分れ道
「何故、来ない」
金髪の合間から汗が流れ落ちる。
春の夜は空気は冷たく、探索の疲労も特にはない。
それでもまた一筋、リンの首から汗が滴り落ちた。
パキッと枝を折る音が響く。
「まだ来てないのかーっ!!」
鋭く振り返るリンに、シンは相変わらずのんきにのたまった。
リンはシンを無視して懐中時計を取り出す。
合流できない場合の目安として、コウと同じモノをシズクに用意してもらったのだ。
針は予定時間の10時を15分過ぎていた。
道に迷ったのだろうか?
地図は道なき道の探索ではあったが、今日は街灯1つないロストを月が明るく照らしている。
何度か共に探索を行なったが、コウは方向感覚はあった。
それどころか頼もしく引っ張ってくれていたのだ。
何かヒントを得て探索しているか、何者かと接触したか。
どちらかと考えて間違いない。
想定される最悪の場面は何者かと敵対行動を取ることで、そうなっていると考えた方が良いだろう。
コウは合流できない場合は洞窟に戻るように言っていた。
いざとなれば空間移動で行けるからと。
しかしそれすら取れない窮地の可能性もある。
道は四つ。
更に先に進む、リンかシンの来た道を戻る、そしてコウが来るであろう道。
リンには道は一つにしか見えなかった。
「洞窟戻るかーっ!?」
シンはリンと同じ道を見ながら問いかけてきた。
「この道を行く。シンも来ますか?」
2人はうなずき合い、コウが来るであろう道を進んでいった。
ロストは土道で繋がっている。
洞窟を中心として、その土道に沿って探索を連日続けてきた。
往復2時間までの距離を昼と夜の2度ずつ、円を描くように繰り返し潰してきた。
今夜は初めての分かれ道があり、その本数は図ったように三手。
各自で少しだけ進んでみて、来た道を戻る手筈だった。
それが思いの他に早く合流地点があった。
シンが来た事から、コウが残る道から来るのは間違いないはずなのだ。
突然、視界が爆発した。
目前に青髪の大男が現れた。
シンを見ると爆発にすら全く気付いていない様子で静止している。
阻害系の能力を破邪が封じているとリンは推察。
大男が大振りのハンマーを全力で振り回し始めた。
回転力が最高潮に達し、リンを目掛けて打ち下ろしてくる。
地面を割り、土煙りで辺りがおおわれる。
土煙りが消えると大男が大の字で突っ伏していた。
「でっかいのが落ちてきたなーっ!!」
シンが目を丸くしている。
リンは大男に拘束具を入念にかけると、矢を回収した。
リンは短い矢を射出できる籠手を装着している。
その矢に強烈な麻痺毒が仕込まれている。
「効き目が切れるのも早そう」
大男の目的を聞いておく必要があるが、増援が来るとしたら息を止めておいた方が良い。
リンが思案しつつ、指一つ動かないように拘束を完成させる。
「血がついてるなーっ!!」
シンがハンマーを片手でぶん回しながら見る。
小さい赤髪の少年のどこにこんな力があるのか不思議である。
能力は基本的に1人1つだが、シズクのように例外はいる。
シンも2つの能力があるかもしれない。
「シン、この大男の肩と腰骨をハンマーで潰して」
「あいよーっ!!」
3度地が鳴る。
大男がうめき声をあげる。
リンは眉1つ動かさず大男を見つめる。
「貴方の能力を話しなさい」
大男は無言を返事と「うぐっ……!!」リンの拳か肩にめり込む。
「私達の前に戦ったのはいつ頃?」
「さっ……きだ」
言葉による能力はないと見て、容赦なくリンは詰問する。
大男は差し支えないと考えたのか答える。
「まだ真新しいなーっ!!」
シンも血を確認して、声をあげた。
「他に仲間は?」
しばらくリンの詰問と殴打する音が響いたが、大男が答えたのは一言だけだった。




