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ロスト  作者: 林 晄史
劇場
23/25

絶頂

 シンとセッキの死体が徐々に腐敗していく。

まだ死後、10分と経っていない。


 死体が朽ちてしまっては、復帰する事は不可能。


「我が力の糧として生きよ」


 シンは死体を見向きもせず呟いた。

今までもこれからも、こうして能力を奪っていくのだ。


 この2人の死体が消えた時、シソは二人の力を得ることができる。


 その力を得た時に走る電流は、シソに快感をもたらす。

瞬時に消えるが、あまりにも深く貫かれる為、何度も味わいたいものだ。


「残るはコウとリンにシズク……か」


 シソは想像し興奮する。

どれほど深く快感を与えてくれるのだろうか。


 シソには全てが食料としか見えないのだ。


「ふふっ……ん?」


 妄想だけでエクスタシーにひたるシソは、違和感を抱く。

死体は変わらずあるし、何者かの気配もない。


 念の為、くまなく見て回ったが、何も発見できない。


「何かあるはずだが……」


 シソは自身の直感を信じるタイプだ。

違和感は間違いない、だが何も変化はない。


 10分が経った。

2人の能力がシソに流れ込み、激しい快感がシソを貫く。


「………!!」


  声にならない叫びをあげるシソ。

完全にいってしまった。


 シソは意識を飛ばす。

それは一瞬のことだった。


 だがそれがシソに致命的な遅れをもたらした。








  洞窟の物量によって降下速度は、ぐんぐん上がっていく。

落下した途端に、洞窟は砕かれ、とてつもない衝撃に貫かれるだろう。


 その恐怖に震え、叶う叶わないは別として、対策を講じ備える必要があった。


 だが洞窟内の誰一人として動くものはいなかった。


 美しい銀髪は無残に乱れて、紅の瞳は見開かれたまま力を失っていた。

全身を巻き付かせる縛りは、陶酔と高揚をシルビアにもたらした。


 果てることなき絶頂に失神してしまったのだ。


 そしてシルビアの持つ全ての能力は、コウに奪われた。

その容赦なき選択にシズクは苦悶の表情。


 コウが人外の所業を平然とする様は、悪鬼羅刹の類であった。

なのに違和感が全くなかった。


 コウの放つ気配が人外そのものとなっていた。


「シズク、リンを頼む」


「……任せておきなさい。能力は活かすわ」


 シズクはシルビアの持っていた能力から、完全復元を奪っていた。

この世の全てを対象とした完全復元はチートともいえる。


 それを持つシルビアは正攻法では倒せなかっただろう。


「……また後で」


  シズクの万感の想いがこもった一言に、コウは軽く手を上げ、決戦の場へと転移していった。



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