第3話 小さな冒険
かなり更新が遅くなってしまいました。
今回は少し長めに書いておきましたので、どうかお許し願います。
(まぁ、あんまり見てる人多くないから、大丈夫だよね…)
この異世界に生まれて早くも6ヶ月がすぎた。最近になって俺は、手と足を使いながら移動する手段を取得した。
…いや、別に特別すごいことじゃない。ただのハイハイだ。
俺は、この移動手段を習得するまでに、ジークスとルーラリアの寝室と居間、お風呂しか行ったことがなかった。
この家には、ほかにどんな部屋があるのか。異世界初心者には到底想像できなかった。
とりあえず、俺が今現状把握しているのは、この家は2階建てで、2階には俺がいつもいる寝室、1階の玄関から見て右側に居間、左側にお風呂があるという事だけだ。
という訳で、俺はとりあえず2階から攻略しようと思っている。なんでかって?今の身体能力では恐く階段は強敵だからだ。
しかし、そんな攻略はハイハイを始めた頃は困難を極めた。なにせ、ハイハイをしただけで、両親は大はしゃぎして四六時中俺を拘束したのだ。つまり、俺を愛でまくったのだ。
「まあっ!ジーク!!ルークスがハイハイしたわ!!なんて可愛らしいのかしら!」
「本当か!?ハイハイをしたのか!!あぁ、本当に可愛いなぁ…ずっと見ていても飽きない…」
「さぁ、ルークスぅ。ママのところまで、いらっしゃーい」
俺としては、早く部屋の外に行きたいのに…そうはさせてくれない。まぁ、子供の頃はこんな感じで愛情をもらって、すくすくと育つんだろうな。
俺は仕方なく、ルーラリアの方へとハイハイして、そして彼女の腕の中まで進んだ。
「ルークスは偉いわねぇ」
そして、ルーラリアの腕の中で優しく包まれる。
なぜだろう。仕方なくやっているはずなのだが、彼女の腕に包まれると、とても安心する。これが愛情とでも言うかのような幸福感が俺を満たした。
俺は、とてつもなく一つの単語を伝えたくなった。上手く言える自信なんて無いが、喋らなければ何も伝わらないのだ。そう思いながら、俺は自分なりに一生懸命声を出した。
「アッ…マ…マッ……ママ」
「「っ!?」」
ジークスとルーラリアは顔を見合わせる。そう、俺は遂に意味のある言葉を言うことができたのだ。
「ジーク…今の…聞いた?」
「あ、あぁ…ママって言ったな…」
「っ…!」
ルーラリアの瞳から涙が溢れた。
「ぐすっ…そうよ、私がママよ」
「そうだ。俺はパパ、パパだぞー。言ってごらん」
「マ…パ…パッ…パプ」
「あぁぁぁ!惜しい!惜しいが、一生懸命言おうとしてくれた事がすごく伝わってくるぞ!!」
そうか…頑張って伝えた甲斐があったのか、二人とも満足したような笑みを返してくれた。俺も嬉しくなった。とても胸が暖かくなった。そして、俺は達成感を感じたのか、とてつもなく眠くなった。それに逆らうことなく、ゆっくりと目を閉じた。
「…寝ちゃったわね」
「みたいだな…ハイハイが出来るようになって、更にはママって言えるようになったんだ。とても頑張って疲れたんだろうな」
ルーラリアの腕の中で安心したのか、ぐっすり眠るルークスを見て2人は、また笑みをこぼすのであった。
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それから、1週間が経った。そして遂に、我が家の内部攻略が開始されようとしている。
最近、ジークスは忙しいのか、執事と毎日出掛けるようになっていた。一方ルーラリアは以前より、メイドと一緒に掃除をしたり、ご飯を作ったりする様になり、その間、俺はソファで寝かされている。
そして問題はこの部屋からの第一の関門だ。
今、キッチンにはメイドのミレイとルーラリアの2人が俺を気にするように俺の方をちょくちょく確認してくる。そのおかげで、俺は攻略の道を阻まれている。
しかし、遂にチャンスが訪れた。
「リア様、お砂糖が切れてしまったので倉庫の方へ、取りに行ってきます」
「分かったわ、行ってらっしゃい」
そうしてミレイがキッチンから出ていく、ありがたい事に、彼女はドアを開けたまま出て行った。二つ目の関門、ドアをどうやって開けるのかを解消することができた。サンキューミレイさん!
「あら?あのお皿どこに置いたのかしら…」
遂に俺の監視が完全にフリー状態になった。
ここしかない!俺は全速力でドアに向かってハイハイをする。
…何とか脱出に成功した。さぁ、ここからが本番だ。
確か、メイドのミレイさんは左の方に出て行くのが見えたから、すぐに見つからないように右に行くとした。
進んだすぐ隣に扉があった。まだ体の小さい俺ではドアノブには到底届かない。なので、とりあえずここはスルーさせてもらう。
次に階段が見えた、2階へ向かう階段だ。
俺は階段を無視して奥へ進む。しかし、少し進むと約20メートル先に行き止まりが見えた。
見た限りだと、開いているドアは見当たらない。仕方なく俺は引き返すことにした。そして、また階段の前まで戻ってきた。
これはもう2階に行ってみるしかないか。そう思いながら、避けていた階段に手を掛ける。
割とあっさり上がることができた。赤ちゃんだから階段は危険だと思って避けていたが、こうも簡単に上がれてしまうと、臆していたのがバカらしくなってきた。
そんなことを思いながら、2階に辿り着く。しかし、そんな思いは好奇心ですぐに脳内から消しさられる。なぜなら、階段近くの部屋のドアが少し開いていたのだ。戸惑うことなく、俺はその部屋に入った。
そこの部屋は、やたらと本が沢山棚に並べられていた。おそらく、書斎か書庫だろう。
しばらく辺りを見渡していると、一冊の本が床に落ちているのを見つけた。その本の所に移動し、その本を開いてみる。
最初は異世界の文字だとかで、読むことは出来ないかもしれないと思っていたが、そんな事はなかった。
日本語で書いてあった。どうやら、この世界の標準語は日本と同じく日本語のようだ。
いや、待てよ。よく目を凝らしてみると、訳の分からない文字がたくさん羅列されている。これはどういうことなのだろう?まぁ、いつかルーラリアあたりに聞いてみることにするか。
俺はすぐにページをめくる。
これは…おそらく小説的なものか。
本の内容は、各国で名を馳せていた英雄達4人が、魔王を倒すために世界中を旅して強くなり、魔王城を目指すという話だった。いきなり何かの専門書とかじゃなくて助かった。
しばらく、この本を読んでいるうちに、この世界の大部分が分かった。まず、この世界は一つの大きな大陸とそれを取り囲むようにある大きな海が一つあるだけだ。
大陸自体は一つなのだが、その大陸を5つに分けるかのように大きな山脈が連なっていている。それを境に、それぞれを大陸として5つの名前で呼ばれているようだ。
1つは俺がいるこの大陸、ここは「イオドラル大陸」と呼ばれている。
この大陸には、人が最も多く生活しているらしい。そして、この大陸には「ウェントワース王国」という王国があり、この大陸を統治していると書かれている。
他の大陸は詳しく読まなかったが、エルフやらドワーフ、魔族など様々な種族が存在しているらしい。 いよいよ異世界感が出てきたぞ!
本の続きを読む。話の途中までは、様々な出会いと別れがあり、感動シーンもあったが、最後章で英雄たちは魔大陸に到達するが、その道中でいきなり魔王に遭遇。唐突なラスボスの出現もあって、苦戦を強いられた。見事討伐とまではいかなかったが、魔王を撃退することが出来た。撃退というだけで完全に倒した訳では無いのだろうな。何とも歯切れの悪い終わり方だった。
それでも、魔物の出現率が格段と減少した事により、勇者たちは人々から賞賛された。
しかし、勇者たちは魔王の脅威を身をもって感じ、これ以上自分たちの様な苦しみを人々に与えないために、それぞれの大陸に散らばり、魔国を取り囲むように大きな結界を張ったとされている。
以降、今もこの4人の墓が結界の役割を担い、魔国を囲むように各国の国境付近に建てられているらしい。
本の話は終わったが、何故かまだ本は1割ほどページが残っていた。そこを見てみる。そこには、勇者たちが使った剣や、杖、魔道書、各アイテムなどが詳細とまでは行かないが、効果などが書かれていた。
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英雄が所持していた聖剣(名称:フェルナス)
説明:4人の英雄の一人が持っていた聖剣。
魔王との戦いにより破損した聖剣の一つ。魔王を撃退した際に、刀身が折れてしまい、数多の鍛冶職人達に修復の依頼を出してみたが、どんなに打ち込んでも、傷一つ入らず、それどころか刀身を熱する事すら出来なかったという。聖剣ということもあり剣が人を選ぶという逸話もあるので、現在は王国の宝物庫で新たな使いてもしくは、聖剣に手を加えられる選ばれし者が現れるまで大切に保管している。
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と、こんな感じで様々な装備品の説明がされている。そして、個人的に…いや、誰もが興味を惹かれるページがあった。魔法だ。
日常で使えるような小さな魔法から、モンスターなどを倒すために使った大魔法などが数十種類載っていた。
どうやら、この世界には6つの属性が存在するようだ。
火・水・風・土・光・闇の6属性。
このうちの5属性はそれぞれの大陸によって属性魔力量が異なり、各大陸によって属性分けされているように書かれていた。
ただ、光属性だけは魔大陸以外の大陸に少ないが平均的に存在しているらしい。
ちなみに、俺の住んでいる大陸には、火属性の魔力が多く存在しているようだ。そのこともあって、俺は火属性の魔法を調べることにした。
そして、俺は一つの魔法を見つけた。ゲームとかでお馴染みの「ファイヤーボール」だ。 スライムやゴブリンとかに使う小規模な攻撃魔法。
なんだかすごく魔法を使ってみたくなった。そりゃあ、異世界に来て魔法を使わないと異世界に来た感覚がないからな。
俺は、こんなところで魔法を使ったら、どうなるなんて考えずに魔法の発動方法を読んでいく。ただ、ここで一番重大な問題を見つけてしまった。詠唱だ。
そう、身体はまだ赤ちゃん。しかも言葉を話すことができない。
どうしたものかと、頭を抱える。そして、とあることを思い出した。
よく小説とかの主人公たちは無詠唱で魔法が使えたな。詠唱を頭の中でしてそのまま魔法を使えていた。ということは…。
俺も同じく無詠唱で魔法が使えるかもと、全く根拠のないことを考え、挑戦してみる。
結果は…。
ダメだった。
そう簡単には出せないか。と思いつつも、俺は魔法が使えなかったことに少し残念に思った。
しばらく魔法について調べていると、ふと後ろから人の気配を感じた。後ろを振り返ると、真剣な顔をしたルーラリアと、驚いたような顔をしているメイドのミレイさんが俺と本を交互に見ていた。
何か、まずい事でもしてしまったんだろうか。
しかし、ルーラリアはすぐに笑顔になり、俺に話しかけた。
「ルークス、勝手にママ達から離れないの。すごく心配したんだからね。もうこんなことはしないで頂戴ね?」
その言葉を聞き、俺は勝手に部屋から抜け出したことが申し訳なくなるが、話すことができないので、謝罪の意を込めてルーラリアの腕の中に埋もれるように抱きつく。
「よしよし、分かってくれたのなら、いいわ。今度からここに来たかったら、私に何か言ってね?そうしたら好きにしていいわ」
彼女の言葉に俺は、少し驚いた。なにせ、もう二度とここには入れないかもしれないと思っていたからだ。 いや、でも俺基本的に喋れねぇし、どう伝えるんだよ…。まぁ、そこら辺はまた今度考えるか。
どうやら、小さな冒険は失敗に終わったが、ここでこの世界のことや魔法について、今後いつでも調べに来れるというなら、よしとしよう。
何か、文章めちゃくちゃですみません。
この話の内容をメモ帳でメモっていたのに、データを紛失してしまって…。
とりあえず、今回はこのくらいで勘弁してください…