04 強さの自覚
かれこれ2時間近く魔法の練習をした。
そこでわかったことをもう一度まとめよう。
・魔法は無詠唱
・魔法は脳内でイメージするとそれに近いことが起こる
・魔力を込めると威力が上がる
・しっかりとイメージすれば同時に複数の魔法を発動できる
そして、最後にわかったことがもう一つ。
・私、強すぎるかも
そう、それはつい1時間以上前のこと。
『あ、そういや自分の最大ってどれぐらいなんだろ。』
そう思った私は、雷をイメージし、あたり一体の草木全てを切り倒すイメージをし、身体中の魔力という魔力を右手に集中させ、空に向かって魔法を撃った。
直後、
─────バリバリバリバリバリ!!!!!!
と、轟音をたてて、同時に目の前が真っ白になった。
次に目を開けた時、自分を中心にして直径1キロほどの開けた景色が広がっていた。
そこから、私は1時間近く、できる限り魔法の威力を弱める方法を試していた。
同時に分かったことがある。自分の最大の魔力を込めたのに、全く疲れていない。
普通は魔力を消費すれば疲れたりするものではないのか。
これは色々なことを考えないといけない。
そう思い、そして今に至る。
「ふぅ、こんなもんでいっか。あとは…」
試しに走ってみるか…
現実の私はあんまり身体能力高くなかったし……
異世界だと多少は強化されてるのかな…
しっかり踏み込んで………………
「…よーい……どん!!」
────ゴォォォォオッ!!!
「!?」
走った?
身体がめちゃくちゃ軽い。走ったというより、飛んだ?
そう、軽く2〜3歩踏み出しただけで、200mほどの距離を走ってきてしまった。
その衝撃で自分が先ほどまでいた地面はここからでもわかるぐらい掘り下がっている。
えっと、多分だけど、まずくない?
この世界の人々がみんなこれぐらいの速度で走れるなら問題ないだろうけどさ?
逆に今度は、足から魔力を逃すイメージで走ってみる。
すると、並大抵より少し速いぐらいの速さで走ることができた。
なるほど。こりゃ大変だね。
そこから1時間、私は普通の速度で走れるようになるまで、ひたすら走るのであった。
先程までの努力もあってか、魔力コントロールがより自然にできるようになってきた。
そして転生してからかれこれ5時間ほど経った時であろうか。
あぁ…腹減った…ラーメン食べたい…
そう思いながら歩いていると
「きゃあっ!?」
何やら叫び声が聞こえた。
ちょっと速めに走ってみると、そこには5mほどはある虎のような動物が、女の子を威嚇している姿があった。
えっ、あれやばくない?
とりあえず虎に向かって走り、その勢いのまま蹴りを入れてみる。
────ドゴォォォォ!!
虎がピクリとも動かん。
え、私やっぱり強すぎる。
っと、そういえば女の子が…
「………」
そこには口を開けたまま、虎よりも恐ろしいものを見るような目で私を見ている女の子の姿があった。
「えっと、大丈夫?」
「あっ、は、い」
「んーっと、怪我とかは?」
「だ、いじょうぶ、で、す」
…
気まずい。
教師時代に生徒と雑談することすらままならなかった私が、コミュ力など持ち合わせているわけがない。
「えっと…私はリンだよ」
「あっ、っとあの、助けてくれてありがとうございます。わたしはセリといいます」
「セリね、よろしくね」
「は、はい!」
…
会話が続かない。
んー、どうしよう。
困ったな。
すると、
「あの、リンさん、そんなに小さいのに、つ、強いんですね」
「ん?そんなに小さいって、セリよりは歳上だと思うけど。セリはいくつなの?」
「え!? そうなんですか!? わたしは14歳です」
なんだ、私の半分か…
「私はもう28歳よ」
「…? あの、冗談は…」
「何言ってるの? どっからどうみてもアラサーでしょ!」
やばい、いつもの独り言の口調になっちゃった。もっと冷静沈着クールにならないと。
あ、言葉遣いがちょっと汚いから歳上に見えないのかな? もっと綺麗な言葉を使えば歳上に見られるかも?
「あ、あの、リンさん、28歳なのにすごく可愛くて…その…幼いですね」
「…え?」
「え?」
「なにをいってるの?」
ん? この世界はファッションにも興味なく身だしなみにも興味なかった私が可愛いと言われるほどお世辞が好きなのか?
そう言われてみれば、私どんな服着てたっけ。
えっと。
ん? 何この服。
こんな服持ってたっけ。
……え、これって。
私が中学生の時に着てた服じゃん。
「えっと、セリ。わたしって身長どれくらいにみえる?」
「え? はい? えっと、145センチぐらいです」
「え?」
あれ? 私163センチぐらいはあったと思うんだけど。
え? ちょっと待って。
たしか…転生する条件…
『転生の条件があっての。ワシらに願いを捧げていた時間をワシらに欲しいんじゃ』
最後にオジサンが言ってたこと…
『14歳の凛も、ワシはなかなか可愛いと思うぞ』
………。
地面に手を当て、魔法で直径50センチほどの穴を開ける。
そこに、魔法で水を入れる。
風魔法で水が揺れないように周りをガードする。
綺麗な水鏡の出来上がりだ。
その穴を覗き込む。
…。
14歳頃の私じゃん。
一方その横。
無詠唱で魔法を簡単に発動し、土、水、風魔法を操っているリンを見るセリの表情は…。