■第1章 鍵
短編後の内容について連載再開しました!
「俺が、、英雄だーーーっ!」
ーーー今思えば、よくもまぁ、大声であんな恥ずかしいことが言えたものだ。
俺はあの世界から時代を超えて無事現代に戻ることができた。
魔法。王国。英雄。。。夢の世界だと思うほうがまともだろうが、
物置に落ちている重厚で年季の入った本と錆びているが確かにあの世界でみた鍵がここにある。
ひょっとしたら、夢の世界の出来事は実は現実だったのではないか。
本の背表紙にはほとんど擦れてしまって読みにくいが確かにネルと書かれている。
この本「英雄物語」の作者はあの世界で会った、天才少年ネルだったのだ。
だとすればあいつの言う通り、時代を超えたのだろうか。
なら、この物語は俺のことを記していたということになる。
いままでの人生で何もやってこなかった、この俺が大昔の過去の世界を救ってしまったのだ。
「・・・根拠がない自信でも、動いてみれば分かることもあるのかもな。。」
俺はまだ半信半疑ではあったが、古びたこの本と鍵を持って自分の部屋に戻った。
部屋に戻り、周りに誰もいないことを確認した後、一人静かにつぶやいた。
「・・・サンダー」
両手で何かを包み込むように構え、あの世界で俺が使えた魔法をやってみたのだ。
(確かこう、、稲妻が、走るイメージで・・・)
・・・しかし特に何も起こらない。一人両手を挙げたまま暫く時間が経った。
「ははっ、でるわけないか。やっぱり夢だったのかな。」
・・・少し寂しい気もした。もういい大人だが、魔法というのはロマンを感じるし、
この時代では誰も認めてくれる人はいないけれど、国を救ったというあの達成感。
そして命がけの戦いをしたあのヒリヒリするような感覚は、
いままでの退屈な人生の中でとても充実した時間だった。
「まぁ、あれが現実なら、あんな死にかけるようなまね二度とごめんだけど。」
そんなことを考えながら、実家暮らしで小さい頃からいつもと変わらない、
安い家具屋で買った部屋のベットに寝転びいつの間にか意識を失っていた。
「おい!ソラ!物置の掃除、全然やってねーじゃねーか!」
父の怒鳴り声が聞こえた。
「・・・あ、そういえばそんなことを言われてたっけ」
夢だとしても体感敵にはとてつもない時間が流れていたので、物置の掃除を頼まれた事など忘れていた。