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第107話 朝未の料理①

「えっと、必要なものは……」

以前何かで読んだ小麦粉作りの工程を思い出しながら必要そうなものをそろえていく。目の違う大きめの篩を何種類か。風で飛ばした麦を受け止める箱は、そのものが売られてなかったので木工職人さんにお願いして作ってもらった。調質で寝かせるための箱もついでに。問題はその次の工程。全粒粉にするのならこのまま石臼で細かく挽いてしまえばいいのだけど……。日本では確か速さの違うベルトの間を通して皮を剝いていたけど、そんなものはここでは手に入らない。少しだけ考えて目の粗さの違う石臼を数種類準備して試してみることにした。現代日本では、その後も何工程も使って高品質な小麦粉にしていたはずだけど、さすがにそこまでは出来ないので、皮を剥いてできた胚乳をそのまま最終的な粉にすればいいわね。




「こんなにいくつも道具がいるんですね」


マルティナさんが興味深そうに見ているのでちょっとだけ説明。


「趣味に近い部分があるので絶対に必要なだけじゃなく少し良いものになるように揃えたのと、どのくらいのものが良いのかわからなくて種類をいくつか余計に揃えたので多くなってますね」

「そうなんですか。麦なんてそのまま石臼で挽いてしまえばいいと思ってました」



必要な物が準備できたまずは篩で仕分ける。

目の細かいものから順番にふるっていく。小さな砂粒が落ちていく。


「アサミ様。これは何をされているんですか?」

「いまやっているのは小麦に混ざっているゴミを取り除く作業ですね。ほら、砂粒や小さな石が落ちていくでしょう。少しずつ粗い目の篩に変えていって……、うん、3番目の篩が砂粒を仕分けられるサイズね。次は、ほらこういう麦わらの残りなんかを目の大きな篩でより分けるんです」


説明しながら篩に掛けていると3番目と5番目の篩を使うとちょうどいい感じに分けられた。小麦の種類によって違う可能性もあるので買ってきた小麦の種類別に丁度いい篩を調べていく。

ふるい分けが終わったところでそれぞれを別々の箱に入れて水を加える。


「アサミ様、いきなり水を掛けて何をされるのですか?」

「うん、こうしてしばらく置くと殻を取りやすくなるの。さ、これで1日放置します」

「かなり手間をかけるのですね」

「うん、せっかく色々な小麦が手に入ったから、こだわってみようかと思って。売ってる小麦粉も悪いとは言わないけど、色々余計なものが入っているから、こうやって作った、ちゃんとした小麦粉で料理したいと思っていたのよね」


次は、そうだ、香辛料も色々買ってあったわね。となれば異世界転移で求める定番ね。


「ちょっと食材買ってきます」


異世界でもクリフは色々と売っていてお買い物も楽しい。生鮮食料品に関してはそのまま食べる度胸はないけど。あたしにはクリーンもホーリーもある。お店で売っているレベルのものなら大丈夫だものね。


まずは八百屋さんって言えばいいのかしらね。野菜を主に売っているお店。


「そこのジャグンと、カーム、あ、コロネもあるじゃない……」


ジャグンはジャガイモっぽい、カームは玉葱っぽい、そしてコロネは人参ぽい。この世界に来て色々と試したから食材もなんとなく日本のものと対比して似たものが選べるようになったのよね。色とか形が違うから最初は大分失敗したけど今となっては普通に売っているものなら迷うことはないわ。


次は肉屋さん。この世界の食文化は、まだ発展途上みたいであたし達日本人なら喜んで使う材料が捨てられてたりするのよね。そういうものは捨てようとしているところで言うとタダでくれたりする。もちろんそのお店で別のものも買うわよ。


「おじさん、ボア肉4グルと、その骨捨てるならちょうだい」

「はいよ、いつもありがとうな。それにしても、こんな骨なんか何に使うんだ?」

「ふふ、そこは内緒です」


その他にもいくつか買い込んで家に帰る。


「さーて、これからが今日のお楽しみよ」

「朝未、悪いけど先に昼飯にしてもらえないかな」

「あ、忘れてた。瑶さんごめんなさい。マルティナさんもお腹空いたわよね。すぐに準備します」


まずは、朝のうちに仕込んでおいたパン種を出してくる。うん、いい感じに膨れているわね。そして、家を借りてすぐに土属性魔法で作った石釜風オーブンを火属性魔法で予熱する。うん、火属性魔法であってると思うのだけど、魔法書には載ってないのよね。なんかやってみたら出来たあたしのオリジナル魔法。聖属性ものっているから汚れもきれいさっぱり。そこに準備したパン種を並べる。きっと普通ならとっても熱くて火傷しかねないのだろうけど、素手で平気なのよね。むしろ服が焼けないように腕まくりして作業する。


そこまで済ませたら今度は、ボア肉を包丁で叩いてミンチにしていく。ミンチにしたお肉にみじん切りにしたカームや香辛料を混ぜて、水魔法で冷やしながら成型する。今日のお昼ご飯はハンバーグ。

乾燥キノコを鍋で煮込んで出汁を取って、そこに醤油っぽい調味料を追加。ちょっとスプーンですくって味見。うん、あたしとしてはちょうどいい感じ。

チラリとオーブンを確認して今度はフライパンでハンバーグを焼いていく。多分ハンバーグが焼きあがるころにパンも焼きあがると思う。

最後に大根みたいな味の根菜をおろし金ですりおろして、ハンバーグに山盛りにのせる。


「はい、できましたよ。今日のメニューは、おろしハンバーグとクリッカーパンですよ。ハンバーグにはソースをお好みでかけてくださいね。今回はスープ無しでごめんなさい」

「いやいや、朝未の料理はいつもうまいからね。毎食スープをとか贅沢言わないって」

「そうですよ。ハンターでアサミ様のほどの料理を作られる人は見たことも聞いたこともありません。本来であれば奴隷であるわたしがお作りするべきところをいつもありがとうございます」

「美味しく食べてもらえれば、あたしとしてはそれだけで嬉しいので気にしないでくださいね。さ、冷めないうちにたべましょう」



クリッカーは味と食感がクルミによく似たナッツ。これを初めて見つけた時には、その見た目にちょっと引いたのよねえ。もっとも今では大好物なのだけど。


焼きたてクリッカーパンとおろしハンバーグ。自画自賛になっちゃうけど美味しいわ。瑶さんもマルティナさんも美味しそうに食べてるわね。作った側としては美味しそうに食べてくれるのは最高にうれしいわね。


「朝未、和風おろしハンバーグだよね。懐かしくて美味しいよ」


ちょっと、瑶さん涙ぐんでない?大げさじゃないかしら。


「アサミ様、これは初めて体験する美味しさです。おふたりの国の料理なのですか?」


喜んでもらえたので最高ね。


「ふふ、喜んでもらえて嬉しいわ。夜はちょっと刺激的なご飯を予定してるからそっちもちょっと期待してね」


午後にはしっかり仕込みしないとね。

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