■第5章 水の都 アトランタ
■第5章 水の都 アトランタ
「きれーい!!すごーい!!」
カナは街に着くなり、ずっとこの調子だ。
確かに俺も旅行でこんなところに来たら、さぞテンションも上がったことだろう。
だが、ここはついさっきも森で死にかけたように、とても危険な時代なんだ。
水色に彩られたガラスのような球体の中にお店が立ち並び、島と島の移動は橋や、船で行っているようだ。
「あんた、見かけない服を着ているねぇ」
歩いていると強気そうなお姉さんに声をかけられた。
(う、またか。確かに俺もカナも仕事帰りのままの服装でこの国では完全に浮いている。)
「とても遠くから来たものでして、、そうだ!アルバトロスという国を知りませんか?」
俺はネルの国、アルバトロス(確かこんな名前だったはずだ。)のことを聞いてみた。
「アルバトロス・・?」
「大きな石の壁に囲まれた、赤いレンガの国です。周りには草原が広がっています。」
「さぁ、知らないね。この近くには森はあるが、草原はないからね。」
「・・・そうですか。。」
「その国に用があるのかい?隣国にそのような場所はないから、かなり遠くになるはずだ。
まずはこの水の都でゆっくりしていきなよ。この国の服をあげよう。」
「いやいや、そんなにお世話になれないですよ!私たちお金も持ってないので。」
「いいんだ。少し人の役に立ちたい。そんな気分なんだ。私はイル。よろしくね。」
イルと名乗ったお姉さんはにっこりと笑った。
俺はなぜか、その笑顔を見たとき、無理して強気を装っている。そんな気がした。。
「イルさーん!!これおいしいー!!」
カナは水わたあめというこの国の名物をむしゃむしゃと頬張りながら叫んでいる。
こいつに遠慮というものはないのか・・・
「イルさん、、すみません。洋服ももらった上に、都を案内までしてもらって。。」
「いいんだよ。カナみたいに喜んでもらえると奢りがいがあるってもんだ」
世の中にはなんて心のやさしい人がいるのだろう。
俺は水わたあめを食べながら、感動していた。
「ん!たしかに!これおいしいですね!」
見た目は大きな球体で、わたあめのように橋をさしてもつのだが、かじるとまるでゼリーのような食感だ。
その上、口の中で完全にとけて飲み物のようなさわやかな後味になる
「この都では水を使った魔法が盛んでね。この水わたあめも液体を固定する魔法をつかっている」
水の魔法か、、確かに見渡すと水の流れで動くおもちゃや、
きれいな色の水が循環しているアクセサリーなどが売られている。
「ソラ!これきれい!このアクセサリーほしい!」
すっかり観光気分のカナはお金もないのにショッピングを始めてしまった。
・・・多分、これは現代に持ち帰ったら動かなくなるぞ。
至れり尽くせりとはこのことだろう。
結局夕飯もごちそうになり、イルさんの家に泊まらせてもらうことになった。
(俺はリビングのソファーで寝ることになった)
・・・今日は親切な人に助けられたが、これから先、どうしようか。。。
今後のことについて考えたが、とても長い一日だったので、俺は横になるとすぐに眠りについてしまった。
***
「・・・ごめんね。」