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異世界でマスコット系リビングアーマー?やってます   作者: ポンポコ狸
第1章 リビングアーマー、異世界に立つ
17/17

16 後始末と、これから……

お気に入り300超、PV34390超、応援ありがとうございます。





 目が覚めると、俺の隣にアリシアの寝顔が合った。


「……」


 かなり驚いたが、俺はアリシアを起こさない様に気をつけながら離れる。どうやら俺はアリシアと一緒にベッドに寝かされていたようだ。

 ベッドを離れてテーブルの上に降りた俺はグッスリと眠るアリシアを一瞥した後、窓の外から聞こえる笑い声に耳?を傾ける。


「楽しそうな、笑い声だな……」


 窓越しに聞こえてくる笑い声は老若男女混じり合っており、村全体で騒いでいる様だ。所謂、戦勝祝いって奴だろうな。


「……勝ったんだよな、俺達」


 そして、そんな村人達の声を聞いているとジワジワと実感が沸いてきた。

 ゴブリン達が逃げだしたのは確認したが、最後はエネルギー切れで意識が落ちたので最終的な結末は知らなかったのだが、窓の外から聞こえる村人達の喜びようから無事に戦いは終わったのだろう。


「う、ううん……」

「ん??」

「……あれ? ……ここ、は?」


 どうやら、アリシアが目を覚ましたようだ。ベッドから上体を起こしたアリシアは寝ぼけ眼で部屋の中を見回しているが、ランプもついていないので自分が何処に居るのか良く分からないらしい。

 なので、俺がアリシアに声をかける事にした。


「おはよう、アリシア」

「?? あっ、その声……もしかしてヴェルさんですか?」

「ああ、そうだ。それとここは、アリシアの部屋のようだから安心して良いぞ。それと、改めておはよう、アリシア」

「あっ、お、おはようございます」


 俺がここが自分の部屋だと教えると、アリシアは安堵とした様子で挨拶を返してくる。まぁ、目が覚めたら見知らない場所でした……では安心出来無いからな。 

 そしてアリシアはここが自分の部屋だと知ると薄暗い部屋の中、僅かな月明かりを頼りに手探りであるものを探り……。


「えっと……あ、あった!」


 アリシアは俺の乗るテーブルの上に置かれたランプを見つけ、少々手間取りながら明かりつけた。明かりが点いたランプをテーブルの上に置き、アリシアはベッドの縁に座るテーブルの上にいる俺を見据え質問を投げかけてくる。


「あの……ヴェルさん? ゴブリンとの戦いの結果は、どうなりましたか?」


 アリシアは縋る様な表情を顔に浮かべ、ゴブリンとの戦いがどうなったのか聞いてくる。って、やはりまず聞くのはその話題だよな……。

 だが、俺にはその答えは出せない。何故なら、俺はその答えを知らないからだ。


「悪いがアリシア、俺もつい先程起きたばかりで、その当たりの事情は良く分からないんだ」

「……そう、ですか」

「だけどな、アリシア。窓の外の音に、耳を澄ませてみろ」

「窓の外、ですか?」

「ああ」


 アリシアは俺の言葉に従って、目を閉じ耳を澄ませる。

 すると……。


「あっ、これって……」

「勝利の宴、だろうな」


 アリシアの耳にも、村人達の楽しげな声が届いたようだ。


「ヴェルさん、それって……」

「まだ直接確認した訳じゃないが、恐らく俺達の勝ち……と思って良いと思うぞ」

「……そう、ですか」


 アリシアは俺が戦いに勝ったんだろうと伝えると、顔を俯かせ肩を小刻みに震わせ……そして。……感情を一気に爆発させ大喜びする。。


「やった!? やりましたよ、ヴェルさん! 私達、村を救ったんですよね!?」

「ああ。最後の最後が締まらなかったけど、どうやら俺達村を守りきれたようだ」

「~~!!」


 アリシアは戦いに勝利した事を認識し、感極まったのか無言で目尻から涙を溢れさせ喜ぶ。

 俺はそんなアリシアの姿を見ながら、労いの言葉をかける。


「良くやったな、アリシア。アリシアが勇気を出し頑張ってくれたお陰で、ゴブリン共の進行を退けマルデフ村を救うことが出来たぞ」

「は、はい!」

「本当は怖かったんだろうに、よく恐怖に耐えて頑張ったな。お疲れ様、アリシア」

「ば、ばい゛!」


 アリシアは鼻を啜りながら涙声で、俺の労いの言葉に返事を返す。どうやら村を救う事が出来たと聞き、一気に緊張の糸が切れようだ。まぁ、狩人でもない村娘がゴブリンの大群を前にして平然といていられる訳ないしな。今までは、自分がやらなければ村が……と言う義務感や悲壮感でごまかしていたのだろうな。

 俺は暫くの間、アリシアが恥も外聞もなく大泣きする姿から目を逸らし窓の外を見ていた。







 暫く泣き続けたアリシアは漸く、ここ数日で胸中に溜め込んでいた物を全て吐き出し終えたようだ。するとアリシアは顔を耳まで真っ赤にし、俺から顔を全力で逸らした。

 

「……」

「……」

 

 俺達は2人共揃って顔を逸らしたので、部屋の中には気不味い沈黙が舞い降りていた。うーん、どうやってこの空気を打破しよう。

 そう思っていると、扉の外から誰かが走り寄ってくる音が聞こえ……。


「アリシア!」


 蹴り破るような勢いで扉を開けたクレアさんが、血相を変え部屋に飛び込んできた。


「お母さん!?」

「クレアさん?」

「ああ、アリシア! 目が覚めたのね!」

 

 クレアさんは安堵の表情を浮かべながら、共学の表情を浮かべているアリシアに力一杯抱きついた。


「本当に心配したのよ、アリシア! あなたがザックさんに抱えられ眠ったまま帰ってきた時は、心臓が止まるかと思ったんだから!」

「! ……ごめんなさい! ごめんなさい!」


 一気呵成にアリシアにどれだけ心配したのかを伝えたクレアさんだったが、直ぐに啜り泣きと涙声に変わり何を言っているのか聞き取れなくなる。だがその姿から、自分がどれほどクレアさんに心配をかけたのかに気付き、アリシアは涙ながらに謝罪の言葉を吐きながら抱きつくクレアさんを抱きしめ返す。

 俺はそんな二人のやり取りを、只々見ているだけしか出来なかった。







 アリシアとクレアさんが落ち着くのを待ち、俺は声をかける。


「あの……クレアさん? ちょっと良いですか?」

「……?? あっ!? ヴェルさん」


 声を掛けた俺に、クレアさんは今初めて気が付いたと言う様な驚きの表情を浮かべた。どうやら、クレアさんの目には俺の姿は映っていなかった様だ。

 まぁ、良いんだけどさ。


「ご、こめんなさいヴェルさん! 私ったら……」

「いいえ、気にしないで下さい。あんな事の後ですからね……アリシアの事が気になって、周りの事が目に入らなかったとしても仕方ないですよ」


 アリシアに気を取られ、同室に居た俺の存在を忘れていた事に気付き慌てて謝罪するクレアさんに、俺は無理からぬ事だから気にするなと伝える。

 こういう時、たいていの人はまず身内の心配をするからな。だから、クレアさんの態度が特別失礼な事と言う訳では無い。


「そ、そう? でも、ごめんなさいね」

「いいえ。それより、クレアさん。聞きたい事があるんですが……」

「何かしら?」

「俺達が倒れた後って、どうなったんですか? 外から聞こえる声を聞く限り、大丈夫だったんだとは思うんですが……」


 俺がクレアさんに俺達が倒れた後の事を聞くと、アリシアも身を乗り出してクレアさんを問い詰める。


「そ、そうだよ、お母さん! 私達が倒れた後、村は如何なったの!? 村の皆は!?」

「落ち着け、アリシア。そんなに詰め寄ったら、クレアさんも答えるに答えられないだろう?」

「で、でもヴェルさん!?」

「良いから、ますは深呼吸でもして落ち着け」


 俺がそう指示を出すと、アリシアは不満げな表情を浮かべながらも素直に従い深呼吸を始めた。少々従順すぎる気もするが、ゴブリン戦の時に矢継ぎ早に指示を出していた事の後遺症だろうな。

 兎にも角にも深呼吸をした事で、アリシアは一定の落ち着きを取り戻したので、クレアさんの話しを聞く事が出来そうだ。


「じゃあ、クレアさん。俺達が倒れた後、どうなったか教えて貰えますか?」

「ええ。じゃあまずは、貴方達が倒れてからの事を話すわね」


 そう前置きをしてから、クレアさんは話しを始めた。










 話しを聞き終わり、俺とアリシアは安堵の息をつく。


「そう、なんだ……良かった」


 アリシアはうれしそうな表情を浮かべ、そう漏らした。

 クレアさんの話しを総合すると、今回のゴブリン襲撃による犠牲者はアリシアと同じく立ち入り禁止指示が出る前に森に入った村人数人と警告を無視し森に入った冒険者達だけで済んだらしい。村の防衛戦に参加してした村人達も、怪我を負った者は出たが死者は出なかったらしい。道具屋の店主が惜しげも無くポーションを拠出してくれたおかげとの事だ。


「でもね、アリシア? 貴方達は、これからが大変なよ?」

「私達が?」


 アリシアはクレアさんの言う、大変という意味が良く分かっていないのか首をかしげている。

 まあ、確かに大変になるな。


「いい、アリシア? 貴方とヴェルさんは、この村の危機を救った立役者なのよ? 今やっている宴だって本当は皆、貴方を主役にするつもりだったんだから」

「えっ!?」

「何を驚いているの? 貴方とヴェルさんがゴブリンキングを倒したから、今回の戦いに勝てたのよ? 貴方達が、宴の主役を飾るのは当然よ」

「……」


 アリシアは唖然とした表情を浮かべ、本当か?と言いたげに俺を見てくるので俺は静かに頭を縦に振った。

 まあ実際、俺達と言うイレギュラーが居なければ、サイモンさんとノエルさんが領軍の到着前にゴブリンキングに負けた時点でマルデフ村の存亡は積みの状態だつたからな。防衛線に残って戦っていた村人や自警団の人らからしたら、俺達を宴の主役に据えるのは当然の選択だろうさ。


「皆、貴方達に感謝しているのよ。貴方達が居なかったらマルデフ村は全滅して居ていたでしょうから」

「……」 


 漸く理解が追い付いたのか、アリシアは顔を赤く染めながら俯いた。そんなアメリカの姿にクレアさんは苦笑を浮かべ、立ち上がる。


「本当はこの後、貴方達を宴に連れて行くつもりだったんだけど、この様子じゃ無理そうね。今日はこのまま、ゆっくり休んでいなさい。皆には上手く言っておくから、顔見せは明日にしましょう」

「う、うん……」

「ヴェルさん。私は宴の方に戻りますので、アリシアの事お願いしますね」  


 クレアさんは渋々といった様子だか、ウィリアムさんの奥さん……村長代理の妻としては、何時までも宴の席を離れては居られない様だ。


「ええ、分かりました」

「じゃあね、アリシア。また明日」

「う、うん」


 そう言って、クレアさんは宴の席に戻るために部屋を出て行った。村長代理の妻も子供、大変なんだな。

 そして顔を赤く染めるアリシアと一緒の部屋に残された俺は少々気まずげ話しかける。


「まぁ、何だ? 皆無事で、良かったじゃないか」

「それはそうですけど……。やっぱり、気恥ずかしいですよ」

「まあ、まあ。気恥ずかしい程度で、村を救えたんだから良しとしような?」

「ううっ……」


 アリシアは俯かせていた顔を上げる、顔を赤く染めたまま拗ねたような表情を浮かべていた。

 

「まぁ、今日のとこはクレアさんの言葉に甘えて、ゆっくり休むと良い。村の人達とは明日、改めて話せば良い。恐らく、沢山の感謝の言葉を言われるだろうから、心の準備をしておくと良い」

「ううっ……恥ずかしい。何とかなりませんか、ヴェルさん?」

「無理だな。まぁ、二、三日もすれば村の人達も落ち着くだろうから、それまで我慢するしかないな」

「そんな……」


 アリシアは若干泣きそうな顔をしながら、俺に縋るような眼差しを向けてきた。

 まあ、功労者の義務だと思って諦めるんだな。










 俺とアリシアは、ドアが激しくノックされる音で目が覚めた。アリシアは寝ぼけ眼を擦りながら、不機嫌そうに未だノックされ続けているドアを睨み付ける。


「アリシア! 起きろ、アリシア!」


ドアの外から聞こえる声から、どうやらドアを叩いているのはウィリアムさんらしい。


「何、お父さん? こんな朝早くから……」

「起きたのか、アリシア! それなら直ぐに、リビングに来るんだ! 良いな! 直ぐにだぞ!」


 そう言い残し、ウィリアムさんは慌てた様子で部屋の前から去って行った。……一体、如何したんだ? 今のウィリアムさんの慌てよう、尋常じゃ無い感じだったぞ?


「……如何したんだろう、お父さん」


 アリシアもウィリアムさんのただ事では無い様子に、先ほどまでの不機嫌さも吹き飛び、怪訝な表情を浮かべていた。 


「まぁ何にしても、急いでリビングに行った方が良さそうだぞアリシア」

「う、うん」


 アリシアは唖然とした様子のまま。急いで着替えリビングへと向かった。

 そして俺達がリビングに到着すると、そこにはウィリアムさん以外に2人の男がテーブルに座っていた。


「あれっ、お爺ちゃん? いつ帰ってきたの?」

 

 うち一人は、アリシアお爺さんらいい。


「今朝早くじゃよ。まぁ、儂の事は良いんじゃよ、アリシア。早速じゃが、こちらの方を紹介する」

 

 そう言って、アリシアのお爺さんは、もう一人の男を紹介しようと手を向けるす

 すると男は軽く一礼し……。


「初めましてアリシアさん、ヴェルキュロスさん。私はルパート……ナーバル子爵の息子です。この度のゴブリンキング討伐での御活躍、お噂は聞いていますよ」


 そう挨拶するルパートは、爽やかな笑みを浮かべていた……鋭い目つきで。

 ……厄介事が向こうから来ちゃったよ! 

















領主の息子が登場したところで、マス系は一旦完結です。


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