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異世界でマスコット系リビングアーマー?やってます   作者: ポンポコ狸
第1章 リビングアーマー、異世界に立つ
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5 噂のケットシーを見つける

お気に入り210超、PV10450超、応援ありがとうございます。


少し、タイトルを変えました。






 ウィリアムさんは家族に伝えるべき事を伝えると大丈夫だと一言残し、クレアさんが用意した軽食を持って塀の補強作業へと向かった。ウィリアムさんが出て行った後の夕食は静かな物で、皆黙々と食事を済ませ自分の部屋へと戻って行く。まぁ、あんな話を聞いたら、騒ぐ気にはなれないからな。

 その際、俺は今リビングで過ごすと伝えたが、アリシアの反対に合いアリシアの部屋に泊まる事になったのだが……良いのか、これ?


「ねぇ、ヴェルさん? 私達、大丈夫かな?」


 寝巻きに着替えベッドの淵に腰掛けたアリシアが、テーブルの上に座っている俺に不安気な表情を浮かべながら話しかけてきた。


「大丈夫と言うのは、ゴブリンに襲われないか、って事か?」

「うん。お父さんは大丈夫だって言ってたけど……」

「そうだな……」


 ゴブリンキングが配下を引き連れマデルフ村を襲って来るか?と聞かれたら、可能性は今の所は低いだろう。余程の事がない限り、少数の哨戒部隊や偵察部隊が来るくらいで済むはずだ。


「多分……大丈夫だろう。ウィリアムさん達の話からすると、ゴブリン達も森に巣を作ってからそう日も経っていない筈だ。ゴブリン達もまずは、自分達の巣の周辺の地盤固めからするんじゃないか? 早々に、大規模な行動は起こさない……と俺は思うぞ?」

「そう、かな?」

「恐らくとしか言えないが、数日は大丈夫な筈だ。その間に村長……アリシアのお祖父さんが領軍の援軍を連れて戻って来るさ」

「……うん、そうだよね」


 アリシアは俺の大丈夫だろうと言う言葉を聞き、安堵した様な表情を浮かべる。何の確固たる根拠もな話だが、アリシアにとって命の恩人である俺の言葉は何者にも代え難い説得力があるら様だ。

 過剰な信頼の様な気がしないでもないが、今は不安気なアリシアを落ち着かせるのには都合が良い。


「援軍が来れば、ゴブリン達が一掃されるのも時間の問題だろうさ。だから俺達はこの後の数日、村の防衛に専念すれば良い。その為に、ウィリアムさん達は村の周りの塀の補強に言ってるんだからさ」

「お父さん達、頑張っているもんね」

「ああ。明日の朝にでもウィリアムさんの所に顔を出して、労いの言葉をかけると良い」

「うん!」


 ウィリアムさんの説明の後初めて、アリシアは漸く笑顔を見せた。やっぱり、女の子は暗い表情より笑顔の方が似合っているよな。

 俺はアリシアの笑顔が再び曇る前に、話題を帰る事にした。 


「そう言えばアリシア、少し聞き忘れていた事があるんだけど……良いか?」

「何ですか?」

「人間と叡魔種が叡魔契約を結んだとして、人間はどう言う形で叡魔種の力を借りるんだ? パートナーとして、一緒に戦闘補助とか生産補助を行うのか?」


 俺はアリシアに、叡魔契約のきいてからズッと気になっていた事を聞く。契約して力を借りると聞いてまず思い浮かべたのは、ゲームで言う所の召還獣的な力の借り方と使い魔的な力の借り方の二通りだ。

 しかし、アリシアの答は俺の予想を超えてきた。  


「それは、叡魔契約を行った後の力の使い方、って事ですよね?」

「ああ」

「それなら、簡単です。叡魔契約を結んだ人間と叡魔種は契約期間中、魂の一部が結び付くそうで、その魂の繋がりを利用して叡魔武装と言う同一化を行うらしいですよ」

「叡魔武装……同一化……って、はい!?」


 アリシアの説明を聞き、俺は思わず素っ頓狂な声を上げた。

 叡魔武装と言う呼称は兎も角、同一化って言うのは一体全体どう言う事だよ!? 同一化って言う事は、人間と叡魔が融合するって事か!? 一時的に叡魔が人間に、自分の力を附与するとかじゃないのかよ!?

 俺は混乱した頭に手を当てながら、アリシアに更に詳しく事情を探る為の質問を投げかける。


「な、なぁ……アリシア? 同一化ってどう言う事だ? 叡魔武装って、人間と叡魔種が|合体〈融合〉する事なのか?」

「はい。私は叡魔武装はそう言う物だと聞いていますし、実際に叡魔武装を行っている狩人さんの姿を見た事がありますよ。確かその狩人さんは、ケットシーの叡魔種の方と契約を行っていたと思います」

「そうなんだ……」


 俺は一瞬、むっさいオッサン狩人が叡魔武装を行いネコミミを生やす姿を思い浮かべたが、頭を左右に振ってその想像図を振り払う。ヤな物を想像したな……誰得だよ、オッサンの猫耳なんて。

 しかし同時に、モンスターや叡魔種と言う人外が居る以上は獣人も居るだろうな……と俺は若干遠い目をする。おっさん+ケモ耳が沢山居る村か……見慣れるまでが大変そうな村だろうな

 そして遠い目をする俺を怪訝な眼差しで見つつ、アリシアは更に説明を続ける。


「えっと、説明を続けますね? 叡魔武装では基本的に人間の体をベースにして、契約を交わした叡魔種の方の特徴と力が現れるそうです。そして叡魔武装の装着回数を多くこなし経験を重ねる事で、人間は貸し与えられた叡魔種の力の扱い方に馴染み、叡魔種の方はより多くの潜在能力が引き出せる様になるそうです」

「……つまり叡魔武装を使ってモンスターと戦えば、人間と叡魔種の双方が強くなるって事か?」

「はい。でも、必ずしも戦う必要はないと思いますよ? 生産職の方と契約された叡魔種の方も、多少時間は掛かっていますが生産の補助を行うだけでも潜在能力を引き出せたと言う話はよく聞きます」

「そうなんだ……」


 俺はアリシアの叡魔武装の説明を聞き、簡単の声を上げる。

 その後、外から響くウィリアムさん達が塀を補強する音を聞きながら、アリシアと暫く軽い話題で話を交わす。そして……。


「じゃぁ、ヴェルさん。夜も遅いし、もう寝るね?」

「ああ。お休み、アリシア」

「お休みなさい、ヴェルさん」


 そう言ってアリシアが俺の横にあるランプの光を消すと、部屋が真っ暗になり空いた窓から月明かりが僅かに入ってきた。アリシアは月明かりを頼りにベッドに潜り込み、暫くするとアリシアの寝息が聞こえてくる。ベッドに入って寝た所を見ると、余程疲れていた様だ。まぁ、ゴブリンに襲われ死にかけたり、村の存亡に関わる話を聞けば精神的に疲れるか。 

 俺は月明かり照らし出されているアリシアの寝顔と小さな寝息を聞きながら、今日一日の出来事を振り返りながら目を閉じた。リビングアーマーが寝れるか心配だったが、目を閉じ暫くすると俺の意識は電源を落としたかの様に暗闇に沈んだ。

 






 

 


 窓から差し込む朝日と共に、俺は目を覚ます。寝起きの気怠さは一切感じず、一瞬で覚醒状態に至った様だ。真っ暗闇だった外が朝日で明るくなっているので、時間は経っているのだろうが実感がわかない。俺の意識上では目を閉じて開いたら朝が来ていた、と言う感じだからな。

 そして俺は自分の手の平を見て、溜息を漏らす。


「はぁ、やっぱり夢じゃなかったか……」


 寝て目が覚めれば元の世界に戻っているかも?と思ったが、ベッドで穏やかな寝息を立てるアリシアの姿を見て夢オチでは無いと観念する。どうやら俺はこの異世界で、リビングアーマーとして生きていくしかないようだ。まぁ元の世界に戻れたとしても、あの最後の怪我では一生寝たきりになる可能性が高いだろうから、これで良かったのかもしれないな……。

 


「うっ、ううん……? ??」

「ん? あっ、おはようアリシア」

「??」


 布団を退けたベットの上で上体を起こしたアリシアは、眠気眼を擦りながら視点の定まっていない表情でテーブルの上に立つ俺に顔を向けてきた。

 どうやらアリシアは、朝が弱いようだ。


「!?!? ヴェ、ヴェルさん!? お、おおはようございます!」

「アリシア、そんなに慌てて挨拶しなくて良いから、まず深呼吸でもして落ち着けよ?」

「は、はい!」


 やっと頭が動き出したらしく、アリシアは顔を真っ赤にしながら動揺しながら深呼吸を繰り返す。

 そして2,3回深呼吸を繰り返し、アリ視野は漸く落ち着きを取り戻した。


「お、おはようございます。ヴェルさん」

「ああ、おはよう」


 アリシアの顔はまだ若干顔が赤いが、どうやら大丈夫なようだ。


「さ、先に起きていたんですか?」

「ああ。アリシアが起きる少し前だったけどな」

「そ、そうですか……」


 俺がそう答えると、アリシアの落ち着いていた顔の赤みが再び色濃く染まった。どうやら寝起きの顔を見られた事が恥ずかしかったようだ。今更かと言う気もしないが、昨夜はアリシアも精神的に一杯一杯でそこまで気が回らなかったかも知れない。なので俺は、空気を読んで先にリビングに行くとアリシアに伝えフヨフヨ浮きながら部屋を出た。扉のノブを回すのに少し苦労したけどな。

 そして俺が部屋を出た後、部屋の中から少々大きな物音が聞こえたが気のせいだろうな……きっと。


「おはようございます、クレアさん」

「おはよう、ヴェルさん。昨夜はゆっくり眠れました?」

「はい、お陰さまで……」


 既に起き出し台所で朝食の準備をしていたクレアさんに、俺は挨拶をする。

 

「アリシアは起きましたか? あの子、朝は苦手で中々起きないんですよ……」

「あっ、それなら大丈夫ですよ。俺が部屋を出る前には、完全に目が覚めていた様ですから」

「あら、珍しい。何時もは、2度3度声を掛けて漸く起き出してくるのに……やっぱり昨日の件が影響しているのかしら?」


 クレアさんが少し驚いた様な表情を浮かべている所を見ると、アリシアは本当に朝が弱いようだ。

 そして俺がクレアさんと話をしていると少しして、アリシアが少し赤い顔のままリビングに入ってきた。


「おはよう、お母さん、ヴェルさん」

「おはよう、アリシア。今日は随分早く、起き出してきたわね?」

「う、うん。まぁ……」


 そうクレアさんに答えていたアリシアの視線が一瞬、俺の方に向いた。早起きの原因は俺か? ……まぁ、そうだろうな。 


「まぁ良いわ……それよりアリシア? 折角早く起きたんだから、ちょっとお使いに行ってくれないかしら?」

「お使い?」

「ええ。お父さんに、この朝ごはんのお弁当を届けて欲しいのよ。昨日の夜から塀の補強で働き詰めで、お腹が減っているでしょうからね」


 そう言って、クレアさんはテーブルの上に用意していた、お弁当の包を指差す。

 

「うん。分かった、お父さんに届けてくるよ」

「じゃぁ、お願いね?」

「うん」


 アリシアがお使いを頷き了承し、テーブルの上の弁当包みに手を掛けようとした所で俺はアリシアに声を掛ける。

 

「なぁ、アリシア? 俺もそのお使いに付いて行っても良いか?」

「えっ?」

「ほら俺ってさ、昨日はザックさんに案内されてこの家まで一直線に来ただろ? だから少し、このマルデフ村の様子を見てみたいんだよ」

「ああ、そう言う事ですか。勿論、良いですよ」


 アリシアは一瞬クレアさんの方も見て確認した後、俺のお願いを了承してくれた。


「じゃぁ行きましょう、ヴェルさん。お母さんの朝ごはんの準備が出来るまでに、戻って来ないといけませんからね」

「おう」


 こうして俺は差し出されたアリシアの肩に手を掛け捕まり、ウィリアムさんへの弁当配達に出発した。

 さて昨日は良く見れなかった初めての異世界村だ、よく観察しないといけないな。 








 アリシアに村の各所の説明をして貰いながら、まずアリシアは昨日俺達が村に入ってきた門を目指していた。ウィリアムさんがどこで作業しているか分からないから、まずは補強作業の音が良く聞こえる場所に向かっているのだ。

 そして門に近づいていくと、補強作業をしている人達の姿が見えてきた。アリシアは大きな声で、彼らに話しかける。


「おはようございます、ご苦労様です!」

「ん? ああ、ウィリアムさん所の……おはよう」

「おはようございます。お父さんに届け物があるんですけど、どこで作業しているか知りませんか?」

「ウィリアムさんか? たしか、ウィリアムさんは……集会場の方で自警団の連中と森の警備について話し合っていると思うぞ?」

「えっ、集会場ですか? ああ、分かりました。教えて頂きありがとうございます。塀の補強作業、頑張って下さい」

「おう、任せな」


 アリシアは作業をしている人達に一礼し、その場を離れ集会場へと歩き出す。集会場は門から然程離れておらず、数分歩くだけで直ぐに到着した。集会場の壇上にはウィリアムさんが立っており、10名程の人間を相手に森の地図を指さしながら説明をしている。聞こえてくるウィリアムさんの説明に耳を傾けると、どうやら巡回ルートと巡回するチームのローテーションの説明をしているようだ。

 しかし俺はウィリアムさんの説明を聞き流しつつ、説明を聞く村人の中にいる軽鎧をつけた二足歩行の猫を凝視していた。あれが、アリシアが言っていた狩人の一人と叡魔契約を交わしているケットシーか……。















転生一日目終了です。色々ありましたが、無事?に一日目が終わりました。

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