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■第2章 日常

■第2章 日常


「ピピピピッ!ピピピピッ!」

ーーー朝だ。このアラームの音を聞くと死にたくなる。


休日は驚くほど目覚めがいいのに、仕事の日はなんでこんなにも眠いのだろうか。

いや、答えは分かっている。本能が仕事に行きたくないのだ。


体が動かない、あのフードの男に会ったときとは真逆の感情だが、脳が体を動かすことを拒否している。


「ピピピピッ!ピピピピッ!」


「わかったよ!ピピピピッ!うるさいなっ!!!」

自分でセットしたアラームに自分で文句をいいながら、

俺は、急いで身支度をし、いつも通りの電車に乗り、職場に向かった。


電車内はみんなスマホに目を向ける、いつもの光景がただ広がっている。

(電車に乗っている人の目はみんな死んでいるように感じるな。。あの世界の住人も始めは皆怯えていたが、

フードの男がいなくなった後は活気づいていたっけな。。)


「おはよう!ソラ!!死んだような目をしてどうしたのー?」

「うわ!いきなり声をかけるなよ、、びっくりしたな。」

後ろから電車の中だというのに大声をかけてきたマナーも何もなってない女は幼馴染のカナだ。

黒髪ロングのストレートという清楚な見た目とは裏腹に小さい頃から変わらずかなりの威勢があり、

身長も150センチ程度の大きさなのだが、態度がでかいため、俺はいつもペースを握られている。


「あははっ、ソラのびっくりした顔、面白っ!」

「・・・からかうなら他をあたってくれ、俺はいますごく疲れているんだ。」

小さい頃から何かしらからかわれ続けていて、精神的な苦痛を受けているためそろそろ正式に慰謝料を請求したい。


「朝からそれはそれは、お疲れ様です。そんなんで仕事大丈夫ー?」

「仕事くらい国王の命を救うことに比べれば、簡単だよ。」


「・・・国王の命?何言っちゃてるの?ゲームのやり過ぎね!!」

(・・・しまった、だいぶイタイやつになってる。。あの世界のことはもう、忘れよう)


「あぁ、ちょっと夜遅くまでゲームを遣り過ぎたんだよね。」


それからカナとたわいもない話をしながら、職場へと向かった。


***


こうしてまたいつもと変わらない仕事をする毎日に戻った。

誰がやっても同じの仕事を繰り返す毎日。いままでの人生で物語に書けるような出来事はなかった。


変わった事と言えば、少し前よりも無謀な挑戦もしてみるようになった。

根拠のない自信でもないよりはましで、動きださないと見えないものもあることをあの世界で学んだ。


「・・・遅くなったな」

仕事で無謀な挑戦をしたせいで最近は残業が多い、会社をでるころにはすっかり夜遅くになっていた。


だが、明日は休日だ!久しぶりに何か本でも読もう!

日常の中での小さな幸せを噛み締めようとしていた中、

そんな小さな幸せはあっという間に消えてしまう事件が起こった。


ーーーカナがさらわれた?!


幼馴染のカナの家はうちの真向かいにあり、そのせいで小中高と同じ学校に通うはめになっていた。

うちの両親もカナの両親と仲がよく、困ったときはお互い助け合っている。


事件の状況はこうだ。

もう夜もずいぶん遅いのにカナは連絡もなく心配していたところ、

カナの両親のスマホに倉庫のような場所でカナが縛られている写真が送られてきたそうだ。


誘拐犯は身代金5000万を要求しており、警察に連絡すれば娘を殺すと言われたそうだ。

そこでうちの両親に相談して、いまに至る。


「やっぱり、警察に連絡したほうがいいのだろうか」

カナの父親が息をのんだ後に、そうつぶやいた。

「いやよ!警察に連絡すれば殺すと言ってきているのよ?お金なんて払えばいいわ!」

声を震わせながらカナの母は叫んだ。いまにも泣き出しそうな顔をしている。


「いや、、お金は用意するとしてもこのままじゃ犯人のいいなりじゃないか。。」

カナの父親もかなり戸惑っている。


それもそうだ、大事な娘がさらわれ冷静な判断なんてできない。

俺を含め、俺の両親もなにも言えなかった。


「・・・・お金は私たちも協力してだします。

まずは犯人を刺激しないよう、身代金を払うことを連絡してみませんか」

うちの父親が沈黙を破り、まずはお金を用意しようということになった。


(・・・いや、それじゃあ犯人はつけあがるし、お金を渡したところでカナが無事な保証はない。

何より写真のカナは酷く怯えていた。。それもそうだ。。いきなりさらわれて。。

殺されるかもしれない状況だ。一刻も早く助け出さないと!!)


「・・・おじさん、その写真をよく見せてもらえますか?」

俺はカナの父親から、人質となった写真を見せてもらった。


(・・・倉庫だ。もちろん、これだけではどこの倉庫かは分からない。

だが、この場所のイメージができれば・・・)


「ありがとうございます。」

俺はスマホをカナの父親に返し、部屋にもどった。

部屋の中で武器になりそうなものを探し、ほとんど使っていないゴルフクラブを手にもった。


(・・・俺はやっぱり、あの世界にいって変わったな。

以前の俺ならいくらカナの危機だからといってここまで行動には移せなかっただろう。)


「・・・でも今は違う!俺は英雄なんだ!」

先ほどの倉庫の写真を強くイメージした。


(跳べ!跳べっ!魔法があるかなんて分からない。でもいま助けれるとしたらこれしかない!)

ーーー強く倉庫の場所をイメージし、あの世界で魔法を使ったように頭に力をいれたが。。

何も起きなかった、、


(くそ!やっぱり、夢だったのか?それとも何か条件が?!、、鍵だ!鍵を使えば!)


俺は机の引き出しの奥にしまっていた、ボロボロの本と、奇妙な鍵を急いで取り出した。

(頼む!!跳んでくれ!!)



キィーーーーン、ヴォンッ!!



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