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JC聖女とおっさん勇者(?)  作者: 景空
ギルドからの依頼
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第60話 変異

あたしは釈然としない気持ちを抱えながらも瑶さんと一緒に魔物狩りを続けている。


「朝未。納得はしなくていい。ただ、今は目の前の戦闘に集中しなさい。まずはこの世界で生き延びること、だよ」

「は、い」


そう、あたし達は今この世界で寄る辺ない存在。ミーガンさんとの関わり合いで多少の縁は出来ているけど、基本的にこの世界では異物だものね。山の中で獲物を狩って原始人のような生活をするのなら今のままでも出来るかもしれない。でも、あたしは人間だもの他に人がいないならともかく、人がいて文明があってその中で生活できる手段があるならやっぱり人として生きていきたい。

そのために今はハンターとして立場を固めるのが近道だから。最速でせめて5級ハンターに上がるのがとりあえずの目標だもの。上級ハンターになればそれなりの立場を得られるみたいだし、貴族や神殿にもある程度は抵抗できるみたいだものね。


あたしは両手の平で頬をパチンと叩いて気持ちを切り替えた。


「瑶さん。探知魔法に反応があります。反応の大きさからオークの群れ。数はもう少し近づけば分かると思いますが、今探知範囲にいるだけで4体です。動きからすると探知範囲外にまだ連携しているオークがいそうです」

「わかった。木や茂みを使って隠れながら近づこう。朝未、群れの大きさが確定したら私の肩を叩いて知らせて。そこで止まって打合せをしよう。それと、もう昼を回って地球でいう3時に近いから、その群れと戦うにしても避けるにしても今日はこれで最後にしよう」


瑶さんの提案に頷いて、あたしは探知魔法に意識を向けたの。

あれ?探知魔法の反応が少し妙なことに気付いてあたしは瑶さんの肩を叩いて止まってもらうことにした。


「群れの規模はわかった?」


瑶さんの言葉にあたしは首を横に振る。当然瑶さんは疑問を顔に浮かべたわね。


「1体がマナセンスにおかしな反応があります」

「おかしな反応?」

「ええ、マナセンスの反応って普通は死にかけるとかでない限り一定の強度なんですが、1体だけ強度がフラフラと安定しません。弱くなるのであれば死にかけということですが、これ強くなったり弱くなったりと不安定なんです。しかも一番弱くなった時で周囲のオークと同じくらいあります」


あたしの報告に瑶さんの眉間に皺が寄ったわ。


「一番強くなった時だとオークと比べてどのくらいの大きさになる?」

「そ、そうですね。瞬間的には3,いえ4倍くらい」

「……。目視できる距離まで近づいて確認しよう」


障害物の関係で森の中では高性能になったあたし達の目でも遠くから確認は出来ないのよね。さすがに”透視”なんてことは出来ないもの

そして近づいたあたし達の目にしたのは異様なものだったわ。


「引き上げよう」


瑶さんの一言にあたしも全く同意見だったので、あたし達はそのまま風下側に撤退したの。




「瑶さん、あれはいったい何だったんでしょう?」

「ん?朝未は気付くかと思ったんだけど」

「え?」

「多分、だけど。上位種への変異ってやつじゃないかと想像するんだが」


なるほど、複数のオークがくっついて混ざりあうようにして変異して上位種にってことね。


「あれ?それじゃ、本当は完全に変異が終わる前に斃した方が良かったんじゃ?」

「斃せるなら、ね。あのバケモノがどの程度の強さなのか情報が無さ過ぎるからね。それに斃せるつもりで突っかかって、斃し切る前に変異が終了して、いきなり強くなったりしたら困るかもしれないよ。だから今回はギルドに情報を流す方が良いと思ったんだよ」


なるほど。やっぱりこの辺りの考え方は瑶さんにお任せしたほうがいいわね。

あたし達は、引き揚げながらエリアの端でギルドの係員にオークが変異している可能性があることを話したのよね。とりあえずは、これで責任は果たしたことになるのかしら。


「では、エルリックのギルドで実際の様子をお話しいただけるようお願いします」


そうだろうとは思ったわ。どのみち討伐証明部位を持ち込んで報奨金を受け取らないといけないのでギルドには行くし大した手間ではないからいいのだけどね。




「オークの変異種、ですか?」


エルリックに戻ったあたし達は、その足でギルドに向かったの。そして変異種について報告したのだけど、そのときのアレッシアさんの反応がこれなのよね。ちょっと顔色が悪いわね。


「ええ、朝未の魔法で変な反応があったので様子を見たら見つけた感じです」


瑶さんが小声で周囲を伺いながら話しているわね。もうあたしが探知魔法を使えること自体はアレッシアさんにはバレてるみたいだから良いんだけど。


「どのくらいの規模の群れで、どんな変異状態でしたか?」


瑶さんがあたしに視線を向けたわね。はいはい、そこはあたしの出番よね。


「群れの規模は、おおよそ30体といったところでした。変異状態ってあれですよね」


ちょっとあれは口にしたくないわ。なので今度はあたしが瑶さんに視線を向けるの。あ、瑶さんが苦笑してるわね。


「何と言いますか、4体くらいのオークが溶け合っているような感じでした」

「4体ですか。そうなると……おそらくハイオークでしょう」

「ハイオーク?」

「ええ、強さは、そうですね。先日おふたりが斃された尻尾が6本のナインテールフォックス。あれと同じくらいでしょうか。少し遅い代わりに力が強い感じだと思ってください。ただ……」

「ただ?」

「ナインテールフォックスは単体で活動しますが、ハイオークはオークの群れをある程度統率するんです。これは少々面倒ですね。5級案件かしら」


「そんなにですか?」

「ええ、統率されたオークは面倒ですからね。しかも今のお話だと30体のオークを統率することになるでしょうから。今回は情報ありがとうございました。おふたりは8級ですから、これには関わらない方が安全だと思います」


そんなにやばいヤツだったのね。突撃しなくてよかったわ。

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