■第2章 王国
■第2章 王国
「・・・では国を救いにきた英雄さん、まずは身元を確認させてもらいますね。」
俺は警護所とかいう場所に連行されるため、国に連れてこられた。
平原からだいぶ歩くと、大きな筒状の壁が現れた。
夢の中で初めて人工の建築物をみた。
この大きな灰色の石を積み上げた壁の中が国らしい。
見上げても端が見えない程の城壁に囲まれた正面の門を抜けると、
赤いレンガで作られた重厚な住宅がならび、道を歩く人は皆、魔法使いのようなローブを着ている。
日本では見られない光景だ。俺は異国の街並みに心を踊らせた。
ただ、どうしてだろう。皆、何かに怯えているような気がする。
パン屋や、鍛冶屋、住宅地などの街並みを抜けると、
国の中心地であろう中央にはいかにも王様の城といった大きな城が建っている。
俺は海外旅行に初めて着た子供のように辺りを見回していると、
城の手前の大きな刑務所のような建物に書きなぐったような字で警護所と書かれた建物を見つけた。
綺麗な街並から一風した無機質なコンクリートのようなもので造られた建物だ。
・・・どうやら俺はここに連れられるようだ。
警護所に連れてこられた俺は中にいた人たちに詰め寄られてた。
「身分を示すものはないのか。この服はどこの国のものだ?ポケットに入っているこの四角いものは何かね」
この世界ではスマホがないらしい。見ると電波が入っていないのであまり役にはたたないか。
「説明しても信じてもらえないでしょうが、ここは私の夢なんです。あなた達は私の空想ですよ」
・・・3、4時間お互いに平行線の会話を行い、時間の無駄だと思われたのだろう。
「ロイ。こいつはお前が見つけたのだから責任をもって管理するように。帰っていいぞ。」
長官と呼ばれる男からやっと釈放された。
こうして俺はロイとかいうやつと一緒に警護所をでた。
「すごいなお前、長官が根をあげるほどシラを切り通すなんて」
「・・・本当に何も知らないだからしょうがないだろ。夢なのに疲れる世界だ。」
「そんな様子じゃ泊まるお金や家もないのだろう?目を離す訳にもいかないし、
これも何かの縁だ。しばらくはうちの寮に泊まっていきなよ」
俺はロイの住んでいる警護官の寮に泊まることになった。
帰り道ロイといろいろ話したが悪いやつじゃなさそうだ。
いきなり警護所に連れてこられたことは水に流そう。
***
ーーー朝になった。夢の中で、寝て起きるのってあまり体によくないって聞いたことがある。
昨日ロイと話をして分かったことで驚いたのは、この国は魔法が使えるみたいだ。
しかし魔法といっても日常生活に使う程度の火や電気を生成する能力のようだ。
人に攻撃するような大きな炎などはほとんどの人はだせないらしい。
「お前、本当に魔法も使えないのか」
「そうだよ、だから言ってるだろ、これは俺の夢の中で、、」
「わかった、わかった、とりあえず火と電気はだせないと生活もできないから教えるぞ」
「おう。頼む」
「まず、フレイムな。手をだして炎が燃えるイメージをするんだ。」
そういってロイは手からテニスボール一個くらいの炎の塊をだした。
「すげー!!これ熱くないのか?」
「熱いよ。多少上に浮かしているから火傷はしないけど。とりあえずやってみな」
「フレイム!!」
手から炎をだすイメージで同じようにやったが、・・・火は全くでない。
「・・・・・別に声にださなくてもいいけど、もっと集中してイメージするんだ」
「・・・・・!!(フレイム!!)」
だめだ、全く出る気がしない。夢の中なら都合よくいくと思っていたのだが。。
「あははっ!おいおい、マジかよ。フレイムなんて小学生でもできるぜ。」
「・・・」
「サンダーはどうだ?同じように電気が走るイメージをするんだ」
「・・こうか?」
手から一筋の小さな稲妻が走った。
それと同時に乾燥した冬にドアノブに手を伸ばしたときに静電気が走る十倍程度の痛みが走る。
「イテッ!」
「おお、サンダーはできるのか。とりあえず部屋の電気とかはパネルにサンダーを流せばつくから
今日は部屋で魔法の練習でもしてなよ。俺は警護の仕事にいくよ」
「わかった。ロイ、いろいろありがとうな!」
俺は魔法が使えることに興奮しながら、感謝を伝えた。
「あぁ、監視してないと行けないから下手なことはするなよ。そのうち街を案内してやる。」
そういってロイはでかけていった。警護官も忙しそうだ。
俺はその後、一日中、魔法の練習をした。
サンダーのだし方のコツはなんとなく掴んできた。手からだすというよりは空中に発生させるイメージだ。
そうすれば痛くないし、ある程度の量の電気を発生させることができる。
ただ、電気を発生させると、とても疲れる。モーターを漕いでいる感覚に近いだろうか。
気軽にだせる訳ではなく、部屋の電気をしばらくつけるだけで疲労感がある。
結局フレイムはできなかった。
まぁ、自炊はそもそもしないからガスはなくても電気ができれば一応暮らしていけそうだ。






