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【書籍化】Fake Earth  作者: Bird
第0章 Now Loading
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5話 10分間の質疑応答(Answer)

 質問者:イ・ハヌル(19歳・男性)

 職業:アイドル/国籍:韓国

【Q10】

 これがゲームなら「セーブ」とか「コンティニュー」はあるのか?

 個人的にはない方が燃えるんだけど。


【A10】

『Fake Earth』には、セーブもコンティニューもありません。

 現実世界でみなさまが時間を止めることや過去に戻ることができないように、このゲームも一時中断とやり直しはできないシステムとなっています。



 質問者:テオ・ブラウン(8歳・男性)

 職業:YouTuber/国籍:カナダ

【Q11】

 じゃあさ、「ギブアップ」ってできる?

 ぼく途中で飽きたら、お家に帰りたいし。


【A11】

 他プレイヤーのコインを3枚集めれば、プレイヤーはいつでもギブアップすることが可能です。

 電話アプリで自分のプレイヤーIDをダイヤルして、運営に「ギブアップ」を申請すれば、みなさまは『Fake Earth』をプレイしていた頃の記憶を失う代わりに、現実世界に帰還して普段どおりの生活に戻ることができます。

 ただし、ギブアップした場合、『Fake Earth』をふたたびプレイすることは認められません。


 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()


 チャレンジは1回かぎりですので、その点だけご注意ください。



 質問者:ネコ(18歳・女性)

 職業:傭兵/国籍:無国籍

【Q12】

 もしコイン7枚集めてゲームクリアしたら、またプレイすることってできないの?

 7人殺して10億円なら、いい収入源だしライフワークにしたいんだけど。


【A12】

 他プレイヤーのコインでクリアしたプレイヤーは、『Fake Earth』にふたたび挑戦することができます。

「ゲームマスターを倒す」というエンディングを迎えないかぎり、『Fake Earth』のサービスが終了することはありません。


 またゲームマスターを倒してクリアした場合でも、他プレイヤーのコインでゲームクリアした場合でも、みなさまはゲームで体験したことを忘れることはありません。

 クリアしたプレイデータが消えないように、みなさまの素晴らしき成功体験も記憶に残りますので、ご安心ください。



 質問者:ブルーノ・サンパイオ(63歳・男性)

 職業:投資家/国籍:ポルトガル

【Q13】

 最初に「チュートリアル」とかないのかな?

 おじさん、誰かに手取り足取り教えてもらわないと不安でね〜。


【A13】

 プレイ前にルール説明と質疑応答を行っても、ゲームは実際にプレイしたときに疑問が出てくる場合があります。

 そのため、運営はプレイヤーがゲーム開始から24時間以内にチュートリアルと接触できる機会を用意しています。

 もちろん、「自分で考えながらプレイしたい」と感じるプレイヤーもいますので、ゲーム内のチュートリアルはスキップ可能です。



 質問者:デズモンド・ノア(44歳・男性)

 職業:無職/国籍:南アフリカ共和国

【Q14】

 ゲームと現実世界を区別するものはあるか?

 たとえばアバターは痛みを感じないとか。

 ──俺がいた頃と変わってないなら、お前たちはそういう遊び心を入れるだろう?


【A14】

 まず、みなさまの感覚は、現実世界と変わりありません。

『Fake Earth』で怪我をすれば、脳から痛みを感じさせる信号が送られてきます。

 大気のウィルスが体内に入れば、インフルエンザの発熱で苦しむこともあります。

 もし自分の手で心臓にナイフを刺せば、死ぬ瞬間の感覚を体験できるでしょう。


 ただし、現実世界の肉体との相違点として、アバターの血は「シアン色」に変更されています。

 これはプレイヤー同士の戦闘が「現実世界」ではなく、「ゲーム」での出来事だと認識してもらうための措置です。



 質問者:ビアンカ・ゴルゴーネ(29歳・女性)

 職業:マフィア/国籍:イタリア

【Q15】

 プレイヤーとNPCを見た目で区別することはできるのかしら?

 NPCと見分けがつかないなら、コインのために無差別に殺してくしかなさそうだけど、あんまりヒドいことはゲームでも気が進まなくて……。


【A15】

 プレイヤーとNPCを見た目だけで区別することはできません。

 大勢のNPCたちがいる環境下で、いかに敵プレイヤーを自分が見つかる前に探し当てるのか?

 FPS/TPS系のゲームと同じように、「索敵」は『Fake Earth』にとっても重要な要素の1つです。


 その一方で、プレイヤー同士が対戦しやすくするために、『Fake Earth』では「()()()()()()()」というシステムを導入しています。

 これは運営がみなさまのスマートフォンに警報音を鳴らしている間、「近くにいるプレイヤーの現在位置」をロック画面に表示された地図で見ることができるものです。

 バトルアラートの配信頻度は週におよそ1回、時間は5分間鳴らしますので、ぜひゲーム攻略にご活用ください。



 質問者:ミネス・ミミズク(25歳・女性)

 職業:ペット散歩代行業者/国籍:アルゼンチン

【Q16】

 あの〜プレイ中の「お金」はどうなります?

 お金がないと、私たち生活できませんよね~?

 なんていうか、人生賭けたゲームに参加するわけですし~、軍資金をたっぷりもらえませんか~?


【A16】

 支給するスマートフォンの電子マネーを活用ください。

 ゲーム開始時とプレイ時間30日間が経過するたびに、毎回100万円ずつ自動でチャージします。

 このほかプレイヤーはお金を現実世界と同じ方法で稼ぐことができます。

 必要に応じて、投資やギャンブルなどで、所持金を増やしてください。



 質問者:エドワード・ウェブスター(30歳・男性)

 職業:探偵/国籍:イギリス

【Q17】

 ゲームマスターの情報を教えてくれ。

 いくら何でもノーヒントというのは、この名探偵エドワード・ウェブスターをもってしても、さすがに手こずると言わざるを得ないんだが。


【A17】

 ゲームマスターの情報について、みなさまが満足できる回答をすることはできません。

 これは「ネタバレ防止」のためではなく、「ゲームマスターの外見的特徴は何もない」としか答えようがないからです。


 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 そして、『Fake Earth』が現実世界を再現しているように、その変装も外見は完璧に再現しています。

 場合によっては、みなさまがよく知るアバターに変装することもありますので、いかなるときも観察を怠らないようご注意ください。



 質問者:アンナ・ソルダトワ(44歳・女性)

 職業:弁護士/国籍:ロシア

【Q18】

 私がお訊きしたいのは「数字」です。

「①現在『Fake Earth』にいるプレイヤー」、「②ゲームオーバーになったプレイヤー」、「③ギブアップしたプレイヤー」、最後に「④他人のコインでゲームクリアしたプレイヤー」、以上4点のデータをお願いします。


【A18】

 ご質問に対する回答は次のとおりです。

 ゲームに参加中のプレイヤーは「21万9224名」。

 ゲームオーバーになったプレイヤーは「108万425名」。

 ギブアップしたプレイヤーは「3万7564名」。

 そして、他人のコインでゲームクリアしたプレイヤーは「891名」です。



 質問者:藤堂頼助(17歳・男性)

 職業:高校生/国籍:日本

【Q19】

 これは「質疑応答に見せかけたルール説明の続き」か? 

 今この場にいる「俺以外の参加者全員」は、お前たちアーカイブ社が作ったフェイクだろう?


【A19】

 ──正解です。

 プレイ前のデモンストレーション、お楽しみいただけましたでしょうか? 



────────────────────────

 質疑応答時間が終わったことを知らせる、大音量のアラーム音が鳴り響く。

 直径10mのラウンドテーブルの天板には、「『Real World』→『Fake Earth』」と光った文字が映し出された。

 頼助は挙げていた手を下ろす。

 自分の胸に手を当て、「生きている」感覚が手のひらへ伝わることを確かめる。


 他の18名のプレイヤーたちは全員いなくなっていた。

 挙げていた手の指が6本あったトルコ人の男性も、民族衣装のニュージーランド人の少女も、誰もかれも綺麗さっぱりと消えている。

 いったいどんな技術を利用して、アーカイブ社は人間のフェイクを生みだしたのかはわからない。

 消えた参加者は全身がホログラムのように透けていなかった。

 整髪料で固めた光沢のある髪型や手の甲に浮き出た血管などの質感はリアルだった。


 人間として間違いなく実在しているように見えた。


──もし参加者全員が日本人だったら、きっと質疑応答が終わるまで「フェイク」に気づかなかっただろう。


 本物だと思っていたものが、アーカイブ社が作った偽物だった。今まで当たり前だと信じていたものが正しいものなのか、急にわからなくなる。


「……なあ、俺は本当にリアルに存在してるのか?」


 誰もいない部屋で、頼助は問いかける。

 時間切れの質問に答えが返ってくることはなかった。


────────────────────────


 さて、プレイ前のデモンストレーションは以上をもちまして終了です。

 これより『Fake Earth』の世界へ転送するために、プレイヤーの意識の接続を開始します。

 意識の接続が完了するまでの時間は5分──この時間をどう過ごすのかは、プレイヤーのご判断にお任せいたします。


 もしゲームのルールを再度確認したい場合は「Aボタン」を、家族や友人にメッセージを残したい場合は「Bボタン」を、プレイを中止したい場合は「Cボタン」を、ただいまお手元に用意しましたコントローラーから選択してください。


 また新たな質問が思いついた場合は、運営のチュートリアル担当社員にお尋ねください。我々はプレイヤーが“最善”を尽くしてくれることを望んでいます。


 準備はいいですか? 

 覚悟はできましたか? 

 もしものとき思い残すことはありませんか?


 ……それでは意識の接続を開始いたしましょう。

 『Fake Earth』、みなさまの世界によく似た空間へようこそ。


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― 新着の感想 ―
[良い点] まだ導入部分ですが、ここまででも作品の面白さや不気味さがすごく伝わってきて面白いです。先生の感じている違和感や諦観などの描写がすごく丁寧に感じました。
[良い点] まだ何も始まってないのにワクワクする…!
[一言] とりあえずここまで読ませていただきました。 設定が細かく分かりやすいですね、またなろうに珍しいとも言える硬めの文章(悪い意味ではなく、丁寧でライトノベルというよりはオーソドックスな小説のよ…
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