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異世界でマスコット系リビングアーマー?やってます   作者: ポンポコ狸
第1章 リビングアーマー、異世界に立つ
4/17

3 アリシアとのお話し合い

お気に入り200超、PV6700超、異世界転生/転移日刊95位、応援ありがとうございます。





 

 俺とアリシアは自分が知る情報をウィリアムさんに全て伝えた後、他の村人達とこの件について話してくると家を出様とするウィリアムさんとザックさんを見送る。

 村の存亡に関わる話だからな、子供のアリシアや余所者の俺が参加出来る集まりでもない。 


「ヴェルさん、何もお構い出来なくすみません」

「いえ。こんな自体ですからね、お気になさらないで下さい」


 頭を下げるウィリアムさんに、俺は気にしないでくれと伝える。村の存亡がかかっている状況だからな、丁寧に客人のおもてなしを……と言う状況ではないだろう。


「お気遣い頂き、すみません。アリシア、ヴェルさんのおもてなしを頼むよ?」

「うん!」


 頭を上げたウィリアムさんはアリシアに俺のお世話を頼み、アリシアも胸を張って任せろと返事を返す。 

「じゃぁすみません、ヴェルさん。こんな状況ですが、ごゆっくりしていって下さい」

「お気遣いありがとうございます」 


 こうして俺の世話をアリシアに任せ、ウィリアムさんとザックさんは出掛けて行った。

 







 ウィリアムさんとザックさんを見送った後、俺はアリシアに連れられアリシアの部屋へ移動した。女の子が初めて会った男?を自分の部屋に行き成り連れて行くのはどうなのだろう?まぁ俺の場合、男と言うよりデフォルメ人形なんだけどさ。

 アリシアはベッドの縁に腰をかけ、俺はベッド脇のテーブルの上に降り立った。


「ヴェルさん。折角家に来て貰ったのに、ロクにオモテナシも出来なくてすみません」

「いや、気にしないで。さっきウィリアムさんにも言ったけど、おもてなしがどうのって言ってられる状況じゃないみたいだしね。だから、アリシアも気にしないで良いよ」

「……はい」


 俺の返事にアリシアは恐縮した様子で顔を俯かせるが、別にアリシアが悪い訳でもないんだがな……。 

 なので、俺は少々強引だが話題を変える事にした。


「そう言えばアリシア? 森の中で叡魔契約を結ぶ相手を見つける旅をしているのかって聞かれたけどさ……叡魔契約って何?」

「えっ!?」


 顔を俯かせていたアリシアは、俺の質問を聞き顔を上げ驚愕の眼差しで俺を見てきた。えっと……もしかして知らなかったら拙い事なのか?

  

「ヴェ、ヴェルさん……え、叡魔契約の事知らないんですか?」

「あ、ああ。アリシアに聞かれて、初めて耳にした言葉だよ」

「えっ、そんな……だったヴェルさんは、叡魔種の方ですよね?」

「ああ、うん。アリシアが教えてくれた叡魔種の定義からすると、多分叡魔種で間違いない筈だ」 


 俺がそう答えると、アリシアは信じられないといった表情を浮かべた。

 アリシアの反応からして、どうやら叡魔契約とは知っていて当然というレベルの一般常識らしい。


「……あの、ヴェルさん。ひとつ聞いても良いですか?」

「……何だ?」

「ヴェルさんって、何者なんですか? 叡魔種の方なのに、叡魔契約について知らないだなんて……」


 アリシアは俺に疑いに満ちた眼差しを向けてきた。これは拙いな……。 


「……なぁ、アリシア? その叡魔契約って、叡魔種なら必ず知っていないといけない事なのか?」

「……はい。特に里の外に出ている叡魔種の方なら、まず間違いなく知っている常識です」

「そうか……」


 俺の質問にそう断言するアリシアに、俺は天を仰ぎ見た。

 

「ヴェルさんは、他の同族の方から叡魔契約について教えて貰ってられていないんですか? 叡魔種の方は成人して里を出る時に、叡魔種契約の事を教えられているって聞いていたんですが……」

「叡魔種は、成人したら里を出るのか?」

「はい。勿論、人から聞いた話なので正しいかは分かりませんよ? 叡魔種の方は基本的に、私達人間より寿命が遥かに長いそうです。ですので、叡魔種の方は成人すると見聞を広げる為に里を出るそうです。その際、叡魔種の方は気に入った人間が居ると叡魔契約と呼ばれる契約を結び、契約者に力を貸し与え契約を解除するまで契約者と共に過ごします。無論、全ての叡魔種の方がこの契約を結ぶとは限りませんけど……」


 なる程、叡魔種にはそんな習慣があるのか……。


「でも、アリシア? その叡魔契約って人間側には契約で力を借り受けられるってメリットがあるけど、叡魔種には何かメリットはあるのか? 今の話を聞いているだけだと、叡魔種の方は長期間拘束されて力を提供させられる……と言うふうに聞こえるんだが?」

「そんな事はありませんよ。この契約では、ちゃんと双方にメリットがありますよ」

「……それは?」

「この契約を叡魔種の方が結ぶと、己の秘める潜在能力が引き出されるそうなんです」 

「……潜在能力?」 


 潜在能力が引き出されるって、どう言う事だ?


「叡魔種の方はさっきも言いましたけど、私達人間より遥かに長い寿命があります。でもそれは逆に、成長が人間に比べ遅いと言うデメリットも同時に存在するそうで、叡魔種の方が普通に訓練を経て潜在能力を引き出そうとすると一生のうち半分は掛かかってしまうそうなんです」

「一生の半分……」


 人間より遥かに長く生きると以上、10年や20年などでは無く、100年単位の時間が掛かるんだろうな。

 調子が良くなってきたのか、アリシアは生き生きとした様子で説明を続ける。


「ですが、叡魔種の方が人間と叡魔契約を結ぶと、長い時間掛かるはずの潜在能力の開放が短時間で引き出せるようになるそうです。叡魔契約によって引き出された叡魔種の方の潜在能力は契約期間の間に徐々に自分の体に馴染んで行き、契約が終了する頃には自分の物に出来ているそうです。本来途方も無い時間が掛かる潜在能力の開放を、人間と叡魔契約をする事で短縮出来る。コレがえいま契約によって得られる叡魔種の方の契約によって得られるメリットだと言われています」

「そうか……叡魔契約は双方にメリットがあるんだな」


 俺はアリシアの説明を聞き、確かに叡魔種が叡魔契約の事を知らないのは変だよな、と思った。契約を結ぶ結ばないは別にしても、契約の存在自体を知らないのは可笑しな事だ。 


「はい。ですから私は森の中でヴェルさんに、叡魔契約を結ぶ相手を探しているのか?と尋ねたんです。だからヴェルさん、ヴェルさんは本当に叡魔種の方なんですか……?」

「……」

「ヴェルさん……」


 俺はアリシアの問いを、沈黙で返した。 

 そして暫く沈黙をした後、俺はアリシアに俺の事情を話す。


「なぁ、アリシア? さっき里って言っていたけど、叡魔種が自然発生する、って事はあるのか?」

「? はい確かに珍しい例だとは思いますけど、叡魔種の方でも極一部の方は自然に生まれてくると聞いた事が……! もしかして、ヴェルさん?」

「ああ、俺はその珍しい事例らしい。宛もなく森の中を動いていた、って言っただろ? 俺が生まれたのは、あの森の中なんだ」

「そんな……」


 アリシアの反応を見る限り、どうやら叡魔種が自然発生するのは本当に珍しいことらしい。アリシアは暫く唖然とした表情を浮かべていたが、小さく深呼吸を数回繰り返し漸く自体が飲み込んだようだ。


「ヴェ、ヴェルさんが本当に生まれたばかりだと言うのなら、確かに叡魔契約の事を知らなくても不思議ではないですね……」

「まぁな、知らないものは知らないとしか言えないからな……」

「そう、ですよね……」


 アリシアの俺への不審な疑いは晴れたが、俺を見るアリシアの目には何処か戸惑っている様な色が浮かんでいる。

 

「どうしたんだ、アリシア? 急に戸惑っている様な反応をして……」

「えっ、あっ、私ヴェルさんが自分より年上の方だと思っていたんですけど、その……ヴェルさんが生まれたばかりだって聞いてその私、自分より遥かに年下のヴェルさんに助けて貰ったんだな……って」

「ああ、なる程……」


 つまり、年上としての見栄が傷ついたと感じているのか。里の外に出ている叡魔種=成人と考え、俺を年上だと思って甘えていたら、実は生まれたばかりの子供だった。


「別に、気にする事じゃないんじゃないか? 俺がアリシアを助けたのだって偶然だし、ましてやゴブリンを仕留められたのも偶然だしな……」


 俺は自嘲気味に、そうアリシアに伝えた。本当、今回は良い方に転がってくれたよ。無我夢中でゴブリンに飛び蹴りを入れたけど、俺はこの成りだ。ゴブリンがもう少し頑丈だったら俺の一撃では仕留めきれず、手負いで凶暴化したゴブリンの相手をする羽目になっていたかもしれないからな。

 そうなると、俺もアリシアもゴブリンにやられていたかもしれない、綱渡り的状況だったよ。


「そんな事ないですよ! 悲鳴を聞いて私の危ない所を助けてくれたヴェルさんは、間違いなく私にとってのヒーローです! だからそんなに自分を卑下しないで下さい!」

「そ、そうか?」

「はい!」


 アリシアの勢いに押され、俺は思わず頷いてしまう。  

 まぁ確かに言われてみれば、あの場面で助けに入って颯爽と敵を倒せば丸っきりヒーローだよな。出てきたヒーローが、愛らしいマスコット系リビングアーマーでなければだけど……。








 暫くアリシアの部屋でこの世界の常識についての話を聞いていると、部屋の外から誰かが慌てた様子で走り寄ってくる足音が聞こえてきた。

 ウィリアムさんかザックさんが帰ってきたのかな?


「アリシア!」


 部屋の扉を壊す勢いで部屋に入ってきたのは、アリシアをそのまま大きくして大人っぽくした様な若い女性だった。って、誰?この人……。


「お母さん!?」

「えっ、お母さん?」


 俺は思わず、小声で驚きの声を漏らしてしまった。お姉さんじゃなくて、お母さん!? 本当に?

 そして2人は驚く俺を余所に、お母さん?がアリシアを涙を流しながら抱きしめていた。最近よく見るな、この光景……。


「ああ良かった、アリシア! 本当に無事だったのね!?」

「痛い。お母さん、痛いよ」

「心配したのよ! 貴方が森に行ってから直ぐ、ゴブリンの巣が出来てたって話を聞いて! 貴方を迎えに行こうとしても、皆に危ないって止められるし!」

「……お母さん」


 アリシアもお母さん?の心配具合を察し、両手をお母さん?の背中に回し抱きしめる。

 うん、俺。完全に空気で、忘れ去られてるよな……。俺はそんな事を思いつつ、抱擁を交わす母娘?の姿を眺めていた。

 

「あっ……」


 暫しの間母親?と抱擁を交わしていたアリシアは、机の上で手持ち無沙汰そうに佇む自分達を見つめる俺の存在に気付き、思わず小さな声を上げた。

 やっと、思い出してくれた様だな……。


「お、お母さん!」

「何? アリシア?」

「ちょ、ちょっと離れて!」

「どうして? もう少し、このままで良いじゃない?」

「ああ、でも! ここの部屋には、お客さんもいるんだよ!?」

「……お客さん?」


 アリシアにお客さんが同席していると言われ、アリシアの母親?はアリシアを抱きしめたまま部屋の中を見回す。


「……誰もいないわよ?」


 だがその部屋を見回した視線の位置は俺の頭より高く、俺の姿がアリシアの母親?の視界に入る事はなかった。 

 そんな母親?の返事を聞き、アリシアは少し焦った様子で俺の位置を教える。

 

「違うよ、お母さん! テーブルの上を見て!」

「テーブルの上?」


 アリシアに言われた通りにテーブルの上を見た事で、アリシアの母親?は漸く俺と視線が交わった。

 俺は右手を軽く上げながら、アリシアの母親に声をかける。


「あっ、どうも。よろしく」

「……」

「……お母さん?」


 俺の姿を凝視したまま、アリシアの母親?は動きを止めた。

 何の反応もしないアリシアの母親?の様子を怪訝に思いつつ、俺は首を傾げながら話しかける。


「あの……どうしました?」

「き」

「「……き?」」

「きゃぁぁぁ!? 何、これ!? 可愛い!?!?」

「えっ!? あ、ちょっ……!? やめっ!?」


 アリシアの母親?は先程までの、娘の無事に安堵する母と言う姿をかなぐり捨て、突如人が豹変したかの様に机の上にいた俺を両手で掴み上げ頬ずりをし始めた。

 何この反応!? この人さっきまで、アリシアの無事を心底喜んでいた人だよね!?


「ちょっ、お母さん! 何してるの!? 早くヴェルさんを離して!」

「ええっ……」

「何、残念そうな顔をしてるの! 早くヴェルさんを離して!」


 あまりの事態に硬直している俺を救う為、アリシアは頬ズリをする母親?に厳しい口調では俺を話すように言いつける。

 アリシアの母親?もアリシアの思わぬ抵抗にあい、渋々と俺をテーブルの元居た位置に下ろした。助かった……。


「もうお母さんったら、可愛い物に目が無いんだから……。でも、私の命の恩人のであるヴェルさんに、何て事をするのよ!」

「……命の恩人?」

「そうよ。私がゴブリンに襲われそうになった所を、ヴェルさんが助けてくれたんだよ! ヴェルさんは叡魔種で、リビングアーマー族の人なの!」

「……」


 アリシアの母親の視線が俺とアリシアの間を何度か右往左往し、そして……。


「失礼しました! アリシアの命の恩人とは知らず、大変失礼な真似を!」


 アリシアの母親は俺に向かって深々と頭を下げ、突然俺に行った頬ずりの件を謝罪をしてきた。

 いや別に、そこまで頭を下げて謝らなくても良いんだけどな。。  















叡魔契約と言う、フラグが立ちました。さてさて、この先どうなるんでしょうね?

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