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第75話 奴隷と裏切りと

「あれか。女神の雷は、ギリギリな感じだな。朝未、ラウドネスでリーダーに救援の確認を」

「はい」


「こちら6級ハンター、瑶と朝未です。ラウドネスで声のみ届けています。救援は必要ですか。そちらの声もこちらで拾っていますので普通に話していただければ聞こえます」


あたしはラウドネスで女神の雷のリーダーと思われるバスタードソード使いに声を届けた。反応はどうかしらね。



「何?救援?おい、噂の6級ハンターペアが救援に来てくれたぞ。どうする依頼するか?」


リーダーのバスタードソード使いがパーティメンバーに声を掛けたわね。さすがに勝手に依頼するわけにはいかないみたい。


「いくら記録的な勢いで昇級してきたって言っても6級のペアだろう、役に立つのか」

「そんな贅沢言っている場合か。フランディアは気を失ったままだし、俺ももうもたんぞ」


フランディアというのは倒れている細身で優男の弓使いのことみたいね。ただ、槍使いの女の子だけは何も言わずに黙々とオークの変異種に槍を突きつけて牽制しているわ。残念ながら十分なダメージを与えることは出来ていないみたいだけど。

でも、こんなにのんびりしていて良いのかしら。


「あ!」


盾持ちのハンターが盾で受けきれずに飛ばされたわ。どうするのかしら。さっさとしないと間に合わなくなると思うのだけど。


「ファビオ!」


リーダーの男性ハンターが叫んだ。幸い、ファビオと呼ばれた盾持ちのハンターはすぐに立ち上がったわね。あ、でもちょっと腕を痛めたのかしら盾を構える時に顔を顰めているわね。


「わかった。救援を頼む」


やっと返事が来たわね。


「了解しました。まずは通常種のゴブリンとオークを始末します。その後、ゴブリンの変異種に、次いでオークの変異種の順で攻撃をします。そちらは防御優先で耐えてください」


ラウドネスではピンポイントで声を届けられるのでまず対象以外には気づかれないのよね。こういう時にはとっても便利だわ。


まずは、いつものように補助魔法を瑶さんとあたし自身に掛けた。

補助魔法をかけ終わったあたしは瑶さんに頷いて、弓を構え。手前から2番目のオークを狙う。

無防備に矢を頭に受けたオークがその場に崩れた頃には、あたしと瑶さんは敵との距離を走って詰めていたわ。

近接戦闘の距離に入る前に奥側のオークに魔力を少し多めに込めたファイヤーアローを放つ。

これで2体。


瑶さんが手前のゴブリンに突っ込むので、あたしは瑶さんのやや後ろで短剣を構えてバックアップ。

ゴブリンやオーク程度なら瑶さんは一刀のもとに切り伏せる。そんな瑶さんに敵意を向け横から近づいてきたオークにあたしも短剣を振り切る。瑶さんほどの近接戦闘力は無いけど、あたしの身体もこの世界に来て高性能になっている。短剣でゴブリンの腕を切り飛ばすくらいは難しくない。

そして


「ファイヤーアロー」


魔法でゴブリンの胸に大穴を開けとどめを刺す。生き物の命を奪うこともこちらに来て最初の1カ月のサバイバル生活で慣れた。そして、近接戦闘中にでも初級魔法くらいなら使えるようになったのであたしにとってもゴブリンやオーク程度ならもう大した脅威ではないわ。


群れに囲まれさえしなければ。


もっともその囲まれなければっていうのも周囲に人がいなければホーリーでどうにかなってしまうと思うのだけど。


「っと、ストーンミサイル」


女神の雷のメンバーに後ろから襲い掛かろうとしていたオークに初級の地属性魔法を放つ。この魔法は半分物理攻撃。ファイアーアローに比べて殺傷力は低いけれど、質量があるので吹き飛ばす力がある。近づけさせないのには便利なのよね。


あたし達が通常種の討伐を終えるころには、倒れていたフランディアさんも身体の痛みに顔を顰めながらも立ち上がっていた。あら?さっきのマナセンスの反応だと死にかけていた感じだったのだけど。


「ハイポーションを使った。あんたらが来てくれるまでは使う余裕も無かったからな。助かった」


あたしが疑問に思っているのを感じ取ったのだろうリーダーのバスタードソード使いが説明してくれた。


「雑魚を片付けてくれて、戦いやすくなりはしたが……」


変異種から目を離すことなくバスタードソード使いが続けた。


「こいつら、ゴブリンやオークの変異種の割に強いからな、気をつけろ。特にオークの変異種はこんな強いのはオレたちも出会ったことがない」

「逃げられないんですか?」

「無理だな。動きも速い」


なんと、ここでまさかの『ボスからは逃げられない』に遭遇するとは思わなかったわね。

それでも、攻撃しないわけにもいかないので、瑶さんがゴブリンの変異種に切りつけた。

『ザクッ』という感じで刺さった瑶さんの長剣だったけど、さすがに通常素を相手にしたようにはいかなくて、ほどほどのダメージを与えた程度みたい。


「く、硬い」


顔を顰める瑶さんの言葉に、女神の雷のメンバーはそれでも驚いた表情を見せたわね。


「あれに、あんなあっさりとダメージを?」


そんな驚いている女神の雷の反応よりも斃すほうが優先よね。


「ファイヤーアロー」


く、普通のゴブリンやオークなら1発で倒せる程度には魔力込めたのに表面が抉れただけって。


「ええ!!変異種って魔法耐性もあるの!?」


しかもあたしのファイヤーアローであれって、普通の魔法使いのファイヤーアローじゃ皮がちょっと焦げる程度じゃないかしらね。あたしは振り下ろされるゴブリンの変異種の腕を短剣でいなしながら驚きを隠せなかったわ。


「いや、魔法使いってのは聞いてたけど……」


後ろがうるさいわね。おしゃべりしている暇があるなら攻撃しなさいよ。


「でも、あれじゃまだ……」


ん?何か気になる言い方ね。


「おい、マルティナ。オークの方を抑えろ」


女神の雷のリーダーが槍使いの女の子にとんでもない指示をだしたわ。


「ちょ、ちょっと、いくら距離の取れる槍って言っても1人では無理よ」


あたしは、ゴブリンの変異種に牽制のファイヤーアローを打ち込んで距離を取りながら抗議したのだけど、取り合ってくれない。


「良いんだよ。そいつは奴隷だ。多少使い勝手がよかったからこれまで一緒にいたがな。俺たちの命が掛かっているとなれば別さ。そして……」


ドンッ。え?あたしの身体が2体の変異種の間に突き飛ばされた。


「あばよ、甘々な天使ちゃん。せいぜい俺たちが逃げる時間を稼いでくれよ」


振り下ろされるオークの変異種の腕をかろうじて躱したけれど、何が起こったのか分からずあたしは、地面を転がった。

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