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ロスト  作者: 林 晄史
劇場
18/25

シソ


「それだけか」


  静かにシソはつぶやいた。


「セッキの合流の他は予測の範囲内と推察いたします」


  美しい銀髪が月を反射して輝く。

その目は紅く、銀髪により、美しく煌めく。


 妖しさすら漂わせる、まさに絶世の美女。


「シルビアが言うのならば確かだな」


「シソ様、リンだけは処する必要があります」


  シソはアゴを撫で思索する。確かに必要であろう。

破邪だけは読めない。邪の範囲があまりにも広義過ぎるのだ。


「一任する」


「かしこまりました」


 シルビアの姿は闇に消えた。

ただ静かに佇むシソは、窓から射す月に照らされている。






「闇雲に探すしかないとはいえ、骨が折れるな」


「シズクの探知機がないと処置なし」


 コウのぼやきにリンがうなずく。

夜だが雲1つなく、闇に慣れた目には眩しすぎるほどだ。


 今日もまた探知機を設置してきた。

ロストの広さがどこまでなのか、今夜のポイントでつかめるはずだ。


「あいつらは大丈夫だろうか?」


 めずらしく他人の心配をするコウを、リンは優しく見つめる。

セッキとシン組は脳筋ではあるが、野生のカンが働く。


 的確に探知機を設置するのだ。


「仲間と認めた?」


「そこまでではないよ」


 敵ではないというだけで、随分と変わったとリンは感心する。

コウはリン以外ではシズクぐらいしか頼らない。


 シンやセッキなど眼中にはないという感じだった。


 度重なる探索は調査だけに止まらず、連帯感を生み出しつつあり、コウがそれを受け入れつつある事が、リンは嬉しかった。


「コウ、愛している」


 リンはそっと手を取り、キスをした。

コウは力強く抱き返した。


  温かく優しく愛おしい。


「なんのつもりだ」


 コウはリンの前に出ながら、強烈な殺気に向き合う。

相手の姿は見えないのに、察知させてくるのは、相当に自信があるという事だろう。


「さようなら」


 コウの背後で声がした。即座に振り向くその先には。


「!!!」


 叫び近づき、血塗れのリンを抱きしめる。


 息もない。


  視界がにじみ、意識が吹っ飛ぶ手前で止める。


 自身の無力さとかろうじて捉えた敵に、コウは殺意や憤怒が入り混じった激情が暴発していた。

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