■第4章 森
■第4章 森
キィーーーーン、ヴォンッ!!
「痛ってー、なんなんだよ、、」
俺は目を開けると、森の中にいた。。え??森??
ーーーまさか、また時空間移動をしてしまったのか??
そして、横にはなんとカナが倒れている。。
まずい!まずい!ここはどこかは分からないが、カナまで巻き込んでしまった!
「おい、カナ!起きろ!カナ!!」
「・・・うーん、え、、ここどこ??」
カナは状況が把握できていないようだ。それもそうだろう、今日一日でいろいろなことが起こり過ぎだ。
「カナ、落ち着いて聞いてくれ。ここは魔法の国だ。帰る方法はあるから安心しろ。」
「魔法の国? あぁ、そういえばさっき、魔法がなんとかって、、」
「そうだ。別の世界に跳んでしまったんだ。厳密に言うと過去の世界なんだけど。」
「要するに私は夢をみているのね!ソラがあんなに格好いいはずないもの!ははっ!」
「いや、夢じゃない!・・っていっても信じられないよな、、」
まず、鍵を探そう。ネルの王国に行けばまた貸してもらえるはずだ。
俺はカナをなんとか説得し、森からでようとした時、背後に視線を感じた。
振り返るとゴリラのような体格で、ユニコーンのような一本角をはやした、
現代にはいない動物がこちらを威嚇するように睨んでいる。
「・・・えーっと。ゴリラホーンさん?あなたの縄張りを邪魔してすみません、すぐに出て行くので。」
言葉が通じる訳がないが、話しかけながら、カナの手を引き、走り出した。
「ヴォオオオオオオン!!!」
ゴリラホーンが叫んだ。耳が破れるような爆音だ。
ギラギラとした何本も生えている牙から涎れが滴っている。
必死に走って逃げたが、ゴリラホーンはひとっ飛びで俺たちの前に立ちふさがった。
逃げ切れない。戦うしかないのか。。
「ちょっとそこの角を生やしたゴリラ野郎!うるさいじゃない!私がお仕置きするわよ!!」
突然カナがゴリラホーンの前に立ち、騒ぎだした。
!?頭がおかしくなっているのか、いや、夢だから何をしても大丈夫と思っているのだろう。
そんなことをすれば後悔するのは俺が前回実証済みだ。
「カナ!余計な刺激を与えるな、ここは俺がなんとかする。」
特に策はなかったが、この時代ならば、恐らく魔法が使える。
「雷電激流!!!」
俺は手からサンダーをだしたが、やはり鍵がないためか、先ほどよりは威力が低い。
ゴリラホーンは痛がってはいるが、逆に怒らせてしまったようだ。
「ヴォオオオオオオン!!!」
ゴリラホーンが突進してきた。俺はもう一度サンダーを放ち、ゴリラホーンの目を眩ませた。
ゴリラホーンは方向感覚を失い、俺たちからはずれた方向に突進しだした。
「カナ、こっちだ!!」
俺はカナと一緒にこの森に跳んできた場所に走って戻った。
そこには鍵を持っていた手と逆の手で持ってきていた使われていないゴルフクラブがあった。
「よし、これで!」
俺はゴルフクラブの金属部分をもち、電流と磁界を発生させた。
「ヴォオオオオオオン!!!」
目が見えるようになったゴリラホーンはこっちに気づき、突進している。
(焦るな!焦るな!あの時と同じことをすればいいんだ!)
(・・・この感覚だ!ここでもっと強く電流を円形に回し続ければ・・!)
ゴリラホーンの角が届くギリギリのところで、俺はありったけの電流を一気に流し込んだ!!
「紫電一刀!!」
ーーーバチバチっ、ズドンッ!!
いまこの技の名前をつけたが、フードの男を倒したときに使った電磁誘導のようなもので
ゴルフクラブを吹っ飛ばした。
見事、ゴルフクラブはゴリラホーンの頭にあたり、そのままゴリラホーンは吹っ飛んだ。
飛ばしたゴルフクラブは蒸発・プラズマ化し溶けていった。
「・・・なんとか助かったか。」
「もーう!なんなのよ!あんたいい所とってちゃって!わたしに倒させなさいよね!」
カナはまだ能天気なことを言っている。。俺がこんなに必死で戦っているのに。。
ゴルフクラブは溶けてしまったため、紫電一刀はもう使えない。
はやく、この森を抜け出さないと!
(あ、、そうかこの時代なら魔法が使えるんだ。時空間移動をすればいいじゃないか!!)
「カナ。俺の手を離すなよ。」
「え?」
俺はカナの手を握り、ロイと一緒に過ごした寮を思い浮かべた。
「・・・あれ?」
暫く時間が経過したが、時空間移動は起きなかった。
「・・・あんた、やっぱ頭おかしくなったのね。ちょっと手を離しなさいよ!!」
バシィ!
強烈な平手打ちをくらい、俺は時空間移動をした後のような頭痛がした。
(なぜだ?この時代では魔法は鍵なしでも使えるはず、、何か知らない条件が他にあるのか??)
「痛ってー。。でも跳べないなら、仕方ない!一刻もはやくこの森を抜け出すぞ!!」
森の出口を探しながら、俺はカナにこの時代のことを伝えた。
「信じられないかもしれないけど、これは現実なんだ。」
「・・・夢の中じゃないってこと?」
まだ信じてもらえていなそうだが、そうこうするうちに、森の出口を見つけた。
実際、ここは夢の中ではないというのを説明するのはとても難しい。
とにかくいまは、俺と一緒に安全なところへ行くことについて納得してもらった。
森を抜けると、そこには人工的な道ができていた。
この道を辿っていけば、どこか人のいるところに出られるだろう。
カナにこの時代のことを説明していたが、正直なところ、俺自信もあの国以外のことは何も知らない。
時空を超えたときにはまた同じ草原にでるものだと思っていたが、そうではなかった。
この道を歩いて数時間経った頃、俺たちはその美しい光景に息をのんだ。
ーーー海の上に浮かぶ島々が、それぞれ橋でつながれて、一つの街をつくっている。
島の一つ一つに水色の球体のような建築物がいくつも建っており、その中で人々が暮らしていた。
水上の街の入り口の門には大きな字でこう書かれている。
「水の都 アトランタ」