絶頂
シンとセッキの死体が徐々に腐敗していく。
まだ死後、10分と経っていない。
死体が朽ちてしまっては、復帰する事は不可能。
「我が力の糧として生きよ」
シンは死体を見向きもせず呟いた。
今までもこれからも、こうして能力を奪っていくのだ。
この2人の死体が消えた時、シソは二人の力を得ることができる。
その力を得た時に走る電流は、シソに快感をもたらす。
瞬時に消えるが、あまりにも深く貫かれる為、何度も味わいたいものだ。
「残るはコウとリンにシズク……か」
シソは想像し興奮する。
どれほど深く快感を与えてくれるのだろうか。
シソには全てが食料としか見えないのだ。
「ふふっ……ん?」
妄想だけでエクスタシーにひたるシソは、違和感を抱く。
死体は変わらずあるし、何者かの気配もない。
念の為、くまなく見て回ったが、何も発見できない。
「何かあるはずだが……」
シソは自身の直感を信じるタイプだ。
違和感は間違いない、だが何も変化はない。
10分が経った。
2人の能力がシソに流れ込み、激しい快感がシソを貫く。
「………!!」
声にならない叫びをあげるシソ。
完全にいってしまった。
シソは意識を飛ばす。
それは一瞬のことだった。
だがそれがシソに致命的な遅れをもたらした。
洞窟の物量によって降下速度は、ぐんぐん上がっていく。
落下した途端に、洞窟は砕かれ、とてつもない衝撃に貫かれるだろう。
その恐怖に震え、叶う叶わないは別として、対策を講じ備える必要があった。
だが洞窟内の誰一人として動くものはいなかった。
美しい銀髪は無残に乱れて、紅の瞳は見開かれたまま力を失っていた。
全身を巻き付かせる縛りは、陶酔と高揚をシルビアにもたらした。
果てることなき絶頂に失神してしまったのだ。
そしてシルビアの持つ全ての能力は、コウに奪われた。
その容赦なき選択にシズクは苦悶の表情。
コウが人外の所業を平然とする様は、悪鬼羅刹の類であった。
なのに違和感が全くなかった。
コウの放つ気配が人外そのものとなっていた。
「シズク、リンを頼む」
「……任せておきなさい。能力は活かすわ」
シズクはシルビアの持っていた能力から、完全復元を奪っていた。
この世の全てを対象とした完全復元はチートともいえる。
それを持つシルビアは正攻法では倒せなかっただろう。
「……また後で」
シズクの万感の想いがこもった一言に、コウは軽く手を上げ、決戦の場へと転移していった。




