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ロスト  作者: 林 晄史
始まり

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5/25

薄靄

 薄靄の中、日が少しずつ昇っていく。

空が少しずつ明るくなっていく。


 鳥が鳴き、静かな羽音がする。

やがて日が辺りを払い、朝となった。


「日の出……か。見事だな」


「また一つ素直になった」


「そうだな。やはりリンのおかげかな?」


「そうであろう」


 2人で静かに笑った。悪くない。


「ねぇねぇ、忘れてませんかーっ? ここにもいますよ!!」


 シンもまた心に添う存在なのだろうか?

だとしたら内面にアホ思考があるということになる。


 それも悪くないが、残念でもある。


 いや内面と関わりはあるとしても、そのものとは限らない。

相反するものである可能性さえある。どうであれ俺の取るべき道は変わらない。


「……いいんだ、わかってるよ。でも少しは優しさがあっても」


 ぶつぶつ言いながら、ちらちらこちらを見てくる。

時間の問題だ、案ずるな。


 枝に引っかかるシンへ、とびきりの笑顔を送る。


「ここには案内人の他にいないのか?」


「私の記憶の限りでは、私以外いない」


 リンの瞳が何かを超克したように光った。


「そして案内できるのは常に1人。この場所はただ1人の心に添うためにある」


 どさっと激突音が響いた。

シンが何かをまくしたてながら駆け寄ってくる。


 それを理解していながらも、何一つ感知できないでいた。

初めて会った時から分かっていた事。


 改めてリンから突きつけられる事実に落胆した。


 案内人は1人ではあるが、彼女が案内する相手は1人ではないのだ。


「すまなかった、シン」


 いまだまくし立てているシンに謝罪。

キョトンとして口が止まった、その横をすり抜けて滑り落ちるように崖から飛んだ。


「コウっ?!」


 初めて聞いたリンの驚きの声がどこか薄寒く感じた。

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