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第83話 護衛依頼

「お世話になりました」

「ああ、お前たちには、もっとここにいて欲しかったが、この状態ではな。十分に力になってやれず、すまなかったな」


今あたし達はハンターギルドでステファノスさんに別れの挨拶をしている。

あれから3カ月下級ハンターパーティのサポートを含め、他のハンター達と合同での依頼を複数回請け、予想はしていたけれど、その多くで女神の雷がそれ1回だけを見ればそうとは判断しきれない、それでも対応を間違えれば命にさえ係わる嫌がらせを受けたのよね。


だからあたし達は、それを理由にして拠点を替えることにしたの。


「アサミも、すまんな。なんなら王都ギルドに紹介状くらいなら書いても良いが」

「い、いえ。あたし達はもう少し田舎のクリフに行こうって言ってるんです」


あたしの言葉に瑶さんも優しく頷いてくれた。

王都だなんてとんでもないわ。いつ”聖女”爆弾が爆発するか分からないじゃないの。


「マルティナも、面倒な立場のままで放り出すようですまんな」

「いえ、わたしアサミ様の下にいられる今が幸運と思っていますので」


マルティナさんも笑顔でステファノスさんに答えているわね。そしてマルティナさんはいつの頃からか、あたしのことを様付けで呼ぶようになったの。何か気づいたようで、何度言っても頑なに様付けのままで、ちょっと心苦しいのよね。王族って誤解は解いたはずなんだけどなあ。


「まったく、お前たちなら、そう遠くない将来3級、いやひょっとしたら1級にもなれるかと思っていたんだがな。……残念だ」

「ま、生きていればまた来ることもあるでしょうから。その時はよろしくお願いします」

「ふう、まったく気楽に言ってくれる。……。そうそう、クリフに行くって言ったか。よかったら護衛依頼受けないか?」

「え?それに護衛は傭兵ギルドの管轄だと思ってたんですけど」

「ああ、まあ確かに通常は傭兵ギルドの取り扱う依頼なんだがな、それはあくまでも護衛が対人戦闘が多いからっていうのが理由で護衛の状況によってはハンターギルドがハンターを斡旋することもあるんだ。そして今回の目的地はクリフの少し手前のグライナーなんだが、あのあたりは魔獣が多くてな、そのせいもあって街に入ることの出来ない盗賊なんかは逆に少ないんだ」

「つまり対魔獣の護衛がメインだからハンターギルドに依頼が来たと?」

「正確には傭兵ギルドと合同で、だな。片道およそ20日で報酬も悪くないし、お前たちにとっては行き掛けの駄賃みたいなもんだろうし、どうだ?」





ハンターギルドに挨拶をした3日後、あたし達は予定を少しずらしてエルリックの南門で一緒に依頼を受けた傭兵ギルドの傭兵パーティー「貫く剣」の4人と一緒に護衛対象である行商人のマルタさんを待っている。マルタさんを含め昨日のうちに顔合わせは済ませているので後はここで合流して出発するだけなんだけど、「貫く剣」のメンバーの視線が照れくさいのよね。


「ふふ、アサミ様、昨日の顔合わせは大変でしたね」

「はあ、まさか、あそこまで名前が売れているなんて思わなかったわ」

「大人気だったよな。天使ちゃんって」

「もう、瑶さんまで。勘弁してくださいよ」


実際に昨日の顔合わせは大変だったわ。傭兵ギルドで合流して護衛同士で先に顔合わせしようってなってたんだけど、傭兵ギルドに入ったとたんに囲まれてしまったのよね。

模擬戦まで申し込まれて。依頼人との顔合わせがあるからって断ったのに、その後ででもいいからって押し切られちゃったもの。翌日護衛依頼が入っているから5人までって言ったら枠の奪い合いが凄かったし。

まさか即席のトーナメントまでやるとは思わなかったもの。

そして勝ち残った5人が物凄い勢いで天に向かって吠えたのには引いたわ。

ただ、模擬戦で1対1だと瑶さんはおろかあたしにも誰一人勝てなかったのはちょっと意外だったわね。しかも補助魔法無しだったのに。一応対人をメインにした傭兵ギルドよね。まあ当てれば勝ちの模擬戦だったからだけど。もし相手が本番のしっかりした防具を付けていたらあたしの剣は半分以上防具で弾かれたとは思うけど。もっともそんな相手にはあたしも剣で相手なんかしないけどね。瑶さん?瑶さんはきっと防具ごと切り捨てちゃうわね。オークの変異種、ハイオークの皮はその辺のプレートメイルより硬かったはずだもの。ゴブリンの変異種だってあたしのファイアーアローを弾いたもの。あれを切り裂ける時点で瑶さんが剣を振るったら生半可な防具は役に立たないわ。


そんな事を考えてボーっとしているところに護衛対象のマルタさんが馬車に乗ってやってきた。


「おはようございます。皆さんよろしくお願いします」


そしてあたし達の初めての護衛が始まった。

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