結界の期限
「今はほとんど結界としての役割が果たせていない」
エリクスの説明に魔封石士2人が衝撃を受けているのがわかった。それを見つめながら、クロードは壁際に立ったまま何もできない自分の不甲斐なさに落胆していた。
クロード自身は魔力を相当持っている。だが、持っているだけで魔法を使うのは魔封石の制御がないとまだ無理だ。結界を張るだけの技術も当然持っていない。
「師匠がすぐに気づいて、今は師匠が結界を張っているところだ」
リーンがこの場にいないのは、消えかけた結界に気が付いてすぐに新しい結界を張るためだった。
「だが、師匠の魔力は底なしじゃない。結界石のように半永久的にとはいかない」
現役の7賢者の魔術師であるリーン=ラナスターなら、クロードよりもはるかに魔力を持っている。結界を張る技術も持ち合わせているため、新しい結界を彼自身の魔力で作っていた。だが、それにも限界はある。魔力が枯渇すれば、結界も消えてしまう。
「師匠が言うには3日が限度だそうだ。昨日1日をすでに使っているから、残り2日だ」
「あと2日」
ティアナの回復を待っている間に、リーンの魔力がなくなってしまう。
「俺も結界は作れるが、師匠のようにはまだいかない。持って1日だろうな」
エリクスが説明するが、その声は悔しさが混ざっているのがわかった。彼も7賢者の魔術師の弟子だ。魔力も高いし、リーンの元で魔術師として技術を磨いてきている。それでも彼の実力では1日持てばいいという。
「ぎりぎりあと3日は確保できるだろうが、結界石を作るのに時間がかかれば、結界の方が先に消える可能性が高い」
結界が消えたからといってすぐに何かが起こるわけではない。近くにいるかもしれない魔物が王都に侵入する可能性もあるが、一番国として恐れているのは、他国が王城の結界が消えたことに気が付いた時だ。護りが薄くなったことに気が付けばどんな行動を起こすかわからない。幸い今のところ隣国とは友好関係を築けてはいるが、良からぬことを考える人間は必ずいる。そこから綻びが生じて、国にとって大きな損害が出ることだけは避けたい。
「そうなると、できるだけ早く結果石を作らないといけないのね」
エリクスの説明を聞いて、ティアナが真剣に考えこむ。
「それなら、まずは魔力の回復を優先させないといけないわね」
しばらく考えていたティアナだったが、何かを思いついたのかディランを見た。
「ディランさんに作ってほしい魔封石があります。もう1日待てば弱い魔封石なら作れるでしょう」
ティアナは魔力を温存するため、作りたい魔封石をディランに依頼することにしたようだ。
「俺で役に立つなら言ってくれ。結界石が作れないんだ、欲しい魔封石は作ってやる」
胸を軽くたたいてディランが宣言する。
「お願いします。それと、クロード」
名前を呼ばれ視線を向けると、彼女は少し困ったような、それでも期待しているような表情を見せた。
「あなたにも手伝ってもらうわ」
魔力はあっても役に立たないクロードに手伝えることがある。何をするのかわからなかったが、それでも自分にできることがあるのなら、今は彼女の指示に従おうと思った。
「言ってくれ。できることはやる」
そう言うと、ティアナは嬉しそうに微笑んだのだった。




