薄靄
薄靄の中、日が少しずつ昇っていく。
空が少しずつ明るくなっていく。
鳥が鳴き、静かな羽音がする。
やがて日が辺りを払い、朝となった。
「日の出……か。見事だな」
「また一つ素直になった」
「そうだな。やはりリンのおかげかな?」
「そうであろう」
2人で静かに笑った。悪くない。
「ねぇねぇ、忘れてませんかーっ? ここにもいますよ!!」
シンもまた心に添う存在なのだろうか?
だとしたら内面にアホ思考があるということになる。
それも悪くないが、残念でもある。
いや内面と関わりはあるとしても、そのものとは限らない。
相反するものである可能性さえある。どうであれ俺の取るべき道は変わらない。
「……いいんだ、わかってるよ。でも少しは優しさがあっても」
ぶつぶつ言いながら、ちらちらこちらを見てくる。
時間の問題だ、案ずるな。
枝に引っかかるシンへ、とびきりの笑顔を送る。
「ここには案内人の他にいないのか?」
「私の記憶の限りでは、私以外いない」
リンの瞳が何かを超克したように光った。
「そして案内できるのは常に1人。この場所はただ1人の心に添うためにある」
どさっと激突音が響いた。
シンが何かをまくしたてながら駆け寄ってくる。
それを理解していながらも、何一つ感知できないでいた。
初めて会った時から分かっていた事。
改めてリンから突きつけられる事実に落胆した。
案内人は1人ではあるが、彼女が案内する相手は1人ではないのだ。
「すまなかった、シン」
いまだまくし立てているシンに謝罪。
キョトンとして口が止まった、その横をすり抜けて滑り落ちるように崖から飛んだ。
「コウっ?!」
初めて聞いたリンの驚きの声がどこか薄寒く感じた。




