シソ
「それだけか」
静かにシソはつぶやいた。
「セッキの合流の他は予測の範囲内と推察いたします」
美しい銀髪が月を反射して輝く。
その目は紅く、銀髪により、美しく煌めく。
妖しさすら漂わせる、まさに絶世の美女。
「シルビアが言うのならば確かだな」
「シソ様、リンだけは処する必要があります」
シソはアゴを撫で思索する。確かに必要であろう。
破邪だけは読めない。邪の範囲があまりにも広義過ぎるのだ。
「一任する」
「かしこまりました」
シルビアの姿は闇に消えた。
ただ静かに佇むシソは、窓から射す月に照らされている。
「闇雲に探すしかないとはいえ、骨が折れるな」
「シズクの探知機がないと処置なし」
コウのぼやきにリンがうなずく。
夜だが雲1つなく、闇に慣れた目には眩しすぎるほどだ。
今日もまた探知機を設置してきた。
ロストの広さがどこまでなのか、今夜のポイントでつかめるはずだ。
「あいつらは大丈夫だろうか?」
めずらしく他人の心配をするコウを、リンは優しく見つめる。
セッキとシン組は脳筋ではあるが、野生のカンが働く。
的確に探知機を設置するのだ。
「仲間と認めた?」
「そこまでではないよ」
敵ではないというだけで、随分と変わったとリンは感心する。
コウはリン以外ではシズクぐらいしか頼らない。
シンやセッキなど眼中にはないという感じだった。
度重なる探索は調査だけに止まらず、連帯感を生み出しつつあり、コウがそれを受け入れつつある事が、リンは嬉しかった。
「コウ、愛している」
リンはそっと手を取り、キスをした。
コウは力強く抱き返した。
温かく優しく愛おしい。
「なんのつもりだ」
コウはリンの前に出ながら、強烈な殺気に向き合う。
相手の姿は見えないのに、察知させてくるのは、相当に自信があるという事だろう。
「さようなら」
コウの背後で声がした。即座に振り向くその先には。
「!!!」
叫び近づき、血塗れのリンを抱きしめる。
息もない。
視界がにじみ、意識が吹っ飛ぶ手前で止める。
自身の無力さとかろうじて捉えた敵に、コウは殺意や憤怒が入り混じった激情が暴発していた。




