようにしているきっかけになっているのは、事実だ。
私は、いつも通り笑っていた。でも笑うことによって、何を言ってもいいというような考えをする人が出てきていじられる。それが苦痛だった。私の印象はヘラヘラしている。そう、友達が言う。遠藤君は、私の印象を
「いつも我慢して笑って、本当は泣き虫な奴」
と言った。なんで分かるんだろう。誰にも涙を見せていないはずなのに。放課後、私は、遠藤君を屋上に呼び出して
「あのさ、なんで分かったの?」
と聞いた。遠藤君は
「俺、お前と幼稚園からずっと一緒だったぞ」
と言い出した。私が驚いていると、遠藤君が
「俺が説明してやるよ。出会いとか」
と言ってくれた。だから、私は
「お、お願いします」
と言った。遠藤君はうなずいて
「俺が、公園に遊びに行った時、砂場で泣いている子がいた。その子に話しかけて話を聞くと、お父さんが本当のお父さんじゃなかったとか両親が死んでたとか言ってた。それがお前だって気づいたのは、少し後だけどさ。それで小学校も同じで、俺が久しぶりっていう思いで手を振ったけど、誰って顔をしてたな。だから、話しかけなかったけど、ずっと、お前の事を見てたんだ。だから、知ってる。ていうか高校もお前がここを受けるって聞いて決めたし」
と、丁寧に説明してくれた。高校の決め方を聞いて、気持ち悪いと引きもしたけど、私の事を覚えていてくれた事や私のことを気遣って話しかけずにいてくれた事を考えたら、そう言えず、そうだったんだというようなうなずきをした。私は、そんな優しい遠藤君を嫌な目で見ていたことを後悔した。そして、私は
「ごめんね。私、遅刻した時から、遠藤君の事を嫌な目で見てた。ごめん」
と謝った。遠藤君は
「いいよ。別に。俺だって、初めて、お前を見た時から、お前の事を好きな目で見てた。言い方が合ってるか分からねぇけど」
と言っていた。私は、びっくりして、でも、返事をするべきかしないべきかも分からず、頭を抱えていた。すると遠藤君は
「返事は今じゃなくていいよ」
と言ってくれた。だから、返事をするべきなんだと気づいた。私は、人を好きになったことがないため、どんな気持ちで告白をしてくれたのか、分からない。だからこそ、しっかり考えなくてはならないのだろうなと確信した。
告白してもらってから、1週間。遠藤君の事を前よりは見るようにしていたが、返事の仕方が分からず、悩んでいた。好きではない気がするが、胸が、苦しくて、一緒にいると安心する。私は、心筋梗塞などの病気だと思い、病院に行った。すると、医者は
「胸が苦しいんですか?」
と2度も聞いてきた。だから、私は、うなずいた。すると、医者は
「エコーで検査しても、問題が見られないので、MRIもやってみましょう」
と言ってくれた。結果、問題なし。その後もたくさんの検査をしたけど、問題なしだった。そして、家に帰った。叔父さんにもう一度、症状を説明し、その後、叔父さんがとんでもない事を言い出した。
「笑美のそれ、恋じゃない?」
と聞いてきた。私は
「恋!?」
と驚いた。そして、私は、ハッとした。私は、遠藤君に恋をしていたんだと。
翌日、私は遠藤君に返事をした。
「まず、返事が遅くなってごめん。私恋とかしたことなくて、考えてた。それで、気づいた。私は、遠藤君が好きです」
と真剣に、でも、照れながら言った。遠藤君は、とても喜んで、屋上の柵のところから大きな声で
「ヤッター」
と叫んでいた。すると、すっごい風が吹いて、遠藤君が落ちそうになった。私は、遠藤君を引っ張った。そして、無事に救出。そして、笑いあった。
「これが、私の祖父母のラブストーリーです」
と私の孫が授業参観で、作文を発表する時に言っていた。孫は私の娘の子供だ。娘は仕事で来れなかったため、私が来た。でも、この作文を聞いて、娘の優しい嘘に気づいた。
この作文はきっと、昔の私の日記をみて、書いたのだろう。視点が私目線だからね。まあ、小学生だし、真似でいいと私は思う。孫のクラスの誰よりも大きく拍手をした。そして、私は、思う。雫にこの話をするのが楽しみだと。
その後、私は、雫のいるお墓に行き今日の事を話した。その途中で、体が楽になり、雫に会った。そして、楽しく歩き出した。未知の世界へ。